月経異常(読み)げっけいいじょう(その他表記)menstrual disorder

改訂新版 世界大百科事典 「月経異常」の意味・わかりやすい解説

月経異常 (げっけいいじょう)
menstrual disorder

正常月経より逸脱した異常な状態のことで,無月経のほかに,月経の開始時期(初潮)や終了時期(閉経),月経周期の長さ,月経血量,月経時の随伴症状などの異常であり,以下のようなものが含まれる。

成熟婦人において月経のみられない状態をいう。その期間は3ヵ月以上の場合である。いろいろな原因で起こる。
無月経

初潮menarcheの異常には早発月経precocious menstruationと晩発月経delayed menstruationとがある。前者は,初潮発来が満10歳未満,ことに8歳以前にみられる場合であって,卵巣ホルモンの早期分泌による。間脳視床下部,脳下垂体,松果体の腫瘍などの中枢神経系の疾患,エストロゲンを過剰に分泌するある種の卵巣腫瘍(卵巣顆粒膜細胞腫など)や副腎の腫瘍または増生症,また体質性早熟もある。後者の晩発月経の年齢基準は明確にきめられないが,満18歳以後のものは原発性無月経であることが多いので,婦人科医の専門的な診療が必要である。また,閉経menopauseが異常に早かったり,遅かったりすることがある。40歳以前の閉経を早期閉経,56歳以上の閉経を遅発閉経という。

月経周期の異常とは,成熟婦人における月経周期日数25~35日の正常範囲をはずれて,異常に長く延長したり,また異常に短い場合で,前者を希発月経oligomenorrhea,後者を頻発月経polymenorrheaといい,卵巣機能の不全に基づくことが多い。(1)希発月経 月経周期が39~40日以上に延長する場合で,3ヵ月以上の場合は続発性無月経になる。(2)頻発月経 月経周期が24日以内の場合で,これには無排卵性のものと排卵性のものがある。後者では,卵胞期が短縮したために起こるものや,黄体機能不全で黄体期が短縮したためのものがある。思春期および更年期にはしばしばみられる。

月経過少症hypomenorrheaと月経過多症hypermenorrheaとがある。(1)月経過少症 月経血量が異常に少ない場合で,1~2日くらい,ときに数時間の血性帯下のこともある。過少月経ともいう。原因としては,結核性内膜症や子宮腔の癒着などの器質性のものと,子宮発育不全や無排卵症や黄体機能不全などの機能性のものとがある。希発月経と合併し,希発過少月経の形をとることが多い。(2)月経過多症 月経血量が異常に多い場合で,全量250g以上が一応の目安になる。過多月経ともいう。しばしば,凝血を混ずることがあり,また月経日数が延長する。貧血を伴うことが多い。原因の大部分は器質的のもので,子宮筋腫子宮内膜ポリープ子宮内膜炎子宮内膜症,子宮肥大症などである。また,過エストロゲン症による子宮内膜肥厚症や,エストロゲン分泌不足による子宮内膜萎縮ないし再生不全によるものもある。また貧血,白血病,血液疾患に随伴する症状としてくることもあるので,全身性疾患に留意する。治療としては,器質的疾患に対するものを除けば,ホルモン療法や抗プラスミン剤,止血剤の投与を行う。

1~2日くらいしかない異常に短いものと,8日以上つづく異常に長いものとがある。これらは,しばしば本来は月経血量の異常である月経過少ないし過多と同時に起こる。月経持続日数の延長は,子宮内膜炎,粘膜下子宮筋腫やポリープ等の器質的原因に基づくことが多い。また,器質的な原因が明らかでない機能性のものは,機能性子宮出血functional uterine bleedingといい,無排卵性月経であることが多い。これには二つのタイプがみられる。一つは,排卵が月経の第15~16日ころに起こらず,20日目くらいに卵胞萎縮が急に起こるために,卵胞から分泌されるエストロゲン量が急に低下し,エストロゲン消退出血が発生する場合であり,もう一つは,卵胞の存続がつづき,エストロゲンが長期間作用して,腺囊性子宮内膜増殖症をきたし,ついに破綻(はたん)出血を起こす場合である。8日以上,ときに数週間から1ヵ月も持続する場合があり,貧血を伴うことが多い。卵巣機能の不安定な若年思春期と更年期に多くみられる。なお,更年期におけるこのような月経異常の場合には,子宮筋腫,子宮内膜ポリープや,とくに子宮頸癌,子宮体癌の悪性腫瘍の場合があるので,すべての治療,とくにホルモン治療の前に,婦人科専門医による診察や検査,ことに子宮内膜組織診や細胞診によって,これらの器質性の原因を除外しなければならない。

