推理作家、生理学者。本名林髞(たかし)。山梨県甲府生まれ。慶応義塾大学医学部を卒業。医学博士となり、1929年(昭和4)当時のソ連に留学して条件反射学を専攻。海野十三(うんのじゅうざ)の勧めで1934年、精神分析を主題にした『網膜脈視症』でデビュー(ペンネームは本名の字画を分解したもの)。その後、探偵小説芸術論を提唱、その趣旨を生かした作品として長編『人生の阿呆(あほう)』(1936)を発表して、推理小説としては初めて直木賞を受賞。清新な文体と知的作風が高く評価されたもので、当時成長期にあった創作推理文壇を大いに鼓舞した。作品としてはほかに女性心理を追求した『文学少女』、長編『わが女学生時代の犯罪』、第1回の探偵作家クラブ賞を受けた『新月(しんげつ)』(1946)などがある。生理学者としては1946年に母校の教授となり、欧米各地の生理学会で講演し、世界的に知られた。主著に『条件反射学方法論』(1940)、『大脳生理学』(1944)がある。
[厚木 淳]
『『木々高太郎全集』全6巻(1970~1971・朝日新聞社)』
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… 日本で〈推理小説〉という語が,もっと広い意味で,以前の〈探偵小説〉の同義語として一般化したのは,第2次世界大戦後のことである。ひとつには,漢字制限により〈偵〉の字が一般に使われにくくなったからでもあるが,もっと大きな理由として,木々(きぎ)高太郎(1897‐1969。林髞)の提唱があった。…
※「木々高太郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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