六訂版 家庭医学大全科 「味覚障害」の解説
味覚障害
みかくしょうがい
Taste disorder
(お年寄りの病気)
味覚障害が起こる原因
私たちは、唾液に溶けた物質が口のなかにある
味に関わる因子には、味覚以外に、香り、舌ざわり、歯ざわり、温度、審美、食欲、加齢など多様なものがあります。
味覚障害の原因には次のものがあります。
①
亜鉛は、体にとって必須の微量元素(ミネラル)で、普通に食事をとっていれば欠乏することはありません。しかし、薬剤、亜鉛代謝異常(腎臓障害など)、あるいは食事量の減少によって低亜鉛症となることがあります。
薬剤による味覚障害では、味覚異常、味覚減退、苦味が増すなどが生じます。亜鉛キレート作用(薬剤が細胞への亜鉛の取り込みを妨げること)により亜鉛が欠乏して味覚障害を起こしたり、薬剤による口の渇きから苦味を感じることがありますが、障害を起こす原因が不明な場合も多くあります。味覚障害の原因になりうる薬剤を表16に示します。
腎障害では亜鉛の吸収が悪くなったり、尿毒素が味蕾に影響を及ぼして味覚障害が起きることがあります。
②神経障害
末梢神経障害
味覚に関わる神経は、舌の前方3分の2の
中枢神経障害
③風味障害
④味蕾への障害
口腔粘膜のはたらきに影響を及ぼすため、味覚障害を引き起こします。
放射線照射
腫瘍の治療のために口腔に放射線照射を行うと、味覚障害と口内炎を引き起こします。
口腔乾燥
口が乾燥すると苦味を感じます。口が乾燥する原因には加齢のほか、シェーグレン症候群があります。
⑤高齢
高齢に伴って次のような変化が起きます。
唾液分泌の減少
唾液には味の分子を溶かす作用があるので、唾液の分泌が減れば味が変わります。高齢になると、多くの場合は唾液の分泌が減少します。
味蕾
加齢とともに減少します。
食事
偏食や食事量の減少があれば、亜鉛摂取量も減ります。
内臓機能の衰え
亜鉛を消化吸収する機能が落ちれば、亜鉛摂取量も減ります。
その他、原因がわからないものもあります。
味覚障害に関する検査
①自覚的味覚機能検査
電気味覚検査法
味覚に関係する神経(鼓索神経、舌咽神経、大錐体神経)に通電し、金属味を感じる時の通電流値を測ります。
直径5㎜の濾紙に、濃度の異なる味液(ショ糖、食塩、酒石酸、キニーネ)を浸し、味覚を感じる神経があるところに置き、味覚を検査します。
②血清亜鉛値
70㎍以下では亜鉛製剤を投与します。
受診について
味が変だと自覚したら、耳鼻咽喉科を受診してください。神経に主な原因がある場合は神経内科を受診してください。原因を明らかにし、適切な治療を受けましょう。
山口 雅庸
味覚障害
みかくしょうがい
Disorders of taste
(のどの病気)
味覚について
味覚は
味覚を感じる器官は
これらの味覚を
味覚障害の原因
味覚障害はさまざまな原因で引き起こされます。味を感じる経路は、「味物質の味蕾への到達」「味蕾での知覚」「中枢への伝達」に分けられ、これらのどこで障害があっても、味覚障害は引き起こされます。
味覚障害の原因の内訳は、研究者により異なりますが、特発性、薬剤性、
味を感知する味蕾の味細胞には亜鉛が必要とされるため、血中亜鉛の低下は味覚障害を引き起こす大きな原因になります。実際、薬剤による味覚障害は、多くの場合、亜鉛と薬剤がキレート化合物(金属原子1個に対して、2個以上の配位子が結合した複素化合物)を形成し、亜鉛の低下を生じるためと考えられています。
特発性や全身疾患のなかにも、亜鉛の低下を認めるものや亜鉛製剤の投与で改善効果のみられる例が多くあることから、亜鉛欠乏によるものが7割を占めるとの報告もあります。血中亜鉛が正常値であっても味覚障害が生じ、亜鉛製剤の服用が効果を示す場合もあります。
亜鉛欠乏を予防するには、亜鉛を多く含んだ食品(
口腔の乾燥や感染などが起こり、
田山 二朗
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報