味覚障害(読み)みかくしょうがい(英語表記)gustatory disturbance

  • (お年寄りの病気)
  • (のどの病気)
  • Disorders of taste
  • Taste disorder
  • 味覚障害 Taste Disorder

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

味覚減退,味覚過敏,味盲などをいう。味盲とは,普通人が感じる味覚に無感覚なもので,通常,苦みを感じるかかで調べる。日本人の約 10%が味盲といわれている。味覚障害が主訴または初発症状となりうる疾患としては,各種の疾患,薬物中毒鉄欠乏性貧血顔面神経麻痺中耳炎などがあり,これらの診断には味覚検査が重要である。

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知恵蔵の解説

味がしない、味を違って感じる、味に過敏になる、舌の片側だけしか味を感じない、などの異常。遺伝性のものの他に、内分泌系の関与する糖尿病妊娠、唾液分泌不全(ドライマウスシェーグレン症候群)、高血圧症ビタミン欠乏症消化器疾患亜鉛欠乏症などの全身性疾患、放射線障害薬物副作用中枢神経の異常、心因性疾患など原因は多彩である。原因不明の味覚障害には亜鉛製剤の内服が有効な場合がある。

(今西二郎 京都府立医科大学大学院教授 / 2007年)

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百科事典マイペディアの解説

味を感じる感覚の異常のこと。味覚が鈍い,わからない,甘みを苦く感じるといった異味症,何も食べていないのに口が苦いなどの自発性異常味覚,ある一定の味だけがわからない解離性味覚障害などの種類がある。 味覚を感じるのは舌やのどの奥にある味蕾(みらい)という小さな器官で,これは活発に細胞分裂をするため,分裂に必要な亜鉛を豊富に含んでいる。味覚障害の主な原因は,亜鉛が不足して味蕾にある味細胞が壊れてしまうことだ。 亜鉛不足の原因には(1)スナック菓子や清涼飲料水,アイスクリーム,インスタント食品などに含まれる酸化防止剤,(2)関節リウマチなどの治療に使うD-ペニシラミンや血圧降下薬などの薬剤――がある。こうした添加物や薬は体内の亜鉛と結びついて体外に排泄されてしまう。また,ネフローゼ症候群でも大量のタンパク質と同時に亜鉛も排泄されるため,味覚障害をともなうことがある。 このほか,激辛やエスニック料理などの刺激物で舌の知覚神経や味蕾に障害が起きたり,糖尿病による知覚神経障害,シェーグレン症候群による口の渇き,放射線治療による味蕾への障害,副鼻腔炎で膿をもった鼻汁がのどに下がること,鬱(うつ)病やヒステリーなども味覚障害の原因となる。 治療法は,偏った栄養摂取による亜鉛不足であればバランスのとれた食事をとり,亜鉛を豊富に含む食品(抹茶・緑茶の一番茶,カキ(牡蠣),数の子,玄米茶,ココア,ノリ(海苔),カシューナッツ,アーモンド,いりゴマなど)をとる。突発性の味覚障害には亜鉛製剤の内服が有効な場合もある。

