滋賀県大津市坂本に鎮座する日吉(ひよし)大社で,4月14日を中心に行う祭り。山王祭ともいった。元来,中心の祭りを4月中申日に行うのが例であったので申(さる)祭の名でも呼ばれた。この祭りの由来は〈社伝云,天武帝白鳳二年,大宮八柳浦に神幸(じんこう)ありて,田中の恒世天晴光が船にて,粟の供御(くご)を覆盆子(いちご)の葉に盛奉りしより,毎年此浦に神幸あるべき神勅あり(中略)此大祭故実多く,近郷近在,近江七浦皆此祭祀に与れりとぞ〉(《諸国図会年中行事大成》)という。1072年(延久4)より官幣にあずかることになり,当時は叡山の別当公人衆徒をはじめ社司数千人が社頭に参集し,行列を整えて神幸の儀を行った。1571年(元亀2)の織田信長の延暦寺焼打により一時断絶したが,1591年(天正19)再興し現在に至る。3月1日神輿揚(しんよあげ)(神輿を牛尾山上にかつぎあげる式)からはじまり,4月に入って神霊をのりうつさせる榊にかかわる一連の神事を行い,4月13日未の神事,花渡,宵宮落(よいみやおとし)(4基の猛烈果敢な神輿振),同14日例祭,桂の奉幣,神馬遷,大榊還幸,神輿出御(7基の神輿が八柳浜から湖上渡御し唐崎に着岸する),粟津の御供等の儀があり,翌15日船路御供献備式,還幸祭をもって終わる。
→日吉大社
執筆者:茂木 貞純
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