日銀が契約に基づき、金融機関の業務や財務の健全性を把握するために行う調査。6~30人程度の態勢で銀行や信用金庫などに立ち入る。融資や有価証券のリスクの管理体制などを点検し、必要に応じて要請や助言を行う。金融庁の検査とは異なり罰則は伴わないが、金融機関が正当な理由なく考査や情報提供を拒んだ場合は、その事実を公表することがある。全国の約500の金融機関と考査契約を結び、2017年度は銀行など計100の契約先で考査を実施した。
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日本銀行は「銀行の銀行」として銀行・証券会社など金融機関と預金・貸出取引を日々行っており、窓口を通じて取引先金融機関の資金繰り・与信活動の状況の把握につとめている。そのほか日銀は取引先金融機関との約定に基づき、日銀職員が適時、当該金融機関を訪問しその業務と財産の状況について実態調査を行っている。これらの調査を総称して日銀考査とよぶ。
旧日本銀行法では日銀考査の根拠規定はなく、日銀と取引先金融機関との契約によって行われていたが、改正日本銀行法(1998年4月施行)では第44条に明文化された。一般に日銀考査と金融庁検査局の検査(大蔵省時代には大蔵省検査といわれた)はしばしば同一視されることがある。金融庁の検査は、銀行法25条によって金融機関の法令違反をチェックする点に重点が置かれる。これに対して日銀考査は、金融機関が健全経営を行っているかどうか、日銀の金融政策の効果が個々の金融機関の行動に浸透しているかどうか、その実態と問題点を調査し、金融機関を指導することをねらいとする。
日銀法改正の審議の過程において、金融機関側から当時の大蔵省検査と日銀考査は二重の負担であり、その軽減を求める意見が出された。しかし大蔵省検査と日銀考査は目的・手法が異なること、また金融機関の経営破綻(はたん)が発生している状況からみて、両者は実施時間等について互いに調整する必要はあるものの、従来どおり両者によるダブル・チェックが行われることになった。
[石田定夫]
『熊倉修一著『日本銀行のプルーデンス政策と金融機関経営――金融機関のリスク管理と日銀考査』(2008・白桃書房)』
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