日本大百科全書(ニッポニカ) 「教育調査」の意味・わかりやすい解説
教育調査
きょういくちょうさ
教育の現実を正確に把握し、その効果を評価したり、問題点を取り上げてその改善を図るために、科学的な方法で資料を収集し分析したりする一連の調査研究のことをいう。これは学術的研究というよりも、現実的な行政上の関心に基づいて、問題の改善のための建設的な提案を行うことを目的としている。調査対象は、学習指導や生活指導、あるいは学校経営や教育行財政など学校教育に関するものだけでなく、家庭教育や社会教育に関するものも含まれ、調査主体も、国、地方自治体、大学、研究所などさまざまである。教育調査は総合的な調査研究となることが多く、そのため、多くの研究者や研究調査機関の協力によって実施されるのが普通である。
教育調査が本格的に始められたのは20世紀に入ってからであり、日本では大正末期のころからやや活発に行われたが、第二次世界大戦後になって飛躍的に発展した。それらのうち、とくに大規模に実施されたものとして「日本人の読み書き能力調査」や文部省(現文部科学省)の「全国学力調査」があげられる。教育調査は、一般に、(1)調査目的の設定、(2)調査計画の立案、(3)資料の収集、(4)資料の集計整理および分析、(5)調査結果の報告(結果の解釈、建設的提案)の段階を追って実施される。
資料収集の方法としては、質問に回答してもらう形式がほとんどであり、一般に、面接法、郵送法、留め置き法、電話法、集合法などが多く用いられている。これらのうち面接法は多額の調査費用を要するが、問題の核心を深く追究する方法としては、もっとも有効である。その他の方法もそれぞれ長所と短所をもっており、状況に応じて選択もしくは併用することが望ましい。
[河合伊六]