林忠四郎(読み)ハヤシチュウシロウ

デジタル大辞泉 「林忠四郎」の意味・読み・例文・類語

はやし‐ちゅうしろう〔‐チユウシラウ〕【林忠四郎】

[1920~2010]宇宙物理学者。京都の生まれ。東京帝大卒業後、京大研究従事ビッグバン後の元素起源太陽系の起源、星の進化の研究などで功績がある。昭和61年(1986)文化勲章受章。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「林忠四郎」の意味・わかりやすい解説

林忠四郎
はやしちゅうしろう
(1920―2010)

宇宙物理学者。京都市生まれ。1940年(昭和15)第三高等学校卒業、1942年東京帝国大学理学部物理学科卒業。1946年(昭和21)より京都帝国大学理学部で研究に従事、1949年浪速(なにわ)大学(大阪府立大学)工学部助教授、1954年京都大学理学部助教授、1957年同教授となり、核エネルギー学講座を担当、1984年定年退官。日本を代表する宇宙物理学者であり業績は広い分野に及ぶが、とくに宇宙初期における元素の合成、星の進化、太陽系の起源の研究などが有名。林の太陽系起源論は「京都モデル」とよばれている。また、星の誕生期に高光度の時期があることを発見し、その理論は「ハヤシ・フェーズ」と名づけられている。研究面だけでなく教育面においても、日本の宇宙物理学における指導的研究者を数多く育成し「林スクール」とよばれている。仁科(にしな)賞、朝日賞、エディントンメダル、学士院恩賜賞などを受けた。1982年文化功労者となり、1986年文化勲章、1995年(平成7)京都賞を受けた。

[松田卓也]

『林忠四郎編、佐藤文隆他著『星の進化――その誕生と死』(1978・共立出版)』『林忠四郎・早川幸男編『岩波講座 現代物理学の基礎11 宇宙物理学』第2版(1978・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「林忠四郎」の意味・わかりやすい解説

林忠四郎
はやしちゅうしろう

[生]1920.7.25. 京都
[没]2010.2.28. 京都,京都
宇宙物理学者。1943年東京帝国大学理学部物理学科卒業。1946年京都大学理学部副手となり,湯川秀樹門下に入る。1949年浪速大学(1955年大阪府立大学に改称)助教授,1954年京大助教授,1957年教授となる。天体現象への原子物理学応用という新たな分野を開拓し,第2の湯川と評された。1950年に発表した「α‐β‐γ‐ハヤシの理論」など,星の誕生と進化についての研究で多くの成果を上げた。特に,誕生間もない原始星は星全体で対流平衡にあり,表面温度をあまり変えないままゆっくり収縮して光度が減少することを解明した理論は世界的に評価され,1961年に国際天文学連合で「林フェイズ」と名づけられた。イギリス王立天文学会,日本学士院,アメリカ科学アカデミー会員。1963年仁科記念賞,1970年イギリス王立天文学会エディントン・メダル,1971年恩賜賞・日本学士院賞,1984年文化功労者,1986年文化勲章,1994年勲一等瑞宝章,1995年京都賞,2004年太平洋天文学会ブルースメダル。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「林忠四郎」の解説

林忠四郎 はやし-ちゅうしろう

1920-2010 昭和後期-平成時代の天体物理学者。
大正9年7月25日生まれ。昭和32年京大教授となる。原子核物理学を天体現象に応用し,星の進化や太陽系の起源を研究。恒星初期の進化の研究で,45年日本人最初のエディントン-メダル。46年学士院恩賜賞。61年文化勲章。平成7年日本天文学会に「林忠四郎賞」が創設された。16年太平洋天文学会のブルース賞を受賞。平成22年2月28日死去。89歳。京都出身。東京帝大卒。

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世界大百科事典(旧版)内の林忠四郎の言及

【原始星】より

…ついに星の中心部で原子核反応が始まると,星は現在の太陽のような状態(主系列星)に落ち着く。このような原始星の収縮過程は,1962年に林忠四郎によって提唱され,ハヤシ・フェーズHayashi phaseと呼ばれている。生まれたばかりの星として観測されている星には,次のようなものがある。…

【恒星】より

… 生まれたばかりの星は,半径の大きな赤色巨星である。林忠四郎は,それらは全体が対流層からなり,低温の有効温度を保って重力収縮する星となることを明らかにした。重力収縮は重力ポテンシャルエネルギーをエネルギー源とする進化であるが,明るい巨星の光度を保てる期間はたかだか1000万年程度である。…

※「林忠四郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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