味覚障害(読み)みかくしょうがい(その他表記)Taste Disorder

家庭医学館 「味覚障害」の解説

みかくしょうがい【味覚障害 Taste Disorder】

[どんな病気か]
 おもに食物の味がわからなくなる病気ですが、何も食べていないのに口の中で苦い・甘い・渋いなどの味がしたり(自発性異常味覚(じはつせいいじょうみかく))、何を食べてもまずく感じてしまったりすることもあります。
 味覚障害は、年をとるとおこりやすく、高齢になるとこの病気になる人が増えてきます。
[原因]
 味覚障害は、単なる症状にすぎず、その原因は、さまざまです。
 病気の治療のために服用している薬剤が原因であったり(薬剤性味覚障害(やくざいせいみかくしょうがい))、体内の亜鉛(あえん)の量が不足していたり(亜鉛欠乏性味覚障害(あえんけつぼうせいみかくしょうがい))するほか、糖尿病、あるいは腎障害(じんしょうがい)、肝障害といった全身性の病気が原因になっておこることもあります。
 また、いろいろな検査を行なっても原因が明らかにならない味覚障害(特発性味覚障害(とくはつせいみかくしょうがい))もあります。
 これらの頻度が高いのですが、そのほかに頭部外傷中耳炎(ちゅうじえん)、顔面神経まひ、口内炎(こうないえん)なども味覚障害の原因になります。
 嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)を味覚障害と勘ちがいする場合も珍しくなく、これを風味障害(ふうみしょうがい)といいます。
[検査と診断]
 耳鼻咽喉科(じびいんこうか)を受診して検査を受けるべきです。
 耳、鼻、口腔(こうくう)の診察の後、血液・尿、肝機能・腎機能の検査のほか、亜鉛・銅・鉄などの血清中(けっせいちゅう)の微量金属の検査が行なわれます。
 味覚そのものの検査としては、電気刺激による味覚検査や味の溶液を用いた検査が行なわれます。
[治療]
 原因によって治療法が異なります。
 亜鉛欠乏性味覚障害は、亜鉛剤を内服します。
 原因不明の場合も、この亜鉛剤内服が有効なことが多いため、同じ治療になります。
 薬剤性味覚障害は、原因薬剤の使用を中止したり、減量したりする必要があります。これに亜鉛剤の内服がつけ加えられることもあります。
 頭部外傷や顔面神経まひの場合は、神経障害に効果が期待されるビタミン剤や循環改善薬などが使われます。
 口内炎や口の乾きがひどい場合などには、含嗽(がんそう)(うがい)などで口腔内を清潔に保つようにします。
[日常生活の注意]
 いつも口の中を清潔に保つことがたいせつです。
 食事は、野菜、魚介類、肉類をバランスよくとります。これらの食事の注意は、亜鉛を十分に摂取するためにもたいせつです。
 保存料の多い食品は避けるようにします。保存料は亜鉛代謝に悪影響をおよぼすと考えられるためです。
 また、不必要な薬剤の服用は中止します。
[予防]
 日常生活の注意を日ごろから心がけることで、かなりの味覚障害が予防できると思われます。
 薬剤については、とくに高齢者の常用薬に注意が必要です。

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百科事典マイペディア 「味覚障害」の意味・わかりやすい解説

味覚障害【みかくしょうがい】

味を感じる感覚の異常のこと。味覚が鈍い,わからない,甘みを苦く感じるといった異味症,何も食べていないのに口が苦いなどの自発性異常味覚,ある一定の味だけがわからない解離性味覚障害などの種類がある。 味覚を感じるのは舌やのどの奥にある味蕾(みらい)という小さな器官で,これは活発に細胞分裂をするため,分裂に必要な亜鉛を豊富に含んでいる。味覚障害の主な原因は,亜鉛が不足して味蕾にある味細胞が壊れてしまうことだ。 亜鉛不足の原因には(1)スナック菓子清涼飲料水アイスクリームインスタント食品などに含まれる酸化防止剤,(2)関節リウマチなどの治療に使うD-ペニシラミン血圧降下薬などの薬剤――がある。こうした添加物や薬は体内の亜鉛と結びついて体外に排泄されてしまう。また,ネフローゼ症候群でも大量のタンパク質と同時に亜鉛も排泄されるため,味覚障害をともなうことがある。 このほか,激辛やエスニック料理などの刺激物で舌の知覚神経や味蕾に障害が起きたり,糖尿病による知覚神経障害,シェーグレン症候群による口の渇き,放射線治療による味蕾への障害,副鼻腔炎で膿をもった鼻汁がのどに下がること,鬱(うつ)病やヒステリーなども味覚障害の原因となる。 治療法は,偏った栄養摂取による亜鉛不足であればバランスのとれた食事をとり,亜鉛を豊富に含む食品(抹茶・緑茶の一番茶,カキ(牡蠣),数の子,玄米茶,ココア,ノリ(海苔),カシューナッツ,アーモンド,いりゴマなど)をとる。突発性の味覚障害には亜鉛製剤の内服が有効な場合もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「味覚障害」の意味・わかりやすい解説

