春日山石窟仏(読み)かすがやませつくつぶつ

日本歴史地名大系 「春日山石窟仏」の解説

春日山石窟仏
かすがやませつくつぶつ

高畑たかばたけ町字地獄谷じごくだに、春日山国有林内にある。国史跡。首切地蔵の東、柳生やぎゆう街道(滝坂道)の急な坂道を登りつめた左手、高所に位置する。凝灰岩質の南面した石窟で、俗に穴仏あなぼとけともよばれる。東西二窟からなり、東に胎蔵界、西に金剛界の諸石仏を彫出す。西窟の中央の壁面に「□□□□久寿二年八月二十日始之造作者今如房願意」の陰刻があったが、今は年号個所を失っている。また墨書で「保元二年大蔵丁丑二月二十七日仏造始、開眼四月二十一日」と書き残された古銘がある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「春日山石窟仏」の解説

かすがやませっくつぶつ【春日山石窟仏】


奈良県奈良市高畑町にある石窟仏。春日山中の国有林のなかにあり、首切地蔵の東、柳生街道急坂を登ったところにある。南面する凝灰岩質の岩壁に東西の2窟をうがち、その内部の壁に仏像を彫刻していることから、仏教遺跡であることが顕著なため、1924年(大正13)に国の史跡に指定され、1927年(昭和2)には風化作用を防止するため覆屋を架けて保存整備がなされた。東窟は開口4.7m、奥行き3m、奥壁幅4m、高さ2m余、西壁に地蔵菩薩像4体、東壁に観音像3体が刻まれ、窟内中央には層塔として造られたと推定される高さ2mの石柱があり、塔身の東面に薬師、南面に釈迦、西面に阿弥陀、北面に弥勒(みろく)と思われる4仏が彫られている。西窟は開口4.7m、奥行き2.3m、西壁隅に邪鬼を踏み、火炎光背を背負った多聞天(たもんてん)と思われる天部像が彫られ、その横には阿弥陀如来坐像、さらに横には不空成就像、大日如来像などを配置。東窟は顕教系の4仏の柱を中心に南都仏教系の諸尊と観音・地蔵を、西窟は金剛界5仏という密教系諸尊を配置していることから、顕教と密教の融合をみることができるとされている。周辺春日山原始林は、1998年(平成10)に「古都奈良の文化財」として、世界遺産に登録された。近畿日本鉄道奈良線近鉄奈良駅から奈良交通バス「破石町」下車、徒歩約40分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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