斜頸(読み)シャケイ

デジタル大辞泉 「斜頸」の意味・読み・例文・類語

しゃ‐けい【斜×頸】

くびが一方に傾いている状態。最も多いのは先天性筋性斜頸で、胎児期にくびの筋肉一部にひきつりができて起こることが多い。

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精選版 日本国語大辞典 「斜頸」の意味・読み・例文・類語

しゃ‐けい【斜頸】

  1. 〘 名詞 〙 頸部が一定方向に運動を制限されたり固定されたりした状態の総称新生児にみられる先天性筋性斜頸が最も多く、後天性のものとして、リンパ性・骨関節性・眼性・耳性などの斜頸がある。〔医語類聚(1872)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「斜頸」の意味・わかりやすい解説

斜頸
しゃけい

頸部が側方に屈曲した状態をいい、いろいろな原因でおこるが、先天性のものと後天性のものに大別される。

 先天性筋性斜頸は代表的なもので、胸鎖乳突筋(胸骨と鎖骨から耳の後方にある乳様突起に達する頸部最強の筋)の疾患である。原因は明らかではないが、新生児の一側の胸鎖乳突筋の分岐部に腫瘤(しゅりゅう)があり、これが生後3~4週ごろまで大きくなって斜頸位をとるようになる。その後、腫瘤はだんだんと縮小して生後1年以内に斜頸は自然治癒するものが多い。この間の治療としては、以前は徒手矯正マッサージを行ったが、近年はむしろ有害であるということで行われなくなった。できるだけ斜頸位を矯正して患児を寝かせておくことが、頭蓋(とうがい)や顔面の不均整の発生を防止するために必要である。自然治癒しない一部のものでは、胸鎖乳突筋が短縮して緊張し、斜頸位が高度になってくるので、生後1~2年ごろに観血的手術が必要である。手術をしないと、成長するにしたがって、斜頸はもちろんのこと、頭蓋や顔面の変形が高度になってくる。このほか、先天性骨性斜頸は頸椎(けいつい)の楔(けつ)状椎などによるものである。

 後天性のものとしてはリンパ性斜頸がある。扁桃(へんとう)炎や中耳炎などのため、頸部の深部リンパ節炎症をおこして斜頸位をとるもので、幼小児にみられる。リンパ炎が治ると、斜頸位も消失する。そのほか、側頸部の広範囲な皮膚瘢痕(はんこん)による瘢痕性斜頸、頸椎の炎症性疾患による骨関節性斜頸、斜頸位運動を繰り返す痙(けい)性斜頸(頸部ジストニア)などがあり、症候性としての眼性斜頸や耳性斜頸もある。このうちで痙性斜頸は特異な斜頸で、人前に出たり精神興奮のある場合に著しくなる。心因性のものもあるとされており、精神療法で軽快するものもあり、また自然に緩解するものもある。

[永井 隆]

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改訂新版 世界大百科事典 「斜頸」の意味・わかりやすい解説

斜頸 (しゃけい)
torticollis
wryneck

くびが左右に傾いた位置で拘縮し,正常位をとることができない状態の総称。先天性筋性斜頸が最も代表的なもので,これは左右どちらかの胸鎖乳突筋が出生時に過伸展などによる損傷を受け,その結果筋肉が変性,短縮して生じたものである。くびは患側に傾くと同時に健側に回旋し,反対方向を向くことができない。生後1~2週間から胸鎖乳突筋内に指頭大の腫瘤を生じ,1ヵ月以後腫瘤が消失するにしたがい筋肉がひも状に固くなり,斜頸が目だってくる。1~2年の経過で自然に矯正されるものが多いが,一部のものでは手術的治療すなわち筋切り術が必要である。リンパ性斜頸といわれているものは,上気道の感染症の後に斜頸になるものであるが,これは深頸部のリンパ節炎により反射性に生じたもので,疼痛を伴う。また痙性斜頸は,頸部の多数の筋肉の攣縮(れんしゆく)を伴う斜頸で,症状に変動があり,精神的要因の関与が大きいと考えられている。
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百科事典マイペディア 「斜頸」の意味・わかりやすい解説

斜頸【しゃけい】

頸部が左右に曲がったり,ねじれたりしている状態。先天性斜頸は新生児に見られる奇形で,子宮内または分娩(ぶんべん)時の障害によるとみられる胸鎖乳突筋の短縮が原因。軽症は自然に治癒するが,重症で頭部や顔面の変形をきたすものは手術で治療する。後天的にも骨の外傷やカリエス,関節・筋・リンパ節の炎症などの疾患や,半規管や錐体外路の障害によって起こり,それぞれ原因に応じて治療する。
→関連項目筋性斜頸

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「斜頸」の意味・わかりやすい解説

斜頸
しゃけい
wryneck

首が曲り,一定方向に運動が制限されている状態。原因は種々で,先天性のものと後天性のものがあり,最も多いのは先天性筋性斜頸である。この場合,多くは生後約1年のうちに自然に軽快するが,胸鎖乳突筋の腱切断やギプス固定を必要とするものもある。放置しておくと,顔面が非対称性に発育することがある。後天性のものは,外傷による頸椎の位置異常や脱臼,あるいは錐体外路系の疾患として起きたり,首の皮膚や筋肉の外傷の瘢痕性拘縮,まれには腫瘍などによる小脳の異常に起因する場合もある。それぞれまず原因を取除き,対症療法を講じる。

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