改訂新版 世界大百科事典 「教育統計」の意味・わかりやすい解説
教育統計 (きょういくとうけい)
教育事象の性質・傾向などを数量的に解明する理論や方法,またはその結果として得られた数値。教育行政統計,教育研究統計,教育実践統計などに大別されるが,教育行政統計をさす場合が多い。日本の教育統計は,1872年(明治5)の学制以後,教育行政統計が毎年度《文部省年報》に掲載され,1900年の学校身体検査規程以後,学校保健統計も継続している。不定期の統計では,1930年以後の文部省調査部《内外教育制度の調査》に欧米各国の教育統計が紹介されている。阿部重孝の教育財政研究など,これらの統計を駆使した教育の数量的研究も発達した。戦後は,教育条件の整備確立の要請(教育基本法10条)から,教育行政当局の調査統計事務が重視され,統計法によって指定統計も制度化され,教育統計はいちだんと整備された。現在,国の教育統計事務は,おもに文部省大臣官房調査統計課が担当している。教育統計のうち,指定統計は学校基本調査,学校保健統計調査(以上毎年度),学校教員調査(3年ごと),学校設備調査,学校給食調査,社会教育調査,産業教育調査(以上不定期)であり,指定統計以外では,定期的統計として地方教育費の調査,地方教育行政の調査,父兄支出の教育費調査,私立学校財務状況調査,公立学校建物の実態調査,体力・運動能力調査,私立学校学生納付金調査(以上毎年度),学生生活調査(2年ごと)などがあり,不定期の特定事項に関する調査統計も少なくない。教育統計総覧としては《文部統計要覧》《文部省年報》(毎年度),教育白書(不定期)など,国際教育統計としては《教育指標の国際比較》《ユネスコ文化統計年鑑》などがある。また,民間の教育統計では,日本子どもを守る会編《子ども白書》の諸統計など注目すべきものが少なくない。諸外国でも,例えばアメリカの国立教育統計センター《教育条件》(毎年度)など,教育統計が発達している。
執筆者:三輪 定宣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報