国指定史跡ガイド 「旧和中散本舗」の解説
きゅうわちゅうさんほんぽ【旧和中散本舗】
滋賀県栗東(りっとう)市六地蔵にある店舗跡。旧東海道草津(くさつ)宿と石部(いしべ)宿との間の六地蔵に位置し、江戸時代に道中薬の「和中散」を売っていた大角弥右衛門(おおすみやえもん)の店鋪兼住宅跡である。かつて徳川家康が腹痛を起こした際、この薬を服用してすぐに治ったことから、一躍その名を知られるようになった。薬販売業のほか、草津宿と石部宿の「間(あい)の宿」として公家や大名などの休憩所も務め、小堀遠州(こぼりえんしゅう)作と伝わる庭や、曽我蕭白(そがしょうはく)の襖絵(ふすまえ)などの貴重な文化財も残されている。現在の建物は寛永年間(1624~44年)に建築されたもので東海道をはさみ南北に分かれており、主要部の南部は向かって右が店舗や仕事場、住居で、店舗には看板や湯沸かし釜などが往時のまま残り、土間を隔てた仕事場には木製の動輪や歯車によって操作する製薬用の石臼がある。左側には正門や玄関を設けた座敷構えの部分が、街道向かい側には馬つなぎや薬師堂などがある。大角家は慶長年間(1596~1615年)に当地に来住したと伝えられ、主屋はそのころの建物、座敷構えの部分はその後に建てられたものとされる。「中の本陣」ともいわれ、堂々とした建物は『東海道名所図会』にも描かれるほどで、産業史や交通史の遺跡としてきわめて貴重なことから、1949年(昭和24)に国の史跡に指定された。JR草津線手原(てはら)駅から徒歩約30分。