山王祭(読み)サンノウマツリ

デジタル大辞泉 「山王祭」の意味・読み・例文・類語

さんのう‐まつり〔サンワウ‐〕【山王祭】

滋賀県大津市の日吉ひよし大社例祭山王権現使者が猿であるとの信仰から、毎年陰暦4月のさるの日に行われた。現在は4月14日日吉祭 春》
東京都千代田区にある日枝ひえ神社の例祭。毎年6月15日に行われる。江戸二大祭りの一つで、神田祭とともに天下祭りといわれる。 夏》深川祭

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精選版 日本国語大辞典 「山王祭」の意味・読み・例文・類語

さんのう‐まつりサンワウ‥【山王祭】

  1. 〘 名詞 〙 山王権現の例祭。
  2. 滋賀県大津市坂本の日吉大社祭礼。猿が山王権現の使者であるという信仰から、陰暦四月の中の申(さる)の日に行なわれた。日吉祭。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「ただすいきゃうや、かほはしゅがさの、あかきはさるのさんわうまつりか」(出典:虎明本狂言・祐善(室町末‐近世初))
  3. 東京都千代田区永田町にある日枝神社の祭礼。陰暦六月一五日に行なわれ、神輿の渡御、山車踊屋台、その他の余興などでにぎわい、神田祭とともに江戸の二大祭礼といわれた。延宝九年(一六八一)からは、神田祭と隔年に行なわれる。天下祭。《 季語・夏 》
    1. 山王祭<b>②</b>〈江戸名所図会〉
      山王祭江戸名所図会
    2. [初出の実例]「大きな事をいわふなら、江戸の山王祭(サンワウマツリ)に麹町から出る諫鼓(かんこ)、さし渡しが三百六十間」(出典:咄本・御伽話(1773)てつほう)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山王祭」の意味・わかりやすい解説

山王祭
さんのうまつり

東京都千代田区永田町に鎮座する日枝神社例祭。文明10(1478)年に太田道灌川越の山王宮を現在地に勧請した日といわれる 6月15日の例祭奉幣を中心として,6月6~17日にかけて行なわれる。本来は船祭りとして始まったと伝わるが,江戸時代には,神田神社神田祭とともに神幸行列が江戸城内に入って将軍の上覧を受ける天下祭とされ,神田祭と交互に隔年(子・寅・辰・午・申・戌の年)の旧暦 6月15日に,宮神輿(→神輿)と氏子各町内の山車や附祭(つけまつり)が長蛇の列をなして行列する神幸祭が行なわれ,将軍の上覧を受けていた。今日も神田祭と隔年で 15日前後の平日に神幸祭があり,2基の鳳輦(ほうれん)と 1基の宮神輿,氏子町内からの美少年山車や東郷元帥山車,牛若大山車などの山車が行列して皇居周辺から日本橋銀座と東京中心部をめぐり,皇居では宮司らが坂下門から参内して神符(→お札献上が行なわれている。

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改訂新版 世界大百科事典 「山王祭」の意味・わかりやすい解説

山王祭 (さんのうまつり)

東京都千代田区にある日枝(ひえ)神社の祭礼。狭義にはとくにその神幸祭をいう。日枝神社は,文明年間(1469-87)に江戸城の地に勧請されたが,のち現在地に移ったものである。山王祭は,江戸時代には天下祭,御用祭とも別称され,神幸行列は江戸城内に練り込み,将軍の上覧に供したという。祭列には多数の山車(だし)が出,お囃子,踊り練物,曳物などが加わって豪華な祭りであった。1681年(天和1)以後,神田明神神田祭と隔年で行うことになった。山王祭は神田祭とともに江戸二大祭とされ,本祭も神田祭と隔年で,子寅辰午申戌の年に行われた。近年は交通事情も悪化し,2日にわたった神幸祭も例祭日の6月15日の前々日の1日となり,都心を一巡して神社へ帰る。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山王祭」の意味・わかりやすい解説

