日本の植民地統治の下で朝鮮人を戦時動員体制に組み込むためにとられた一連の政策。日本の朝鮮支配の基本方針は同化政策と呼ばれ,朝鮮人の民族性を抹殺し,〈亜日本人〉化することにあった。満州事変から日中戦争へと侵略戦争の拡大とともに,この政策はより強化徹底され,特に日中戦争以後はその極限化として,朝鮮人を完全なる〈皇国臣民〉たらしめんとする〈内鮮一体〉が提唱されるに至った。そのために展開されたのが皇民化政策である。1937年の日中戦争勃発とともに,神道による皇民化をはかるため神社参拝が強要され,1面(村)1神社計画が推進された。10月には〈私共ハ大日本帝国ノ臣民デアリマス〉という3ヵ条からなる〈皇国臣民ノ誓詞〉が制定され,学校では毎朝これを斉唱させ,職場や家庭でも強要された。さらに38年2月には徴兵制への地ならしとして,志願兵制度が公布された。またこの段階では直接兵力の補充というよりも,皇民化の推進力としてのねらいが大きかった。また志願兵制度と表裏一体のものとして,〈兵員資源〉の裾野を広げるために,3月には第3次朝鮮教育令を公布し,〈内鮮共学〉を強調,日本と同じ教科書を使い,朝鮮語は正課からなくなり日本語の常用が強要された。生徒は相互に監視させられ,朝鮮語を使った友人を摘発するのが日課となった。翌39年11月には,天皇家を宗家とする家父長体制に朝鮮人を組み込むために,〈創氏改名〉に関する法律を公布,40年2月から実施された。朝鮮人はついに自分の名さえ日本式に改めねばならなかった。それは一応任意ではあったが,実際には強制で約80%が日本名に改めた。
このような政策の推進体として,38年7月国民精神総動員朝鮮連盟が発足し,総督府の行政機構と一体となった各地方連盟が組織された。またこれとは別に官公署,学校,銀行,会社等の各種連盟も作られ,一人の人が二重に組織された。その基底組織として約10戸を標準とする愛国班が作られ,39年には約35万の班と460万の班員が組織された。班員は世帯主なのでほぼ全人口が網羅されたことになる。これが民衆レベルでの具体的な政策の推進体となり,宮城遥拝,国旗掲揚,勤労貯蓄等の30項目が指示され,日常生活の細部までの皇民化が図られ,防共防諜のために相互に監視させられた。特に物資の配給が愛国班を通して行われたため,民衆は連盟に従わざるを得ず,生活は連盟の手に握られるようになっていった。同化政策を基本とする日本の朝鮮植民地支配の極限を示すものである。
執筆者:宮田 節子
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朝鮮を戦時動員体制に組み入れるためにとられた一連の同化政策。特に日中戦争以後,朝鮮人を皇国臣民とするための「内鮮一体」化運動が展開された。1937年に神社参拝が強要され,38年に徴兵制度が公布された。また,「内鮮共学」が強調され,朝鮮語が正課から消えた。40年には皇紀2600年を期して,創氏改名(そうしかいめい)が推進された。
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朝鮮人を日本の戦時動員体制にくみこむための植民地政策。日本の朝鮮支配は当初より同化政策を基調としたが,日中戦争の拡大とともに強化され,第7代朝鮮総督南次郎は朝鮮人を完全に「皇国臣民」化させるため,「内鮮一体」を提唱した。神社参拝の強要や「皇国臣民ノ誓詞」の制定,日本語の強制,創氏改名などの政策が打ち出され,その推進体として1938年(昭和13)7月国民精神総動員朝鮮連盟が発足した。
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…その結果,強制収容を体験した日系人生存者約6万名に対し1人2万ドル,同時に日本軍の攻撃を避けるためとの名目でアラスカへ強制移住させられたアリューシャン(アレウト)列島の住民約450名に対し1人1万2000ドルの補償金がそれぞれ支払われた。
[植民地と占領地の状況]
日本の植民地であった朝鮮と台湾では,皇民化政策の徹底と経済開発を通じて兵站基地化が推し進められた。朝鮮では1940年10月,それまであった国民精神総動員朝鮮連盟が国民総力朝鮮連盟と改称し,官製国民運動の一元化が達成された。…
…とくに1919年の三・一独立運動後に“同化”を目標に展開されたが,内鮮融和は満州事変を契機に宇垣一成総督下(1931年9月‐36年8月)に提唱された。その後,日中戦争の拡大下で,朝鮮人を動員するため南次郎朝鮮総督は内鮮一体をスローガンとして掲げ,皇民化政策が強化され,その典型が40年の創氏改名であった。 こうした朝鮮における施策を背景に,日本国内でも在日朝鮮人の急激な増加に対応し,各種の内鮮融和運動が展開された。…
※「皇民化政策」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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