最先端の高度医療を受けたい時(上手な医療の利用法)

六訂版 家庭医学大全科 の解説

上手な医療の利用法
最先端の高度医療を受けたい時
(健康生活の基礎知識)

●紹介状を持って専門医へ

 ありふれた病気や軽いけがの場合は、病院選びも、そんなに神経質になることもないでしょう。しかし、がんや原因のはっきりしていない難病や、特殊な治療を要する病気となれば話は別です。生命に関わることもあり、深刻な症状をもたらすこともあるだけに、病院選びも慎重に行う必要があります。かかりつけの医師をもっている場合は、よく相談してかかりつけ医の紹介状を持って専門医診断、治療を受けるべきです。

 この場合、大学病院や大病院であれば最良の医療が受けられるとは限りません。同じ大学病院でも得意分野があります。たとえばがんの場合、あらゆる部位のがんがあり、耳鼻咽喉科領域のがんは、頭頸部がんといいます。大学病院には必ず耳鼻咽喉科がありますが、大学病院によっては、頭頸部がんは多くの症例を扱っていない場合もあります。がんを専門としているがん専門病院のほうが、症例数も圧倒的に多く、経験豊富な専門スタッフがそろっている場合が多いのです。

 がんと診断された場合、かかりつけ医らと相談すると同時に、患者自身もいろいろ情報を収集することが望ましいと思います。

 かかりつけ医から専門医に紹介してもらう場合、かかりつけ医と専門医が面識があったり、知り合いである必要があると思っている人は意外に多いのですが、その必要はありません。マスメディア、インターネット、本などあらゆる情報網から情報を収集して、「この病院のこの医師の診療を受けたい」とかかりつけ医にお願いして、紹介状をもらって受診することも可能です。

 大学病院、がん専門病院などを受診する場合、これまでの経過X線写真など検査所見を携えて受診することが大切です。そして自分なりに病気の経過、医師にどうしても伝えたいこと、質問したいことなど、整理してメモしておくことも忘れないでください。

●「先進医療制度」を活用する

 最先端の医療を受けたい時は、「先進医療制度」を利用する方法があります。先進医療とは文字通り最先端の医療です。

 先進医療には厳密にいうと「第2項先進医療」と「第3項先進医療」の2種類があります。「第2項」は2004年から導入されたもので、薬事法承認認証適用のあるものです。「第3項」は2008年に導入された制度で、薬事法の承認・認証・適用を受けていないものです。薬事法の承認などを受けてはいませんが、一定要件を満たし科学的根拠がある医療技術であること、特定機能病院(大学病院の本院など)または同等の体制のある病院であるなど、「高度医療評価会議」によって安全性と有効性を認められることが必須条件になっています。

 2010年5月1日現在で承認されている先進医療は107種類あり、そのうち第3項先進医療は21種類あります。

 「第2項」では、たとえば、「重粒子線治療」、「陽子線治療」などがあります。歯科では「インプラント義歯」などが入っています。

 「第3項」では、「内視鏡下手術用ロボットを用いた冠動脈バイパス手術」「経皮的肺がんラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」、「経皮的乳がんラジオ波焼灼療法」(経皮的とは、病変部を切開しないで、皮膚を通して針を刺すなどして治療すること)などがあります。

 先進医療を行う病院は、受付、フロアなど患者の目に届きやすい所に、先進医療技術の内容、費用などについて掲示し、患者が選択しやすいようにすることになっています。医療機関は、事前に治療内容や負担金額などを患者に説明し、同意を得ることになっています。

 費用については、「先進医療」にかかわる費用は全額自己負担になります。「先進医療にかかわる費用」以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院等)の費用は、一般の保険診療と同じように扱われます。

 ここで注意しておきたいのは、先進医療は、いずれも学会レベルではすでに確立された医療技術とはいえ、一般的には、まだ完全には認知されていない新しい技術だということです。それだけに先進医療を受けるにあたっては、一般診療以上に慎重な対応が求められます。治療内容はもちろん、治療期間や生活上の制限、かかる費用などについても十分な説明を受け、自ら検討し、十分納得したうえで同意書に署名する必要があります。インフォームド・コンセント(情報を与えられたうえでの同意)を徹底することが大切です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報