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有効需要の原理 ゆうこうじゅようのげんりprinciple of effective demand

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

有効需要の原理
ゆうこうじゅようのげんり
principle of effective demand

J.M.ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』の中心的命題で,国民所得や一国の国民経済の総雇用量は,財・用役に対する実際の貨幣支出の大きさである有効需要によって決定され,有効需要の大きさは総供給と総需要とが均衡するところで決定されるという理論。 N 人の雇用により Z 量の国民所得が生産されているとき,両者の関係 Z=ψ(N)を総供給関数,同様に国民所得 (売上げ) が D 量期待されているとき,企業は N 人の雇用を決意するとする。このときの両者の関係 D=f(N)を総需要関数という。このとき総供給関数と総需要関数とが一致するところで現実の有効需要 が決定され,同時に均衡雇用量 も決定される。このようにして有効需要の大きさが社会の雇用量の大きさを決定することを意味する。

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世界大百科事典 第2版の解説

ゆうこうじゅようのげんり【有効需要の原理 principle of effective demand】

商品は需要があって初めて生産される。生産しても売れなければ滞貨が生じ,結局,生産は売れる規模にまで縮小される。その際の需要は,人々が頭の中で欲しい,買いたいと思うだけでなく,貨幣支出として市場にでてくるものでなければならない。たとえば,人々が自動車に対する強い欲望をもっていても,それを購入する貨幣をもち,実際に需要者として市場にでてくる(購入する)のでなければ,自動車生産は刺激されない。この貨幣支出の裏付けをもつ需要が有効需要であり,有効需要の原理とは,国民経済の生産量にあたる国民純生産NNP(〈国民所得〉の項参照)が生産物に対する総有効需要によって決定されるという理論である。

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大辞林 第三版の解説

ゆうこうじゅようのげんり【有効需要の原理】

有効需要の大きさが、国民所得や雇用量など、一国の経済活動の水準を決定するという原理。1936年にイギリスの経済学者ケインズが提起。 → 総需要管理政策

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

有効需要の原理
ゆうこうじゅようのげんり
principle of effective demand

有効需要とは、商品への単なる欲望ではなく、貨幣的支出に裏づけられた需要をさし、有効需要の原理は、経済活動の水準(国民所得や雇用の水準)を決めるものは、こうした有効需要の大きさによる、という理論である。J・M・ケインズが『雇用・利子および貨幣の一般理論』(1936)において提唱した原理である。
 ケインズ以前の古典派経済学の考え方は、「セーの法則」に要約されている。すなわち、この法則によると、経済活動の水準を決定するのは、需要ではなく、供給である。マーケット・メカニズムに任せておけば、供給はつねにそれに等しいだけの需要をつくりだし、完全雇用もまた自動的に達成されると主張された。
 しかし、このような古典派の考え方は、1929年10月24日のニューヨーク株式市場の大暴落をきっかけとして起きた世界大恐慌を前にして無力であった。不況が深刻化するにつれ、雇用は大幅に減少し、アメリカでは4人のうち一人は失業という最悪の状態となった。もはや、マーケット・メカニズムに任せておけば失業はなくなるという事態ではなく、新しい処方箋(せん)が求められていた。
 これに対してケインズは、生産物市場や労働市場においては、価格や賃金が不均衡を是正するように伸縮的には変化せず、それらは粘着的であると考えた。需要が供給を十分に満たす水準に達しておらず、そのために大量の失業が発生している。需要不足により生ずる失業を解消するには、需要そのものを拡大しなければならない。需要が増えるにつれて、企業の操業度は高まり、企業経営も好転し、雇用もまた高まり、失業は減少する、と主張したのである。ケインズの立場にたてば、民間の需要(民間の消費支出や投資支出)が不足しているのであれば、その不足分を政府が補ってやればよい。政府による総需要管理が重要となる。その政策としては、(1)公共事業の拡大などの政府支出の増加や減税の実施という拡張的財政政策、(2)マネーサプライを増やし金融を緩和させ、利子率を低下させ、企業の資金コストを低減させ投資意欲をかき立てるといった拡張的金融政策が考えられる。
 需要が制約要因である経済では、需要重視の経済政策は有効である。しかし、1970年代の石油ショックを契機に、供給が制約要因となってきており、供給面を重視する経済学(供給の経済学=サプライ・サイド経済学)が登場してきている。[内島敏之]
『J・M・ケインズ著、塩野谷祐一訳『ケインズ全集7 雇用・利子および貨幣の一般理論』(1983・東洋経済新報社) ▽宇沢弘文著『ケインズ「一般理論」を読む』(1984・岩波書店) ▽土志田征一著『レーガノミックス――供給経済学の実験』(中公新書)』

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世界大百科事典内の有効需要の原理の言及

【ケインズ学派】より

…経済全体の集計量(たとえばパンに対する需要といった個々の財に対する需要ではなく,総消費量といったように)を問題にするという意味で,ケインズ経済学は今日マクロ(巨視的)経済学とよばれる。
[有効需要の原理]
 総需要,総消費等マクロ的集計量に注意を集中したケインズの総生産(所得)決定理論は,単純明快なものである。すなわち,一国の総生産(所得)水準は総需要の水準によって決定されるというのである。…

【デフレ・ギャップ】より

…総需要のレベルは,単純化のために貿易を無視するとすれば,消費C,投資Iおよび政府支出Gの和として決まる。ここでは消費だけが国民所得Y(=財の生産額)の増加関数であり,他の2項目は一定と考えると,総生産額(=国民所得)=総需要が成立するように国民所得の水準が決まる,というのがケインズの〈有効需要の原理〉である。しかしこうして決まる国民所得のレベルが,完全雇用産出高に等しいか,あるいはつねにその近傍にあるという保証は存在しない。…

※「有効需要の原理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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