国指定史跡ガイド 「昼飯大塚古墳」の解説
ひるいおおつかこふん【昼飯大塚古墳】
岐阜県大垣市昼飯町にある古墳。金生(きんしょう)山から続く標高25mの牧野台地に位置する古墳時代前期の前方後円墳で、前方部を西南に向けた3段築成であり、周囲に鍵穴形の周溝がめぐっていた。発掘調査の結果、古墳の規模は全長約150m、後円部の径96m、高さ13m、前方部の長さ約50m、前端の幅約80mで、墳丘各段の葺石(ふきいし)や埴輪(はにわ)列も保存状態が良好であった。後円部の墳頂には全面に礫(れき)が敷かれて直径20mの円形に埴輪列がめぐり、勾玉(まがたま)や管玉(くだたま)、臼玉(うすだま)、棗玉(なつめだま)、算盤玉(そろばんだま)など約400点の滑石(かっせき)製玉類や少量のガラス玉、高坏(たかつき)や小型丸底壺などの土師器(はじき)、笊形(ざるがた)土器と土製品など、葬礼に使われたものが残されていた。また、主体部上には形象埴輪が設置されていたらしく、靫(ゆき)や盾、蓋、家形などの埴輪片が出土している。墓坑は約12m四方の方形で、盗掘を受けた竪穴(たてあな)式石室と粘土槨(ねんどかく)と考えられる2つの主体部が並んで設置されていた。盗掘坑からは滑石製・碧玉(へきぎょく)製の石釧(いしくしろ)や、さまざまな形の滑石製模造品、臼玉・勾玉・算盤玉・棗玉など2000点を超える滑石製玉類、鉄器残欠などが発掘され、墓坑の一画には鉄刀13点、鉄剣6点をはじめ武器や農工具が埋納されていた。大垣市域は昼飯大塚古墳以外にも花岡山古墳や長塚古墳、遊塚(あそびづか)古墳など有力な古墳が数多く知られており、なかでも昼飯大塚古墳は東海地方最大級の前方後円墳で、墳丘の構造や埴輪の特徴、埋葬施設の構造、副葬品の内容など、いずれも畿内(きない)の大王墓に準じるような重要古墳であることから、2000年(平成12)に国の史跡に指定された。JR東海道本線ほか大垣駅から名阪近鉄バス「赤坂総合センター」下車、徒歩約3分。