19世紀末の日本社会の生活実態を現地調査によって記録した著作。著者は横山源之助で、1899年(明治32)に教文館から出版された。1896年の桐生、足利、富山に始まり、翌1897年の大阪、神戸、さらに1898年の東京で終わる全国各地の実態調査に基づいて、「中流」以下の生活の具体像を、貧民、職人社会、手工業、機械工場、小作人からなる5編の構成で生き生きと描き出した。付録として日本の社会運動を収める。貧民窟(ひんみんくつ)から鉄工場までを一括して下層社会と把握し、地域や家族生活の状況にまで言及した本書は、近代初頭の日本社会、とくに都市社会の生活問題を論じる場合の大きなよりどころとなった。1949年(昭和24)に岩波文庫に収録され、1985年には同文庫の改版が発行された。『横山源之助全集』別巻1(法政大学出版局刊)にも所収。
[中川 清]
『立花雄一著『評伝横山源之助――底辺社会・文学・労働運動』(1979・創樹社)』
明治中期に横山源之助が調査・記録した都市下層社会に関する古典的文献。1899年(明治32)刊,教文館発行。東京・阪神・桐生・足利・前橋・富山などの都市雑業層,労働者・小作農民の労働と生活の実態を視察して,「毎日新聞」や雑誌にあいついで発表した実地調査報告を,東京の貧民状態,職人社会,手工業の現状,機械工場の労働者,小作人生活事情の5編に整理した。付録に日本の社会運動として日清戦争前後の労働運動の高揚を掲載。「中央公論」の「貧民状態の研究」とあわせ産業革命期の都市と地方の下層社会に関する最も水準の高い内容をもち,農商務省刊行の「職工事情」と並ぶ資料。「岩波文庫」所収。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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