放送法(1950年6月施行)に基づく特殊法人で,公共の福祉のために日本全国において受信できるように放送を行うことを目的とする(放送法第7条)日本で唯一の公共放送事業体。正しくは〈にっぽんほうそうきょうかい〉と読み,そのローマ字表記の頭文字をとってNHKと略称される。1925年3月,社団法人東京放送局(JOAK)が東京芝浦の仮放送局から日本最初のラジオ放送を開始,翌年,東京,大阪,名古屋の3放送局を統合して社団法人日本放送協会が設立された。これがNHKの前身であるが,放送法の施行に伴って新たに特殊法人日本放送協会として再出発した。53年にはNHK総合テレビが本放送を始め,59年に教育テレビ,60年にカラー放送,さらに69年にはFM放送を開始するなど第2次大戦後の日本における放送の復興と発展の母体となった。その後の大きな変化としては89年に本放送を開始した衛星放送の実施があり,これによって日本の放送は衛星利用時代に入った。NHKの経営に関する最高の意志決定機関は,国会の同意を得て内閣総理大臣が委員を任命する経営委員会(12名)であり,国民を代表するものとしてNHKの収支予算,放送番組編成計画などの基本方針を決定する。また,広告放送などの営利事業は認められず,通常の地上のテレビ放送受信機あるいは衛星放送を受信できる設備を設置した世帯が支払う受信料(放送受信料)を財源としている。NHKは多くの種類に及ぶ放送を実施している。すなわち中波ラジオでは一般向けの第1放送と教育番組を中心とする第2放送,音楽番組の多いFM放送,テレビでは総合テレビと教育テレビ,さらに2波の衛星放送,それらに加え本放送を目指してのハイビジョン放送を行っている。これらのほかにラジオとテレビによる国際放送(海外放送)も行っており,この海外向けの放送については部分的に国の交付金を受け財源としている。
広告収入で経営されている民間放送がその放送事業の対象範囲を原則として地域に置いているのに対し,NHKの放送は全国放送を基本としており,また公共性を強く要請されるところから,一党派や権力,資本などに左右されてはならず,番組の内容・編成も,大衆文化的色彩の濃い民間放送と対照的に,報道や教育・教養番組の比重が高い。なかでも近年は,流動する国内・国際情勢のなかで政治,経済,社会について的確な情報を迅速かつ多角的に提供するためにニュース番組の枠をさらに広げたり,高まる生涯教育への多様な要望にこたえて社会教育番組を再編成するなどのくふうがなされている。今後のNHKの課題としては,受信料を財源とする経営で急速に進展する技術革新にどのように対応するか,ということがある。ディジタル化への対応がその代表である。またNHK以外に多様な放送が多くのチャンネルで展開されるようになる激烈な競合の時代に,公共放送はそのような放送を行うべきなのか,どのようにすれば今後も国民の合意を得ながら受信料による経営が可能であるのか,という大きな課題を抱えている。
→民間放送
執筆者:後藤 和彦
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略称NHK。社団法人として1926年(大正15)8月6日に設立された公共放送企業体。第2次大戦前の放送は無線電信法(1915公布)で政府の直接の統制下におかれた。24年に財団法人の放送局が東京・大阪・名古屋でそれぞれ放送を開始したが,政府は各局を解散させ,これらを統合して社団法人日本放送協会を設立。大正から昭和への時代のかわり目にあって放送は国民意識の動員のために利用され,28年(昭和3)の全国中継網の完成も昭和天皇即位式の放送のためだった。敗戦後,50年公布の放送法で特殊法人日本放送協会に改められ,旧法人の事業を引き継いだ。53年テレビ放送を開始,89(平成元)年には衛星放送を開始した。
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…現実には公共放送は,一方における政治権力,他方における商業的利害という二つの力の間にあって微妙にバランスを維持しつつ総合性をもち,一般的な水準の番組を社会に広く供給することを要請されている。日本では日本放送協会(NHK),欧米ではイギリスのイギリス放送協会(BBC)がこうした公共放送の典型とされる。メディアの種類が少なく,それぞれのメディアのチャンネルも少なかった時代に成立しえた公共放送が,情報化の進展のなかでどのようなかたちで存続・発展しうるか,公共放送の前途には問題が多い。…
…放送法32条に基づいて日本放送協会(NHK)が徴集している料金。受信料ともいう。…
…その年3月22日(これがのちに放送記念日となる),社団法人東京放送局が東京芝浦の仮放送所で放送を開始した。翌26年8月,東京,大阪,名古屋の3局が合併,社団法人日本放送協会が設立され,日本のラジオ放送の普及が精力的にすすめられた。第2次大戦後は1950年の制度改革によって,翌年最初の民間放送のラジオ(中部日本放送と新日本放送(現,毎日放送))も開局され,新発足の特殊法人日本放送協会(NHK)と並んで今日まで発展してきた。…
…このラジオドラマは,舞台劇でも映画でも明確に現すことのできない炭坑内の暗黒,爆発や水の噴出する音などを生きた実感として描き出すことに成功しており,これによってラジオドラマは,ラジオの特性を生かしてつくりあげられる〈音の世界〉の新しい劇芸術として,その地位を確立させた。 日本放送協会(NHK)は,大正末期に当時の一流作家12人にラジオドラマ作品の執筆を委嘱,久米正雄だけが未執筆に終わったが,菊池寛,久保田万太郎,里見弴,岸田国士,吉井勇,小山内薫,山本有三などの作品はすべて当時の一流雑誌に掲載され,その後のラジオドラマの発達に貢献した。一方,このころから毎年のようにラジオドラマの懸賞募集が行われ,何人かの有能な新人が輩出する。…
※「日本放送協会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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