 さらに,月経持続日数の異常として,正常月経の前に2~3日,少量の出血をみるものと,正常月経後または1日おいて少量の出血が持続するものがある。前者は,黄体機能不全に伴うことが多く,ホルモンで治療する。後者には,子宮内膜の剝脱(はくだつ)障害,内膜剝脱後の再生障害や子宮内膜症などが原因で起こる。基礎体温図の異常や内膜組織像の異常で診断する。ホルモンで治療できることが多い。

月経時および月経前の随伴症状が異常に強く,日常生活に支障をきたし,就床して鎮痛剤,鎮痙剤などを必要とする病的な状態である。これは月経困難症dysmenorrheaといわれるが,これには二つのものが含まれる。一つは月経開始と同時に発症するもので,これを狭義の月経困難症といい,もう一つは月経前7~10日から出現し,月経開始とともに消失するもので,月経前症候群という。

まれに無月経の婦人で,鼻粘膜など子宮以外の部位に,周期的な出血が毎月1回みられることがあるが,これを代償性月経vicarious menstruationという。
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食の医学館 「月経異常」の解説

げっけいいじょう【月経異常】

《どんな病気か?》


〈月経不順、頭痛、腰痛などの症状がでてきたら要注意〉
 月経異常は、症状によって大きく3つにわけられます。
 1つは、月経周期、期間、出血量の異常です。
 2つめはイライラやむくみ、乳房痛、頭痛、ひどい月経痛や吐(は)き気(け)、便秘(べんぴ)、腰痛(ようつう)などの症状がみられる、月経にともなう障害です。
 これらの症状のうちいくつかは、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)や子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)にもみられ、また卵巣や子宮の器質的疾患や障害により起こりますが、ほとんどがホルモンのアンバランスが原因です。
 そして、3つめは思春期になっても初経がない場合や、定期的にあった月経が突然なくなった場合などです。満16歳を超えても初経がなければ、生殖器官においてなにかしらの障害があると考えられるので、産婦人科の受診が必要です。

《関連する食品》


〈生殖器官の成熟にはレバーなどが効果的〉
○栄養成分としての働きから
 月経とホルモンバランスには密接な関係があります。月経を正常に保つためには、ゴボウなどに含まれるアルギニンを摂取しましょう。アルギニンは性ホルモンの分泌(ぶんぴつ)をうながす作用があります。
 同様に、代謝機能を高めるヨード(ヨウ素)も有効です。
 ワカメはヨードが豊富なうえ、血液をつくるのに必要な鉄やビタミンやミネラルも豊富。日ごろから常食すると、栄養のかたよりの解消にもなるでしょう。
 また、生殖器官の成熟は栄養状態が大きく関係します。それぞれの栄養素をバランスよくとることが第一ですが、とくにたんぱく質やビタミン、ミネラルの不足は生殖器官の成熟を遅れさせてしまいます。
 レバーや肉類はいずれの栄養素も豊富に含んでいるので、生殖器官が成熟する思春期には、きちんととりたい食品です。同様に、牛乳やたまごも良質なたんぱく質を含み、低カロリーで、なおかつ必要な栄養素を含んでいるので、ダイエットを意識する年代には最適です。
○漢方的な働きから
 また、漢方で美容によいといわれているキクラゲは、血液を浄化する作用があり、月経異常をはじめ婦人科系疾患の改善に役立ちます。とくに、月経血が多かったり、月経の期間が長い場合には、キクラゲを炒(い)り煮にして食べると効果的です。
 ヨモギ茶は出血、冷えのいずれにも特効があります。

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百科事典マイペディア 「月経異常」の意味・わかりやすい解説

月経異常【げっけいいじょう】

月経の持続日数,量,周期,開始と閉止の年齢,随伴症状のうち,いずれかが異常な場合をいう。無月経月経過多,月経過少,頻発(ひんぱつ)月経,希少月経,月経困難(随伴症状が強度な場合),早発初潮,晩発初潮,早発閉経,晩発閉経,代償月経,補充月経などがある。
→関連項目子宮発育不全糖尿病

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「月経異常」の意味・わかりやすい解説

月経異常
げっけいいじょう
menstrual disorder

月経周期や出血持続時間の長さ,出血量の多少や不快感が,正常月経の範囲外に逸脱することの総称。無月経,無排卵性月経,過少,過多,頻発,稀発のほか,月経前緊張症,月経困難症のような,月経時の心身の障害も包括する。対策としては,生理的なものか,病的なものかを判断し,専門医の治療を受ける。

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