山王祭
さんのうまつり

東京都千代田区永田町に鎮座する日枝(ひえ)神社の祭礼をいう。近江(おうみ)(滋賀県大津市坂本)の日吉(ひよし)大社を勧請(かんじょう)した多くの神社は一般に日吉(ひえ)ないし日枝と称するが、中世から近世まで日吉山王社とか山王権現(ごんげん)とも称されたので、その祭礼も山王祭とよばれた。もと江戸城内紅葉山(もみじやま)に鎮座していたため、家康以来徳川将軍家代々の産土神(うぶすながみ)とされ、また江戸城下町西半部の総鎮守(ちんじゅ)でもあった。同じくその東半部の総鎮守、神田(かんだ)明神(現、神田神社)の神田祭とともに将軍上覧の栄誉を誇って御用祭、天下祭とも称した。祭日は6月15日で、3基の本社神輿(みこし)が茅場町(かやばちょう)の御旅所(おたびしょ)へ神幸する形式だが、もとこれに供奉(ぐぶ)して江戸末期には60基を超えた山車(だし)・練物(ねりもの)も、たび重なる震災・戦災でほぼ消失し、現在では多数の町神輿主体の祭礼に変化している。なお1615年(元和1)以来、本祭を神田祭と隔年交代で執行し、神幸を出さぬ年の祭りを陰祭(かげまつり)という。

[薗田 稔]


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百科事典マイペディア 「山王祭」の意味・わかりやすい解説

山王祭【さんのうまつり】

山王権現の祭。(1)滋賀県の日吉(ひえ)大社の例祭。古来,日吉祭と呼ばれ著名。昔は4月中申(さる)の日,現在は4月14日。12日夜の午(うま)の神事,13日宵宮(よいみや)落の勇壮な神輿(みこし)振り,14日天台座主の五色の奉幣と続き,同日午後唐崎湖上へ7基の神輿が渡御。(2)東京都千代田区の日枝(ひえ)神社の神幸祭。6月15日の例大祭に先立ち,13日(土・日の場合は変更)に行われる。江戸時代は3基の神輿が茅場町の御旅所まで神幸,多くの鉾(ほこ)や山車(だし)も繰り出した。祭列は江戸城内へも入り,江戸二大祭とされて,天下祭,御用祭とも呼ばれた。神田祭と隔年に行われる。

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事典・日本の観光資源 「山王祭」の解説

山王祭

(滋賀県大津市)
湖国百選 祭/踊編」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の山王祭の言及

【日枝神社】より

…旧官幣大社。例祭は6月15日で,江戸時代より中心地の名社の祭礼として,山王祭,御用祭,天下祭などとよばれ,神田祭,浅草三社祭とともに,江戸三大祭の一つとされる。【鎌田 純一】。…

【日吉祭】より

…滋賀県大津市坂本に鎮座する日吉(ひよし)大社で,4月14日を中心に行う祭り。山王祭ともいった。元来,中心の祭りを4月中申日に行うのが例であったので申(さる)祭の名でも呼ばれた。…

【日吉大社】より

… 日吉社の祭りはもと山の神をむかえて豊作を祈るもので,4月12,13日(旧暦4月の中の午(うま)と未(ひつじ)の日)の祭りは古式をとどめ,また明治以前は4月8日の花まつりには比叡山の女人結界が開放され,結界内の花摘堂に花を供えに女性たちが参拝したと伝え,山の神をむかえる儀式が形を変えて残ったものとされる。4月14日(申(さる)の日)の大宮の祭りは山王七社の神事で,七社の神輿が湖上に出て唐崎の沖で〈粟津の御供〉をうける儀式で,10世紀末には山王祭の主要な祭祀となった。 神々は国家の手厚い保護をうけ,《延喜式》には名神大社に列し,大比叡神は正一位,小比叡神は従四位上の位階をうけ,二十二社にも加えられた。…

※「山王祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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