改正日本銀行法(読み)かいせいにっぽんぎんこうほう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

改正日本銀行法
かいせいにっぽんぎんこうほう

日本銀行は1882年(明治15)日本銀行条例によって設立された。同行の営業年限は当初30年とされ、さらにその後30年延長されたが、その年限が満了となった1942年(昭和17)に日本銀行法が公布された。1942年日本銀行法は第二次世界大戦中の戦時立法であり、日本銀行は強度の国家機関的性格をもつ特殊法人となった。戦後になって1949年6月同法の一部改正が行われ、政策委員会が設けられ日本銀行の民主化が図られた。その後も同法の改正がたびたび試みられ、とくに1957~1960年には大蔵大臣の諮問機関であった金融制度調査会(現金融審議会)で活発に審議されたが、政府と日本銀行の関係について見解が分かれ、法案化されずに終わった。しかし1990年代になり、海外では中央銀行法を改正する国が相次いで現れ、しかも、そのいずれもが中央銀行の独立性強化を目ざすものであった。日本では1980年代後半以降における内外の経済・金融情勢の変化に対応し、日本銀行の「独立性」とその意思決定の「透明性」を高め、日本銀行の業務を適正かつ効率的に運営するという方向で、日本銀行法の全面的な改正が行われた。同法は1997年6月公布(平成9年法律第89号)、1998年4月1日施行され、日本銀行は新体制に移行した。[石田定夫]

改正日本銀行法の主要点

改正日本銀行法の主要点は以下のとおりである。
〔1〕改正日本銀行法第1条は日本銀行の目的規定において、(1)日本銀行は中央銀行として銀行券を発行するとともに、通貨および金融の調節(金融政策と同義)を行うこと、(2)金融機関相互間の資金決済の円滑化を進めて信用秩序の維持(金融システムの安定と同義)に資すること、の二つを目的とする、とうたっている。すなわち、第1条は日本銀行の業務目的について、(1)銀行券の発行と金融政策の担い手、(2)最後の貸し手、の2点を指摘している。中央銀行の任務としては、いずれも重要である。
〔2〕第2条は金融政策運営の理念として、日本銀行は政策運営にあたって物価安定を図ることを通じて、国民経済の健全な発展に資することをもってその理念とする、とある。すなわち、第2条において物価安定は金融政策固有の目的であること、そして物価安定と経済発展はいずれが重要であるかの二者択一の関係にあるのではなく、物価安定は経済発展の前提条件であることが示されたのである。
〔3〕第3条において、日本銀行の金融政策決定の自主性(独立性と同義語と考える)は尊重されなければならない、そして政策決定の内容および過程を国民に明らかにするように努めなければならない、と明文化された。これが日本銀行の独立性と透明性(説明責任)の問題である。
〔4〕金融政策の基本は最高意思決定機関である政策委員会(金融政策決定会合)において決定される(第15条)。委員会の構成メンバーは総裁、副総裁2人、審議委員6人の計9人(第16条)。両議院の同意を得て内閣によって任命される(第23条)。任期は5年(第24条)。委員会メンバーは身分保障が確保され、在任中、政府と意見を異にすることを理由に解任されることはない(第25条)。委員会(政策決定会合)に政府代表者の出席は認められ、意見の陳述、議案の提出、議決延期の請求をすることはできるが、委員会における議決権はない(第19条)。前述の1957~1960年の金融制度調査会最終報告において政府と日本銀行の関係について見解が分かれたが、改正法では以上のように日本銀行の独立性確保に落ち着いた。半面、日本銀行はその政策決定の内容・経過を国民に説明することが義務づけられ、政策決定会合の議事録を速やかに作成し一定期間後に公表し(第20条)、また国会に対して業務報告書を提出、説明することになった(第54条)。
〔5〕日本銀行は手形割引、手形貸付、国債売買などの通常業務(第33条)のほか、金融機関における電子情報処理組織の故障、大型金融機関の破綻(はたん)等の影響が他の金融機関に連鎖反応し、金融システム全体が支払資金の不足等の混乱する状況(システミックリスク)において、また政府が信用秩序の維持のため必要と認めたときは政府の要請を受けて、日本銀行は緊急貸付を行うことができる(第37条、第38条)。これは「最後の貸し手」としての中央銀行の流動性の供給である。[石田定夫]
『藤井良広著『日銀はこう変わる』(1997・日本経済新聞社) ▽立脇和夫著『改正日銀法』(1998・東洋経済新報社) ▽三木谷良一・石垣健一編著『中央銀行の独立性』(1998・東洋経済新報社) ▽鐘ヶ江毅著『中京大学経済学研究叢書7 新しい日本銀行――改正日本銀行法の研究』(1999・勁草書房) ▽日本銀行金融研究所編『新しい日本銀行――その機能と業務』(2000・有斐閣) ▽呉文二・島村高嘉・中島真志著『読本シリーズ 金融読本』第26版(2007・東洋経済新報社)』

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