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家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 おもに食物の味がわからなくなる病気ですが、何も食べていないのに口の中で苦い・甘い・渋いなどの味がしたり(自発性異常味覚(じはつせいいじょうみかく))、何を食べてもまずく感じてしまったりすることもあります。
 味覚障害は、年をとるとおこりやすく、高齢になるとこの病気になる人が増えてきます。
[原因]
 味覚障害は、単なる症状にすぎず、その原因は、さまざまです。
 病気の治療のために服用している薬剤が原因であったり(薬剤性味覚障害(やくざいせいみかくしょうがい))、体内の亜鉛(あえん)の量が不足していたり(亜鉛欠乏性味覚障害(あえんけつぼうせいみかくしょうがい))するほか、糖尿病、あるいは腎障害(じんしょうがい)、肝障害といった全身性の病気が原因になっておこることもあります。
 また、いろいろな検査を行なっても原因が明らかにならない味覚障害(特発性味覚障害(とくはつせいみかくしょうがい))もあります。
 これらの頻度が高いのですが、そのほかに頭部外傷、中耳炎(ちゅうじえん)、顔面神経まひ、口内炎(こうないえん)なども味覚障害の原因になります。
 嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)を味覚障害と勘ちがいする場合も珍しくなく、これを風味障害(ふうみしょうがい)といいます。
[検査と診断]
 耳鼻咽喉科(じびいんこうか)を受診して検査を受けるべきです。
 耳、鼻、口腔(こうくう)の診察の後、血液・尿、肝機能・腎機能の検査のほか、亜鉛・銅・鉄などの血清中(けっせいちゅう)の微量金属の検査が行なわれます。
 味覚そのものの検査としては、電気刺激による味覚検査や味の溶液を用いた検査が行なわれます。
[治療]
 原因によって治療法が異なります。
 亜鉛欠乏性味覚障害は、亜鉛剤を内服します。
 原因不明の場合も、この亜鉛剤内服が有効なことが多いため、同じ治療になります。
 薬剤性味覚障害は、原因薬剤の使用を中止したり、減量したりする必要があります。これに亜鉛剤の内服がつけ加えられることもあります。
 頭部外傷や顔面神経まひの場合は、神経障害に効果が期待されるビタミン剤や循環改善薬などが使われます。
 口内炎や口の乾きがひどい場合などには、含嗽(がんそう)(うがい)などで口腔内を清潔に保つようにします。
[日常生活の注意]
 いつも口の中を清潔に保つことがたいせつです。
 食事は、野菜、魚介類、肉類をバランスよくとります。これらの食事の注意は、亜鉛を十分に摂取するためにもたいせつです。
 保存料の多い食品は避けるようにします。保存料は亜鉛代謝に悪影響をおよぼすと考えられるためです。
 また、不必要な薬剤の服用は中止します。
[予防]
 日常生活の注意を日ごろから心がけることで、かなりの味覚障害が予防できると思われます。
 薬剤については、とくに高齢者の常用薬に注意が必要です。

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食の医学館の解説

《どんな病気か?》


〈食べものの味がわからなくなったり、まずく感じる〉
 なにを食べても味を感じなくなってしまう病気が味覚(みかく)障害です。
 味がわからないだけではなく、場合によっては、なにも食べていないのに、にがい味、あるいは甘い・渋いなどの味を感じたり、反対に、なにを食べてもまずく感じてしまうこともあります。
 服用している薬の副作用や糖尿病、腎(じん)障害、肝障害といった病気が原因の場合もありますが、体内の亜鉛(あえん)不足だったり、原因不明のケースもみられます。
 一般的に、年をとると起こりやすくなり、高齢者に多い病気です。

《関連する食品》


〈抜群の亜鉛含有量を誇るカキが有効〉
○栄養成分としての働きから
 亜鉛不足によって味覚障害が起こることからもわかるように、亜鉛は味覚や嗅覚(きゅうかく)に深くかかわっている栄養素です。
 舌にあって味を感じる器官である味蕾(みらい)の細胞をつくるもとになるのも、亜鉛です。
 亜鉛はカキ、ホタテガイ、牛もも肉、レバーといった魚介類や肉類に多く含まれています。なかでも、カキは抜群の亜鉛源なので、積極的に食べましょう。
○注意すべきこと
 気をつけたいのは、加工食品に含まれる保存料です。
 保存料は、亜鉛の代謝に悪影響を与えると考えられているので、なるべく避けるようにしましょう。
 また、1日に30mg以上の亜鉛をとると、銅の吸収が妨げられるといわれるので、サプリメントで亜鉛をとるときは、表示を確認してから利用しましょう。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

