横山源之助(読み)ヨコヤマゲンノスケ

デジタル大辞泉 「横山源之助」の意味・読み・例文・類語

よこやま‐げんのすけ【横山源之助】

[1871~1915]社会問題研究家。富山の生まれ。横浜毎日新聞の記者となり、都市下層社会労働者の実態を調査し、「日本之下層社会」を著した。他に「内地雑居後之日本」など。

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精選版 日本国語大辞典 「横山源之助」の意味・読み・例文・類語

よこやま‐げんのすけ【横山源之助】

新聞記者富山県出身。横浜毎日新聞社に勤務。下層社会の実態の調査を開拓した、日本の労働実態調査の先駆者主著「日本の下層社会」。明治四~大正四年(一八七一‐一九一五

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「横山源之助」の意味・わかりやすい解説

横山源之助
よこやまげんのすけ
(1871―1915)

明治の新聞記者。日本の社会調査の先駆者。号は天涯茫々生(てんがいぼうぼうせい)、無腸、無蝶(むちょう)、樹下石上人など。明治4年2月21日富山県魚津(うおづ)生まれ。16歳のとき上京。法律家を志し、東京法学院(現、中央大学)を卒業したが、弁護士試験にたびたび失敗し放浪生活に入る。二葉亭四迷(ふたばていしめい)や、すでに貧民窟(くつ)ルポを発表していた松原岩五郎(1866―1935)と知り合いになる。このころ、自己の体験もあって都市貧民問題に関心をもつようになった。1894年(明治27)島田三郎の経営する毎日新聞社に入社、都市の下層社会や労働者の状態を活写した調査報告を同紙に発表。これらは『日本之下層社会』(1899)としてまとめられた。横山の調査報告は、勃興(ぼっこう)期資本主義の暗部である都市貧民や労働者の実態を鋭い問題意識と的確な観察とによってとらえた社会調査の先駆であった。また横山は片山潜らと労働運動組織化の実践活動にも参加した。しかし生活には恵まれず、大正4年6月3日東京・白山(はくさん)で病没した。ほかに『内地雑居後之日本』(1899)『明治富豪史』(1910)などの著書がある。

[有山輝雄]

『『横山源之助全集』第1巻、第3巻のみ刊行(1973・明治文献)』『立花雄一著『評伝横山源之助』(1979・創樹社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「横山源之助」の意味・わかりやすい解説

横山源之助 (よこやまげんのすけ)
生没年:1871-1915(明治4-大正4)

下層社会の研究者,ジャーナリスト。富山県下新川郡魚津町に網元の子として生まれ,左官職の横山伝兵衛の養子となる。富山尋常中学校を中退して上京,英吉利法律学校に入学し,1891年卒業。弁護士試験に失敗し,放浪生活を送りながら二葉亭四迷,内田魯庵ら文学者と交わった。94年毎日新聞社(島田三郎が主宰した《横浜毎日新聞》の後身で,現《毎日新聞》とは別)に入社,このころから日本の下層社会を現地に入って調査し,その成果を公にすることに精力を注ぎはじめた。その成果は99年に刊行の2著,《日本之下層社会》《内地雑居後之日本》に集成された。たえず庶民の立場に立って,その生活を正確に,また克明に記録するとともに,社会運動の発展に彼らの未来を期待した。その後も多くのルポルタージュを書き,また農商務省の職工事情調査(《職工事情》)に参加するなど活躍したが,やがて毎日新聞社や社会運動から離れ,後年は移民問題に熱意を示し,また人物評論,文学評論に力を注いでいる。
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百科事典マイペディア 「横山源之助」の意味・わかりやすい解説

横山源之助【よこやまげんのすけ】

社会問題研究家,ジャーナリスト。号は天涯茫々生,有磯逸郎など。富山県生れ。英吉利法律学校卒業。社会問題に興味を持ち,《毎日新聞》(現在の《毎日新聞》とは別)入社,以後没時までの20年間,ジャーナリストとしての生活を続ける。下層社会の実態や労働事情を現地調査,公表することに努め,都市問題,労働問題などについて読者の注意を喚起するとともに,日本の初期ルポルタージュの代表作をものした。著書に《日本之下層社会》《内地雑居後之日本》などがある。
→関連項目日本之下層社会横浜毎日新聞