味覚障害
みかくしょうがい

味覚の変調を示す症状。味覚異常ともいう。まったく味覚がなくなる「無味覚症(味覚脱失)」、味覚の低下する「味覚鈍麻(味覚減退症)」、苦味や酸味など特定の味覚を異常に強く感じる「味覚過敏」、味が変わって感じられる「異味症(錯味覚)」、嫌な味に感じる「悪味症」などがある。特定の味覚が消失するものは「解離性味覚障害」とよばれる。

 原因は亜鉛の欠乏により味蕾(みらい)の新陳代謝が不活発になるケースがもっとも多いが、末梢(まっしょう)および中枢の神経障害や薬物使用によるもののほか、インフルエンザ罹患(りかん)後、放射線治療後、口腔(こうくう)疾患、鼻咽喉腫瘍(いんこうしゅよう)、てんかんなどでもみられる。薬物性味覚障害をおこすものとしては、リウマチ治療に用いるペニシラミン、抗うつ薬のアミトリプチリン、高血圧治療に用いるACE阻害薬のカプトプリル、抗がん薬のビンクリスチンなどが知られている。

[編集部 2017年4月18日]

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食の医学館 「味覚障害」の解説

みかくしょうがい【味覚障害】

《どんな病気か?》


〈食べものの味がわからなくなったり、まずく感じる〉
 なにを食べても味を感じなくなってしまう病気が味覚(みかく)障害です。
 味がわからないだけではなく、場合によっては、なにも食べていないのに、にがい味、あるいは甘い・渋いなどの味を感じたり、反対に、なにを食べてもまずく感じてしまうこともあります。
 服用している薬の副作用や糖尿病、腎(じん)障害、肝障害といった病気が原因の場合もありますが、体内の亜鉛(あえん)不足だったり、原因不明のケースもみられます。
 一般的に、年をとると起こりやすくなり、高齢者に多い病気です。

《関連する食品》


〈抜群の亜鉛含有量を誇るカキが有効〉
○栄養成分としての働きから
 亜鉛不足によって味覚障害が起こることからもわかるように、亜鉛は味覚や嗅覚(きゅうかく)に深くかかわっている栄養素です。
 舌にあって味を感じる器官である味蕾(みらい)の細胞をつくるもとになるのも、亜鉛です。
 亜鉛はカキ、ホタテガイ、牛もも肉、レバーといった魚介類や肉類に多く含まれています。なかでも、カキは抜群の亜鉛源なので、積極的に食べましょう。
○注意すべきこと
 気をつけたいのは、加工食品に含まれる保存料です。
 保存料は、亜鉛の代謝に悪影響を与えると考えられているので、なるべく避けるようにしましょう。
 また、1日に30mg以上の亜鉛をとると、銅の吸収が妨げられるといわれるので、サプリメントで亜鉛をとるときは、表示を確認してから利用しましょう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「味覚障害」の意味・わかりやすい解説

味覚障害
みかくしょうがい
gustatory disturbance

味覚減退,味覚過敏,味盲などをいう。味盲とは,普通人が感じる味覚に無感覚なもので,通常,苦みを感じるか否かで調べる。日本人の約 10%が味盲といわれている。味覚障害が主訴または初発症状となりうる疾患としては,各種の舌疾患,薬物中毒,鉄欠乏性貧血,顔面神経麻痺,中耳炎などがあり,これらの診断には味覚検査が重要である。

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