味覚の変調を示す症状。味覚異常ともいう。まったく味覚がなくなる「無味覚症(味覚脱失)」、味覚の低下する「味覚鈍麻(味覚減退症)」、苦味や酸味など特定の味覚を異常に強く感じる「味覚過敏」、味が変わって感じられる「異味症(錯味覚)」、嫌な味に感じる「悪味症」などがある。特定の味覚が消失するものは「解離性味覚障害」とよばれる。

 原因は亜鉛の欠乏により味蕾(みらい)の新陳代謝が不活発になるケースがもっとも多いが、末梢(まっしょう)および中枢の神経障害や薬物使用によるもののほか、インフルエンザ罹患(りかん)後、放射線治療後、口腔(こうくう)疾患、鼻咽喉腫瘍(いんこうしゅよう)、てんかんなどでもみられる。薬物性味覚障害をおこすものとしては、リウマチ治療に用いるペニシラミン、抗うつ薬のアミトリプチリン、高血圧治療に用いるACE阻害薬のカプトプリル、抗がん薬のビンクリスチンなどが知られている。

[編集部 2017年4月18日]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

味覚障害が起こる原因

 私たちは、唾液に溶けた物質が口のなかにある味蕾(みらい)(味を感じる受容器)と接触し、さらに関係神経を介することによって味を感じます。味覚障害は、唾液分泌(だえきぶんぴ)、口腔粘膜、味蕾、関係神経の障害などによって起きます。

 味に関わる因子には、味覚以外に、香り、舌ざわり、歯ざわり、温度、審美、食欲、加齢など多様なものがあります。

 味覚障害の原因には次のものがあります。

亜鉛(あえん)欠乏

 亜鉛は、体にとって必須の微量元素(ミネラル)で、普通に食事をとっていれば欠乏することはありません。しかし、薬剤、亜鉛代謝異常(腎臓障害など)、あるいは食事量の減少によって低亜鉛症となることがあります。

 薬剤による味覚障害では、味覚異常、味覚減退、苦味が増すなどが生じます。亜鉛キレート作用(薬剤が細胞への亜鉛の取り込みを妨げること)により亜鉛が欠乏して味覚障害を起こしたり、薬剤による口の渇きから苦味を感じることがありますが、障害を起こす原因が不明な場合も多くあります。味覚障害の原因になりうる薬剤を表16に示します。

 腎障害では亜鉛の吸収が悪くなったり、尿毒素が味蕾に影響を及ぼして味覚障害が起きることがあります。

②神経障害

末梢神経障害

 味覚に関わる神経は、舌の前方3分の2の鼓索(こさく)神経、舌の後方3分の1の舌咽(ぜついん)神経、軟口蓋(なんこうがい)大錐体(だいすいたい)神経(顔面神経)です。これらの神経に障害があれば、味覚障害を起こすことがあります。

中枢神経障害

 脳腫瘍脳卒中(のうそっちゅう)などによって味覚障害を起こすことがあります。

③風味障害

 感冒(かんぼう)(かぜ)などに伴う嗅覚障害は味覚障害と密接な関連があり、併発すると食物の香りも味もよくわからない風味障害を起こします。また、高窒素血症(こうちっそけっしょう)の場合はアンモニア臭を起こすことから、風味障害を起こすことがあります。

