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未来学 みらいがくfuturology

翻訳|futurology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

未来学
みらいがく
futurology

過去または現在のデータに基づいて未来社会のあり方を予測し,そのモデルを提示しようとする学問。各学問分野の学際的な協力により行われる。未来の予測には大別して2つの傾向があり,その1つは 19世紀のイギリスの経済学者 T.R.マルサスの理論に基づき,人口増加と食糧増産の不調和による人類の飢餓,物質的資源の枯渇,公害貧富の差による階級闘争の激化などをあげる悲観論である。他の1つは今後 100年間における物質文明の極度の発達による重工業化または超工業化の世界で,環境調整や資源管理の発達による経済問題の解消,貧富の差の激減などを説く楽観論である。未来学は,未来に関する洞察だけではなく,現在進行しつつある諸問題 (環境問題,資源エネルギー問題,都市問題,教育問題など) にも新しい視野を与え,長期の研究や計画を可能にする唯一のよりどころとなる重要な学問領域である。

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デジタル大辞泉の解説

みらい‐がく【未来学】

未来をさまざまな角度から研究・推論しようとする学問の総称

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大辞林 第三版の解説

みらいがく【未来学】

急速な科学技術の発達による人間環境・社会構造の変貌に伴い、未来をさまざまな角度から研究・推論・予測・計画しようとする学問の総称。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

未来学
みらいがく
futurology

未来をさまざまな角度から研究・推論する学問の総称。1960年代後半に誕生し、70年代に急速に発展した学問である。時あたかも先進工業諸国では、高度経済成長と技術革新のさなかにあり、狭義には国家的目標の合意形成、より広い意味では人類社会の目標達成のための新しい学問的手法として多くの人々の支持を得た。その背景には、工業化の進展に伴って古典的な経済学や社会学では説明しきれない社会様相の激変の問題がある。その点にいち早く注目したD・ベルの「脱工業化社会」論(『脱工業社会の到来』1973など)は日本やアメリカで情報化社会論の発展をもたらすきっかけともなった。[安田寿明]

研究手法

こうした変化の傾向を、旧来の経済原則に基づく外挿法(関数モデルの操作で演繹(えんえき)的に未来値を求める方法)的予測ではなく、より幅広い学際的視点からの未来洞察を試みようというものが未来学誕生の初めでもあった。そうした具体的方法のなかで著名なものに、アメリカのランド研究所が開発したデルファイ法(専門家の予測結果を収斂(しゅうれん)アンケート法で集約させて、予測の精度を向上させる手法)がある。未来学が対象とする未来予測には、大別して現未来(10年後)、近未来(100年後)、中未来(1000年後)があり、デルファイ法は現未来の予測手法として定評がある。また近未来以降の予測には、位相数学の最新理論を応用したカタストロフィーの理論がある。
 未来学の誕生当初は、当然のことながら未来は明るいとする楽観主義に基づくものであり、代表的なものにA・トフラーの『未来の衝撃』(1970)や『第三の波』(1980)などがある。その傾向は今日に至るも支配的であるが、これに対し否定的な見解を示す悲観主義学派もまもなく生まれた。イタリアのオリベッティ社のペッチェイAurelio Peccei(1908―84)によって設立されたローマ・クラブが1972年に発表した『成長の限界』は、多消費型経済社会のあり方に重大な警告を発した書としてあまりにも有名である。またマクロ経済・ミクロ経済での成長性予測の限界を説いたJ・K・ガルブレイスの『不確実性の時代』(1977)なども、悲観主義の立場からの警世の書であろう。[安田寿明]

研究領域

未来学の守備範囲は、楽観・悲観主義の双方の立場からダイナミックな議論を展開しつつ深い洞察を得ようという学問的手法のために、広く経済社会全般のみならず、社会変動、都市設計、社会計画、そして文化変革からライフスタイルにまで及んでいる。D・ガボールの『成熟社会』(1972)やJ・ネイスビッツJohn Naisbitt(1929― )の『メガトレンド』(1982)は、そうした文化社会的側面をえぐり出すものでもあった。またK・E・ボールディングの「宇宙船地球号」論を代表とする一般システム論者の活躍も目覚ましい。学際的分野としての未来学に、統一科学論としての一般システム論を導入し、より学問的な手法を確立しようという試みでもある。
 1980年代に入ってから、未来学は先端技術、先端工学の急速な発展の影響から、ふたたび原点に立ち戻り、社会の適応的発展を目ざすフィードバック機能を発揮する学問としての再構築の動きが顕著となった。また90年代後半以降は、20世紀から21世紀への転換という時代的背景を反映し、100年単位の近未来予測に関心が集まってミレニアム学(100年未来学)が提唱されたりもした。[安田寿明]
『香山健一著『未来学入門』(1967・潮出版社) ▽D・H・メドウズ他著、大来佐武郎監訳『成長の限界』(1972・ダイヤモンド社) ▽D・ガボール著、林雄二郎訳『成熟社会 新しい文明の選択』(1973・講談社) ▽D・ベル著、内田忠夫他訳『脱工業社会の到来』上下(1975・ダイヤモンド社) ▽J・ネイスビッツ著、竹村健一訳『メガトレンド』(1983・三笠書房) ▽公文俊平著『情報文明論』(1994・NTT出版) ▽国際高等研究所編・刊『高度情報化社会の未来学』(2000) ▽J・K・ガルブレイス著、斎藤精一郎訳『不確実性の時代』上下(講談社文庫) ▽A・トフラー著、徳山二郎訳『未来の衝撃』(中公文庫) ▽A・トフラー著、徳山二郎訳『パワーシフト――21世紀へと変容する知識と富と暴力』上下(中公文庫)』

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