有田皿山(読み)ありたさらやま

日本歴史地名大系 「有田皿山」の解説

有田皿山
ありたさらやま

[現在地名]有田町字泉山いずみやま中樽なかたる上幸平かみこうひら大樽おおたる本幸平ほんこうびら赤絵町あかえまち白川しらかわ稗古場ひえこばなかはる岩谷川内いわやごうち

黒髪くろかみ(五一八メートル)より流下する白川は、渓谷を経て中樽川と合流して町内を蛇行し、一方大谷おおたに池からの流れは猿川さるかわ渓谷を経てこれと合流、有田川となる。流域は比高約一〇〇メートルの山々に囲まれ、この谷底に人家・工場が密集して陶磁器生産の地、有田皿山が発展した。町域は大部分が磁器原料となる流紋岩からなり、白い露岩や奇岩がそびえている。これに基づく金鉱の採掘跡が金山きんざん(三五二メートル)や、南の山を越した古木場ふるこば(現有田町大字中部ちゆうぶ波佐見はさみ(現長崎県東彼杵ひがしそのぎ郡)にある。

〔皿山の形成〕

佐賀藩主鍋島直茂は豊臣秀吉の朝鮮侵攻に参加した際、朝鮮から多数の人を連行し、その中の一人、李参平(初代金ヶ江三兵衛)が一七世紀初め泉山の白磁鉱を発見、上白川天狗谷てんぐだにに築窯したのが近世陶磁器を代表する有田焼の創始とされる。「金ヶ江旧記」の文化四年(一八〇七)の記事はこの地の様子を「其砌皿山儀ハ深山ニテ田中村ト申候テ僅カニ田畠ニテ百姓相立居其末右唐人御含ニヨリ段々見迫リ候処今ノ泉山ニ陶石ヲ見当リ第一水木宜敷初ハ白川天狗谷ヱ釜ヲ立テ」と記す。また「西松浦郡誌」には「泉山発見の当初迄は今の岩谷川内付近以西は田中村と称して僅に開け其以東は深山幽谷にして大神宮山の西麓に平戸より、杵島方面に通ずる一小径ありしのみなりしが、一たび泉山の無尽蔵発見以来同地より一直線に南川原に至る道路開通され此地もと唐船城主有田氏の所領なれば有田皿山と命名したり」とある。

皿山の地はもと田中村といったというが、慶長絵図はこの地を外尾ほかお村とする。正保絵図では岩屋河内村南河なんが(川)わら村が加わり、元禄絵図になるとさらに上幸平山村・泉山村が加わり、有田谷の下流からしだいに谷頭に向かって村落が形成されていった。ただし有田皿山という記載はない。天保郷帳には外尾村・岩屋河内村・南河原村のみが記されている。

一方貞享・明和・天保・安政の各郷村帳には有田皿山として次の地名を書き出している。山とあるのは皿山、すなわち窯場の所在地で、傾斜地に登窯を築いたことによるものであろう。また本町通りを町、裏通りを村といった。なお外尾山より以下に記す地名は、幕末には有田皿山からしん村に編入された地域である(広瀬ひろせ山は現西有田町)。

貞享四年(一六八七)改 「上泉山村・上幸平町・上幸平山中樽町・大樽山中嶋村・大樽町御高札札馬十五疋・下幸平山・白川山三間屋村・稗古場村・赤絵村・中野原町・岩屋河内山・外尾山・上南川原山・下南川原山・大法山・黒牟田山・広瀬山」

明和九年(一七七二)五月改補 「泉山より東有田皿山」として「上泉山異名泉山と云有田ノ皿山也小屋分 年木谷 地蔵町・上幸平町・上幸平山中樽山以前ハ福山と云今不唱・大樽山中樽・大樽町御高札札馬・本幸平山幸平横町 又下幸平ト云・白川以前上白川ト云名有シ候得トモ今不唱 三間屋 赤絵町・稗古場山・中野原町・岩屋川内山・原野宿異名外尾・外尾山・上南川原山・下南川原山・応法山・黒牟田山・広瀬山」

天保一〇年(一八三九)春 「上泉山是より末有田皿山之分・上幸平町・下幸平山中樽山・中樽村・大樽町・上幸平山・白川山・三間屋村・稗古場山・赤絵町・中野原町・岩屋河内山・外尾山・上南川原山・大法山・黒牟田山・広瀬山」

安政二年(一八五五)二月 「内辺山」として「泉山分年木谷 小屋敷坂口 地蔵町・上幸平町・本幸平山・大樽山中嶋・大樽町・上幸平山小樽 中樽 山ノ上・白川山・稗古場山・赤絵町・中野原町・岩屋川内山」、「外辺山」として「外尾山・上南川原山・応法山・黒牟田山・広瀬山・下南川原山」、ほかに「上南川原村 御山方」

〔佐賀藩と皿山〕

有田焼は伊万里津を通して全国、さらには海外とも取引されたが、藩では有田皿山を重視し、代官を置いて支配した。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の有田皿山の言及

【有田焼】より

…日本向けの古染付,祥瑞(しよんずい)などの明代末の中国磁器は,主として茶の湯の世界で用いられたが,有田諸窯では,それを写した日用雑器の焼造につとめていた。明代末の赤絵を学んで,有田皿山で色絵磁器が行われるようになるのは1640年代の初めころである。しかし色絵磁器の初期の製品は,国内市場よりも海外において高い声価を得ていた。…

※「有田皿山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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