改訂新版 世界大百科事典 「朝鮮神宮」の意味・わかりやすい解説
朝鮮神宮 (ちょうせんじんぐう)
日本の統治下,朝鮮全土の総鎮守として京城府(ソウル)南山に建てられた神社。祭神は天照大神と明治天皇。朝鮮各地に建てられた60余社中唯一の官幣大社。国家神道のもとで植民地,占領地には数多くの神社が創建されたが,その主要なものの一つである。1919年に創建を決定,翌年境内地を定め,150万円をかけて25年に竣工,10月15日に勅使を迎えて鎮座の儀,17日に第1回の例祭が行われた。以後勅祭社となり例祭には勅使が立ち,宮司は勅任官の待遇を受けた。日本の敗戦後まもなく社殿は撤去され,かつて京城帝国大学教授安倍能成がアテネのアクロポリスになぞらえて賛美した南山の境内地は,ソウルの街を眺望できる南山公園となっている。
執筆者:大隅 和雄
神社参拝拒否
神道により朝鮮人の皇民化を図るため,朝鮮総督府は神社参拝を奨励したが,朝鮮人はこれを拒否することによって抵抗した。1930年代半ばから総督府は1面(村)1神社の計画を推進し,さらに各家庭にも神棚を作らせ,〈天照大神〉のお札を買わせ,毎朝礼拝するように奨励した。特に日米関係が悪化していく中で,約50万のキリスト教徒に対する弾圧と懐柔策が強化され,教徒は集団で神社参拝を強要されるようになり,一部教徒の中には〈内鮮キリスト教一体化運動〉を推進する者も出てきた。そしてついに38年9月には,長老派教会は警察官立会いの下で神社参拝を決議した。これに反対した約2000名の牧師,教徒は検挙投獄され,200余の教会は閉鎖され,50余名が獄死して抵抗した事件が有名である。
→皇民化政策
執筆者:宮田 節子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報