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朝日日本歴史人物事典 「横山源之助」の解説

横山源之助

没年:大正4.6.3(1915)
生年:明治4.2.21(1871.4.10)
明治時代の貧民問題研究,運動家。天涯茫々生などと名乗る。16歳で富山魚津から上京,弁護士を志すが試験に挫折。二葉亭四迷と出会い,貧民問題に関心を抱く。明治27(1894)年日清戦争を庶民の実情から問うルポを皮切りに『毎日新聞』『労働世界』などに社会底辺の実態調査を続々発表。『日本之下層社会』『内地雑居後之日本』(ともに岩波文庫)はその集成。後者は外国人の日本居住が経済や生活におよぼす影響を冷静に予測しようとした独自の試み。労働運動の先駆を成したが,あくまで現実の個人の境遇にこだわる彼は次第に運動から離脱,移民に活路をみて45年ブラジルで実地調査を行った。

(徳盛誠)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「横山源之助」の解説

横山源之助 よこやま-げんのすけ

1871-1915 明治時代の新聞記者,社会問題研究家。
明治4年2月21日生まれ。二葉亭四迷,松原岩五郎らとまじわる。明治27年「毎日新聞」の記者となり,都市の底辺を実態調査し,「日本之下層社会」を刊行。片山潜らと労働運動にも参加した。大正4年6月3日死去。45歳。富山県出身。号は天涯茫々生など。著作に「内地雑居後之日本」など。
【格言など】資本家の数に十倍百倍せる労働者は年々窮迫をいたしつつあり(「内地雑居後之日本」)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「横山源之助」の意味・わかりやすい解説

横山源之助
よこやまげんのすけ

[生]明治4(1871).2.21. 富山
[没]1915.6.3. 東京
明治・大正期のジャーナリスト。二葉亭四迷,松原岩五郎らの影響で社会問題に関心を寄せるようになった。 1894年毎日新聞社入社。桐生,足利の機業地,北陸,阪神地方の工場地帯を調査して,そのルポルタージュを『毎日新聞』紙上に連載した。これはのちに『日本之下層社会』にまとめられたが,日本資本主義興隆期における労働者階級の実態を活写したものと評価されている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「横山源之助」の解説

横山源之助
よこやまげんのすけ

1871.2.21~1915.6.3

明治期の労働問題研究家。富山県出身。天涯茫々生などと号した。中学校中退後上京し,二葉亭四迷らと交流して影響をうける。1894年(明治27)毎日新聞社入社。都市下層社会の探訪記事を発表し,「日本之下層社会」にまとめた。初期社会主義者とも接触して社会労働問題にも関心を寄せ,「内地雑居後之日本」を著し,「職工事情」調査にも参加。後年は移民問題・文学評論に転じた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「横山源之助」の解説

横山源之助
よこやまげんのすけ

1871〜1915
明治時代のジャーナリスト・社会問題研究家
富山県の生まれ。法学勉強中,二葉亭四迷らの影響で,社会問題に関心をもつ。毎日新聞社に入社し,各地の工場労働者の状態の視察記を掲載,1899年『日本之下層社会』として刊行した。この書の中で平民主義を主張し,その実現のために教育の普及に期待をかけている。

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世界大百科事典(旧版)内の横山源之助の言及

【都市問題】より

…洋行時,ヨーロッパ諸都市で開始された下水道建設やペッテンコーファーの説に接した森鷗外は,ここに都市問題解決の中心を見いだし,〈市区改正は果して衛生上の問題に非ざるか〉(1889)として〈立都建家の改良〉を図るため下水道,住宅,清掃等生活環境改善の必要を力説した。また続いてせっかく横山源之助《日本之下層社会》(1899)や農商務省《職工事情》(1903)等の調査があったにもかかわらず,〈富国強兵〉の名のもとで,〈道路橋梁河川ハ本ナリ,水道家屋下水ハ末ナリ〉(東京市区改正意見草案,1884)とされた。そして工場や事務所(たとえば丸の内煉瓦街),軍事施設づくりが都市内でも優先した。…

【日本之下層社会】より

横山源之助の労作で1899年(明治32)刊。横山は1894年末の毎日新聞社入社後,日本の下層社会の実態調査に着手したが,やがて佐久間貞一の援助を得て本格的に取り組むようになり,東京,大阪,神戸,桐生,足利,前橋,富山などの現地を精力的に視察して,都市雑業層や職人,織物業・生糸業・マッチ製造業・紡績業・重工業の労働者,小作農民の労働と生活の実態を克明にとらえた。…

※「横山源之助」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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