有料テレビ(読み)ゆうりょうてれび(英語表記)pay television

日本大百科全書(ニッポニカ) 「有料テレビ」の意味・わかりやすい解説

有料テレビ
ゆうりょうてれび
pay television
pay TV

視聴に際して課金が行われるテレビ方式。ペイ・テレビ、あるいはサブスクリプション・テレビsubscription televisionともいう。電波で送られるテレビ放送、同軸ケーブルで伝送されるケーブルテレビ(CATV)、インターネット回線経由で視聴者の要求に応じて映像コンテンツ(番組)を配信するビデオ・オン・デマンドVOD)、ホテル客室の映像情報システムなど、いろいろなテレビ分野で採用される。課金方法には、放送番組全部を一括して月単位や年単位で契約する定額方式と、希望するコンテンツだけを選んで有料で視聴するペイ・パー・ビューPPV)方式がある。PPV方式の詳細は、別項目「ペイ・パー・ビュー」を参照されたい。

 テレビ放送における有料チャンネルには、電子的な鍵(かぎ)がかけられて、契約しなければ視聴することができない。契約や購入手続が完了したとき、初めて鍵が外されて視聴ができるようになる。日本の有料テレビの課金は定額方式が主流である。

 日本の有料テレビ放送は、BS放送衛星)およびCS通信衛星)で行われている。BSデジタル放送には、NHK(日本放送協会)や民放などの無料放送のほかに、「WOWOW(ワウワウ)」や「BSスカパー!」などの有料放送がある。「WOWOW」(放送事業者であるWOWOWが運営)には三つのチャンネルがあるが、それぞれは専門チャンネルではなく、一つの契約で3チャンネルが視聴できる方式になっている。「BSスカパー!」(スカパーJSAT(ジェイサット)が運営)は多チャンネル方式で、ジャンル別に映画、ドラマ、音楽、スポーツ、釣りなど多数の専門チャンネルに分けられている。契約は専門チャンネルごとに希望するものを選んで行う。

 CSデジタル放送には、無料チャンネルもあるが数は少なく、ほとんどがスカパーJSATが運営する有料放送である。東経110度CSデジタル放送を利用する「スカパー!」と東経124度および128度CSデジタル放送を利用する「スカパー!プレミアムサービス」がある。いずれも多チャンネルの専門チャンネル方式で、チャンネル数は「BSスカパー!」のそれに比べてはるかに多く、専門チャンネルとしてはこちらが本命である。契約の仕方は「BSスカパー!」の場合と同じである。

 CATVには、「スカパー!プレミアムサービス光」(スカパーJSATが運営)、「J:COM(ジェイコム)デジタル」(ジュピターテレコムが運営)、「ひかりTV」(NTTぷららが運営)などがあり、いずれも有料放送を提供している。

 VODは、電子レンタルビデオともよばれ、インターネット回線経由で、利用者が要求したコンテンツを配信する方式である。利用者は、パソコン、スマートフォン、タブレット型端末などを用意して、見たいときに見たいコンテンツを受信することができる。コンテンツには、公開済みの映画、放送された番組の再送信、自主映像作品などがある。放送番組を見落としたり、もう一度見たい番組があったりする視聴者には、便利なサービスになっている。コンテンツの製作や配信を行う業者として、NHKオンデマンドや、フジテレビオンデマンドなどの民放系、WOWOWメンバーズオンデマンドなどがある。課金方式は、一定金額を払えば選択した分野のコンテンツが見ほうだいの定額制と、コンテンツごとに購入するPPV方式放送がある。一方向性の放送の場合、課金は定額制が一般的であるが、双方向性のインターネット回線経由のVODは、PPV方式の課金にも適している。

 ホテル客室の映像情報システムは、ホテル客室に備えられたテレビ受像機で、無料のテレビ放送のほかに、アダルトものなど独自のコンテンツを有料で提供するものである。有料コンテンツの課金方法には、視聴記録に基づいてチェックアウト時に精算を行うPPV方式もあるが、利用者が自動販売機でプリペイドカードを購入し、テレビのそばに置かれたカードリーダーに挿入して有料コンテンツを視聴するという形式の定額制が多く採用され、1000円のカードで1泊見ほうだいといった簡便な方法が好まれているようである。

[吉川昭吉郎 2016年4月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有料テレビ」の意味・わかりやすい解説

有料テレビ
ゆうりょうテレビ
pay television

アメリカ合衆国の三大ネットワーク(→NBCCBSABC)や日本の民間放送など無料の基幹放送とは別に,劇映画,スポーツ,ショーなど趣味性や付加価値の高い放送番組を有料で配信するテレビサービス。主として難視聴対策を目的にアメリカで拡大したケーブルテレビ網や衛星放送のシステムに乗り入れるかたちで発達した。サービス加入者は毎月,一定額あるいは視聴時間に応じて料金を支払う。タイムの子会社でペイケーブル pay cableと呼ばれる HBOがその最大手として知られる。視聴するためには特定の機械(→デコーダ)が必要である。日本では 1980年代に開局した都市型ケーブルテレビで導入されたほか,放送衛星 BSによる BS放送では 1991年から日本衛星放送(現 WOWOW)テレビが開始。その後,通信衛星 CSによる一般向けの CS放送も参入した。2000年代にインターネット回線で動画を配信できるようになると,ケーブルテレビや BS放送,CS放送と競合する新たなプラットフォームになった。

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