指定感染症(読み)シテイカンセンショウ

デジタル大辞泉 「指定感染症」の意味・読み・例文・類語

してい‐かんせんしょう〔‐カンセンシヤウ〕【指定感染症】

感染症予防法による感染症の分類の一。すでに知られている感染症(感染症予防法の1類、2類、3類感染症等を除く)で、国民の健康に重大な影響があるとして、政府が政令で指定する感染症。1類~3類感染症に準じて対応する。

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共同通信ニュース用語解説 「指定感染症」の解説

指定感染症

感染症法は感染症を危険性の高さに応じて1~5類などに分類し、あらかじめ対策を決めている。指定感染症は、まだ分類が決まっていないが、生命や健康に深刻な被害を与える恐れがあり緊急の対応が求められる場合に指定する。致死率の高いエボラ出血熱や重症急性呼吸器症候群(SARS)への対応と同じような措置が法改正を経ずに可能となる。強制入院や仕事の制限などの措置をどこまで認めるかは感染症ごとに判断する。指定期間は最長1年間で、必要に応じて1回に限り1年の延長ができる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「指定感染症」の意味・わかりやすい解説

指定感染症
していかんせんしょう

感染症予防・医療法(感染症法)に規定された感染症分類の一つ。指定感染症は同法で「既に知られている感染性の疾病(1類感染症、2類感染症、3類感染症及び新型インフエンザ等感染症を除く)であって、感染症法上の規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの」とされている。指定感染症では、1~3類感染症に準じた感染者の入院対応や消毒等の対物措置が可能となる(これらは感染症の広がりの特徴に応じて決められる)。指定は1年で失効するが、1回に限り延長が可能であり、最長2年間とすることができる。

 近年では、2013年(平成25)4月に鳥インフルエンザ(H7N9)が指定感染症に指定された(その後、鳥インフルエンザ(H7N9)は2類感染症に変更されている)。また、2020年(令和2)1月には新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)が指定感染症に指定された(新型コロナウイルス感染症は、その後2021年2月13日より指定感染症から「新型インフルエンザ等感染症」に変更されている)。

 なお、指定感染症が「病原体既知の感染症」を対象に指定されるのに対し、病原体そのものが未知の(新しい)感染症については同法の「新感染症」に分類されて対応が行われる。新型コロナウイルス感染症については、発生当初、病原体がわからないうちに国としての対応が必要であれば一次的には新感染症に分類しえたが、病原体がコロナウイルスの一種ということで指定感染症となった。新感染症は、現在の科学技術をもってしても病原体が特定されない感染症の場合に一次的に分類されうる類型で、1類感染症と同等の対応が行われる。また、万が一に備えて、入院勧告も1類感染症および新感染症で最大10日間とする厳しい対応ができることになっている。

[和田耕治 2021年10月20日]

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知恵蔵 「指定感染症」の解説

指定感染症

感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)の一類~三類感染症に分類されていない感染症のうち、一類~三類に相当する対応の必要が生じたものについて、1年間を期限に政令で指定する感染症のこと。感染症法の段階別分類には五類まであり、感染力や毒性の強さなどから公衆衛生への影響が大きい順に一類から分類し、行政や医療機関などでの対応の仕方を定めている。
指定感染症は、すでに知られた感染症でウイルスの変異などが起こり、感染力が高まったり毒性が強まったりした場合を想定しており、公衆衛生の必要に応じて患者を指定の医療機関に入院させて隔離したり、就業を制限したりといった措置をとるために政令で定められる。新しい感染症については、感染症法の「新感染症」の分類にもとづいて対応する。指定の医療機関とは、医療法に基づく感染症病床の基準を満たしていることや、院内での検査体制、感染症専門医の配置などを考慮して、厚生労働大臣や都道府県知事があらかじめ指定したものをいう。2013年4月現在で、一類・二類・新感染症に対応できる特定感染症指定医療機関が全国に3カ所8床、一類・二類に対応する第一種感染症指定医療機関が41施設79床となっている。
強制的な入院による隔離や就業制限は、医療における自己決定権や、人身の自由を縛るものであるため、指定に当たっては厚生労働大臣が厚生科学審議会感染症部会の意見を聞いた上で、政令を発する。
最近では、13年4月26日に鳥インフルエンザA(H7N9)を指定感染症とする政令が公布された。これは、中国で死亡者、重症者が相次いで報告され、台湾でも死亡者が確認されたことによる。なお、06年にもインフルエンザ(H5N1)が指定感染症となり、その後二類感染症に分類された。

(石川れい子  ライター / 2013年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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