日本大百科全書(ニッポニカ) 「新日曜美術館」の意味・わかりやすい解説
新日曜美術館
しんにちようびじゅつかん
NHK教育テレビの美術番組。1976年(昭和51)、前身である「日曜美術館」がスタートし、97年(平成9)に「新日曜美術館」と改称された。60分の放映時間、時間帯、特集のために招かれたゲストと富豊な映像資料を交えてのトークを主体とした番組構成は、放映当初より一貫して変わらない。
「日曜美術館」より以前は、美術番組といえば美術史的視点を導入した啓蒙色の強いものか、もしくは各地の美術館を取材して回る紀行番組的なものが主であり、その中には映画監督の吉田喜重(よししげ)を起用した「美の美」(テレビ東京系)のようなきわめて高踏的な内容のものもあった。しかし「日曜美術館」はより日常性を強調し、またゲストの個人的な趣味にもスポットを当てるなど、平易で敷居の高くない番組づくりによって人気を得た。古今東西の美術の名品を紹介するという趣旨のもと、特集される対象は仏教美術から現代美術まで幅広く、田中一村(いっそん)(1908―77)、守屋多々志(ただし)(1913―2003)、菅創吉(すがそうきち)(1905―82)など、同番組での紹介をきっかけに一般に知られるようになった美術家もいる。司会進行にはアナウンサーとタレントがペアを組む場合が多いが、なかには大岡玲(あきら)(1958― )のような作家が起用される場合もあり、各回のゲストにも、高階秀爾(しゅうじ)のような斯界の権威のみならず、大江健三郎、手塚治虫(おさむ)、吉増剛造のような他分野の著名人も多く招かれている。また、60分の放映時間中最後の15分間には特集とは別に「アート・シーン」というコーナーが設けられ、全国各地で開催されている展覧会の情報などが紹介されている。
「日曜美術館」はすでに四半世紀を超える長寿番組であり、蓄積された映像資料は膨大な量にのぼる。全15巻の『日本の美術館』シリーズなど、その一部は再編集されビデオソフト化されているほか、2001年(平成13)に放映された「奈良美智(よしとも)×村上隆 ニュー・ポップ宣言」のようにとくに反響の大きかった回は、単体でもソフト化されている。同番組の影響は大きく、NHKの「国宝探訪」「美と出会う」「四都物語」「夢の美術館」などの美術番組にも生かされているほか、民放系の美術番組にも大きな影響を与えている。
[暮沢剛巳]