中国の書物(漢籍)において,刊行時期,刊行地,刊行者の名などの全部もしくは一部を表示した部分をいう。刊記,牌記(はいき)ともいう。木記等の〈記〉は印記・図記の〈記〉,つまり印判・印形の意味で,上述の表示が篆書(てんしよ)その他特別の字体を用いたり,まわりを枠で囲んだりして,印判を思わせることが多いためにこの名がある。この表示の習慣がいつ始まったかは明らかでないが,宋の南渡(1127)以後は盛んに行われた。表示の場所は最終巻巻末,序文や目次のあと,第1巻巻末などが多いが,いつも1ヵ所だけであるとは限らない。清朝に入って,書物に封面という表題扉のページを入れることが一般的になると,この封面の裏に表示されることが多くなり,ときには封面の表に,表題と並べて木記と同様の内容が表示されることもあったが,これはふつう木記と呼ばれない。日本では,翻刻の漢籍にとどまらず,和書にも表示されるようになった。現在日本の書物が奥付という木記と似た表示を行うのは,第2次大戦中まで,法令がそれを規定していたものが,慣習として定着したためでもあるが,その形式そのものが木記から発展したものであることも,また疑う余地がない。なお日本書誌学会では,上述の意味の一般用語としては刊記という術語を用い,時,場所,刊行者の名などのほかに,刊行の縁起などの記載が加わって長くなったものを刊語,刊記や刊語のうちとくにまわりに囲いのあるものを木記と呼ぶというように,ことばの使い分けをすることを提唱している。この場合,牌記は刊記や刊語のではなく,木記だけの別名である。
執筆者:尾崎 雄二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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