改訂新版 世界大百科事典 「有効競争」の意味・わかりやすい解説
有効競争 (ゆうこうきょうそう)
workable competition
effective competition
経済学には,競争の概念を純化させた,完全競争という一つの理念型が存在する。そこでは,情報の完全性,財の分割可能性,参入および退出の完全な自由などという条件が,競争が完全であるための条件として必要とされる。しかし現実にこのような条件が満たされることはありえないので,クラークJohn Maurice Clark(1884-1963)は,産業組織の分析と政策基準のためにより現実的概念として,1940年に有効競争という概念を提唱した。それは,完全競争の諸条件のような厳密性は要求されず,市場成果が競争的市場で期待されるものに近い競争が行われれば,それで十分であると考える立場である。すなわち,競争が形式的な完全競争としての諸条件を備えていなくても,競争が効果的に行われて,技術革新へのインセンティブが高く,参入あるいは参入の脅威が十分に大きくて,超過利潤が長期にわたって発生することが不可能であるような競争の状態を有効競争と呼ぶのである。
→競争
執筆者:南部 鶴彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報