東京オリンピック(2020)(読み)とうきょうおりんぴっく

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

東京オリンピック(2020)
とうきょうおりんぴっく

第32回オリンピック競技大会。2021年(令和3)7月23日~8月8日の17日間開かれた。205の国・地域と難民選手団から選手約1万1000人が参加し、史上最多の33競技339種目を実施した。東京での五輪開催は1964年(昭和39)以来57年ぶり。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の世界的流行で、近代オリンピック史上、初めて開催が1年延期され、開・閉会式や競技の大半が無観客で行われる異例の大会となった。

 2005年(平成17)、東京都知事の石原慎太郎(当時)が招致構想を表明。2013年(平成25)、ブエノス・アイレスアルゼンチン)で開かれた国際オリンピック委員会(IOC総会で、2020年の東京開催を決定した(他の立候補都市はトルコイスタンブールとスペインのマドリード)。主要テーマは「多様性と調和」「復興五輪」。公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が準備・運営にあたり、新たに国立競技場、東京アクアティクスセンター競泳など)、有明(ありあけ)アリーナバレーボールなど)、海の森水上競技場(ボートなど)などを恒久設備として整備した。新競技としてスケートボード空手サーフィンスポーツクライミングの4競技を採用し、3大会ぶりに野球・ソフトボールも実施した。競技は東京を中心に9都道県42会場で開かれ、猛暑を避けて、マラソン競歩は札幌で開催した。聖火リレーは3月の福島県から全都道府県を回ったが、新型コロナウイルス感染症の拡大で、公道での走行中止が相次いだ。なお、最終ランナーは、テニス選手の大坂なおみ(1997― )が務めた。

 本大会における参加選手の女性割合は、48.8%と過去最高。また、性別適合手術で女性となった選手やLGBTであることを公表した選手も活躍した。日本選手は過去最多の583人。国別メダル獲得数は、アメリカが計113個(金39、銀41、銅33)で首位。日本は計58個(金27、銀14、銅17)と過去最多となり、過去にメダル獲得数の多い柔道、レスリング、体操だけでなく、卓球、ボクシング、フェンシング、アーチェリー、バスケットボールなど多様な競技でメダルを獲得し、スケートボードの西矢椛(にしやもみじ)(2007― )が日本最年少の金メダリスト(13歳)に、開心那(ひらきここな)(2008― )が最年少メダリスト(銀。12歳)となった。閉会式では2024年パリ大会への引き継ぎ式も行われ、8月24日から9月5日までパラリンピック競技大会が開かれた。

 新型コロナウイルス感染防止のため、選手・大会関係者は延べ62万回の検査を受け、436人の感染を確認。選手・関係者の行動は宿泊先、競技会場、練習場に制限され、無断外出など行動制限違反にはペナルティーを科した。野村総合研究所は、無観客のために経済効果が約1300億円減少して1兆6771億円になったと試算。大会予算(1兆6440億円、2020年末時点)は1年延期、感染対策、無観客によるチケット収入喪失などで膨らみ、公費負担増は避けられない見通しとなった。大会理念に反した言動のあった大会組織委員会会長の森喜朗(もりよしろう)、開会式演出家、楽曲担当者らが相次いで辞任し、類似デザインのあった五輪エンブレムの変更を迫られるなど、不祥事の相次ぐ大会でもあった。

[矢野 武 2022年1月21日]

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