明治の新聞記者。日本の社会調査の先駆者。号は天涯茫々生(てんがいぼうぼうせい)、無腸、無蝶(むちょう)、樹下石上人など。明治4年2月21日富山県魚津(うおづ)生まれ。16歳のとき上京。法律家を志し、東京法学院(現、中央大学)を卒業したが、弁護士試験にたびたび失敗し放浪生活に入る。二葉亭四迷(ふたばていしめい)や、すでに貧民窟(くつ)ルポを発表していた松原岩五郎(1866―1935)と知り合いになる。このころ、自己の体験もあって都市貧民問題に関心をもつようになった。1894年(明治27)島田三郎の経営する毎日新聞社に入社、都市の下層社会や労働者の状態を活写した調査報告を同紙に発表。これらは『日本之下層社会』(1899)としてまとめられた。横山の調査報告は、勃興(ぼっこう)期資本主義の暗部である都市貧民や労働者の実態を鋭い問題意識と的確な観察とによってとらえた社会調査の先駆であった。また横山は片山潜らと労働運動組織化の実践活動にも参加した。しかし生活には恵まれず、大正4年6月3日東京・白山(はくさん)で病没した。ほかに『内地雑居後之日本』(1899)『明治富豪史』(1910)などの著書がある。
[有山輝雄]
『『横山源之助全集』第1巻、第3巻のみ刊行(1973・明治文献)』▽『立花雄一著『評伝横山源之助』(1979・創樹社)』
下層社会の研究者,ジャーナリスト。富山県下新川郡魚津町に網元の子として生まれ,左官職の横山伝兵衛の養子となる。富山尋常中学校を中退して上京,英吉利法律学校に入学し,1891年卒業。弁護士試験に失敗し,放浪生活を送りながら二葉亭四迷,内田魯庵ら文学者と交わった。94年毎日新聞社(島田三郎が主宰した《横浜毎日新聞》の後身で,現《毎日新聞》とは別)に入社,このころから日本の下層社会を現地に入って調査し,その成果を公にすることに精力を注ぎはじめた。その成果は99年に刊行の2著,《日本之下層社会》《内地雑居後之日本》に集成された。たえず庶民の立場に立って,その生活を正確に,また克明に記録するとともに,社会運動の発展に彼らの未来を期待した。その後も多くのルポルタージュを書き,また農商務省の職工事情調査(《職工事情》)に参加するなど活躍したが,やがて毎日新聞社や社会運動から離れ,後年は移民問題に熱意を示し,また人物評論,文学評論に力を注いでいる。
執筆者:池田 信
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明治期のジャーナリスト
出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報
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(徳盛誠)
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1871.2.21~1915.6.3
明治期の労働問題研究家。富山県出身。天涯茫々生などと号した。中学校中退後上京し,二葉亭四迷らと交流して影響をうける。1894年(明治27)毎日新聞社入社。都市下層社会の探訪記事を発表し,「日本之下層社会」にまとめた。初期社会主義者とも接触して社会労働問題にも関心を寄せ,「内地雑居後之日本」を著し,「職工事情」調査にも参加。後年は移民問題・文学評論に転じた。
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…洋行時,ヨーロッパ諸都市で開始された下水道建設やペッテンコーファーの説に接した森鷗外は,ここに都市問題解決の中心を見いだし,〈市区改正は果して衛生上の問題に非ざるか〉(1889)として〈立都建家の改良〉を図るため下水道,住宅,清掃等生活環境改善の必要を力説した。また続いてせっかく横山源之助《日本之下層社会》(1899)や農商務省《職工事情》(1903)等の調査があったにもかかわらず,〈富国強兵〉の名のもとで,〈道路橋梁河川ハ本ナリ,水道家屋下水ハ末ナリ〉(東京市区改正意見草案,1884)とされた。そして工場や事務所(たとえば丸の内煉瓦街),軍事施設づくりが都市内でも優先した。…
…横山源之助の労作で1899年(明治32)刊。横山は1894年末の毎日新聞社入社後,日本の下層社会の実態調査に着手したが,やがて佐久間貞一の援助を得て本格的に取り組むようになり,東京,大阪,神戸,桐生,足利,前橋,富山などの現地を精力的に視察して,都市雑業層や職人,織物業・生糸業・マッチ製造業・紡績業・重工業の労働者,小作農民の労働と生活の実態を克明にとらえた。…
※「横山源之助」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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