④味蕾への障害

口内炎(こうないえん)口腔(こうくう)カンジダ症

 口腔粘膜のはたらきに影響を及ぼすため、味覚障害を引き起こします。

放射線照射

 腫瘍の治療のために口腔に放射線照射を行うと、味覚障害と口内炎を引き起こします。

口腔乾燥

 口が乾燥すると苦味を感じます。口が乾燥する原因には加齢のほか、シェーグレン症候群があります。

⑤高齢

 高齢に伴って次のような変化が起きます。

唾液分泌の減少

 唾液には味の分子を溶かす作用があるので、唾液の分泌が減れば味が変わります。高齢になると、多くの場合は唾液の分泌が減少します。

味蕾

 加齢とともに減少します。

食事

 偏食や食事量の減少があれば、亜鉛摂取量も減ります。

内臓機能の衰え

 亜鉛を消化吸収する機能が落ちれば、亜鉛摂取量も減ります。

その他、原因がわからないものもあります。

味覚障害に関する検査

①自覚的味覚機能検査

電気味覚検査法

 味覚に関係する神経(鼓索神経、舌咽神経、大錐体神経)に通電し、金属味を感じる時の通電流値を測ります。

濾紙(ろし)ディスク法

 直径5㎜の濾紙に、濃度の異なる味液(ショ糖、食塩、酒石酸、キニーネ)を浸し、味覚を感じる神経があるところに置き、味覚を検査します。

②血清亜鉛値

 70㎍以下では亜鉛製剤を投与します。

受診について

 味が変だと自覚したら、耳鼻咽喉科を受診してください。神経に主な原因がある場合は神経内科を受診してください。原因を明らかにし、適切な治療を受けましょう。

山口 雅庸


味覚について

 味覚は甘味(あまみ)塩味(しおみ)酸味(さんみ)苦味(にがみ)の基本4要素からなるといわれていましたが、最近では旨味(うまみ)を加えて基本5要素としています。

 味覚を感じる器官は味蕾(みらい)と呼ばれ(図1)、そのほとんどは舌の表面の乳頭(にゅうとう)糸状(しじょう)乳頭を除いた有郭(ゆうかく)乳頭、葉状(ようじょう)乳頭、茸状(じじょう)乳頭)という組織に存在しますが(図2)、咽頭粘膜などにも認められます。味覚の感じ方には部位により差があるといわれていましたが、最近の研究では、甘味、塩味、酸味、苦味の4要素はそれほど差がなく、旨味のみは、舌の側面、付け根の部分で強く感じるとの報告もあります。

 これらの味覚を(つかさど)る神経は、舌の部分により異なっています。また、味覚は嗅覚(きゅうかく)と密接に関連しており、嗅覚が低下すると味覚も変化してきます。これが風味と呼ばれるゆえんともいえます。

味覚障害の原因

 味覚障害はさまざまな原因で引き起こされます。味を感じる経路は、「味物質の味蕾への到達」「味蕾での知覚」「中枢への伝達」に分けられ、これらのどこで障害があっても、味覚障害は引き起こされます。

 味覚障害の原因の内訳は、研究者により異なりますが、特発性、薬剤性、亜鉛(あえん)欠乏性、全身疾患、口腔疾患、心因性などが多いとされています。

 味を感知する味蕾の味細胞には亜鉛が必要とされるため、血中亜鉛の低下は味覚障害を引き起こす大きな原因になります。実際、薬剤による味覚障害は、多くの場合、亜鉛と薬剤がキレート化合物(金属原子1個に対して、2個以上の配位子が結合した複素化合物)を形成し、亜鉛の低下を生じるためと考えられています。

 特発性や全身疾患のなかにも、亜鉛の低下を認めるものや亜鉛製剤の投与で改善効果のみられる例が多くあることから、亜鉛欠乏によるものが7割を占めるとの報告もあります。血中亜鉛が正常値であっても味覚障害が生じ、亜鉛製剤の服用が効果を示す場合もあります。

 亜鉛欠乏を予防するには、亜鉛を多く含んだ食品(牡蛎(かき)、カズノコ、煮干し、海藻、きなこ、レバーなど)を食べることが推奨されますが、市販のサプリメントで補充するのもひとつの方法です。

 口腔の乾燥や感染などが起こり、舌苔(ぜったい)舌炎、その他口腔内に炎症が生じた場合などでも、味覚低下や味覚異常が引き起こされます。鉄欠乏性貧血による舌炎では、鉄剤の服用が効果的です。そのほか、うつ病などによる心因性のものもあります。

田山 二朗


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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