改訂新版 世界大百科事典 「教育会」の意味・わかりやすい解説
教育会 (きょういくかい)
一般には,教師ならびに教育関係者を構成員とする専門的職能団体をいう。アメリカの全米教育協会National Education Association of the United States(NEA。1870設立。教師,校長,教育行政官で構成)が国際的によく知られているが,日本では長野県の信濃教育会が,戦前からの長い歴史をもって今日も存続している。しかし,近代日本の教育史でもっとも大きな役割を果たしたのは帝国教育会である。これは,東京府教育会と東京教育協会の合併により1883年発足した大日本教育会が,96年に改称したもので,戦後の1947年まで存続し,日本教職員組合(日教組)の成立後に解散した(名称は1944年に大日本教育会,戦後は日本教育会と改めた)。
帝国教育会の果たした役割は時代によって変わった。注目されるのは第1次大戦後の沢柳政太郎会長,野口援太郎専務主事の時代である。1917年の全国小学校女教員会の開催,18年各府県の教育会の連合組織の結成,21年政府の地方教育費整理節減案への批判,そのほか機関誌《帝国教育》の発行,教員の研究活動への援助,国際的教育運動との連携等々の事業は,政府の政策とは離れた独自のプレッシャー・グループとしての役割を果たした。しかし,1930年代にはしだいに政府の翼賛団体的性格を帯び,戦後にはそのことが批判の対象となって,ついに解散を余儀なくさせられた。全国的組織であった帝国教育会と各地方教育会が果たした機能としては,そのほかに教職員の生活についての互助機能や組織的な研究活動などがあるが,それらは戦後,主として日本教職員組合とその関係団体にうけつがれ,発展してきている。帝国教育会が殉職教育者のために1935年大阪に設立した教育塔も日教組にうけつがれている。
執筆者:中野 光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報