現代物理学(読み)げんだいぶつりがく(その他表記)modern physics

日本大百科全書(ニッポニカ) 「現代物理学」の意味・わかりやすい解説

現代物理学
げんだいぶつりがく
modern physics

古典物理学に対することばで、20世紀初頭から発展した量子論量子力学)を基礎にする物理学。物理学は17世紀のニュートン力学以来、熱力学統計力学電磁気学と発展し、ほぼ完成に近い域に達したものと思われていた(これらを古典物理学とよぶ)。しかし20世紀の初頭に原子や電子の運動などの極微の世界の探求が始まると、いままでの古典物理学では説明のつかない現象が多くみつかった。それらの現象を説明するために量子論(量子力学)が生み出された。量子力学は決定論的な古典物理学と異なり確率論的な理論であるが、極微の世界をきわめて正確に記述できることから現在では物理学の基本原理の一つと考えられている。そのため20世紀前半より、すべての物理学の分野は量子論的に見直され、現代物理学という形で発展している。

 現代物理学は、原子核陽子中性子)や素粒子クォークレプトンなど)を扱う素粒子論物質のさまざまなふるまいを研究する物性論(物性物理、磁性体、低温物理、半導体物理、非線形物理・非可逆物理など)、宇宙の開闢(かいびゃく)から星・銀河の進化を扱う宇宙物理学など多くの分野に広がっている。量子論自体も量子コンピュータ量子暗号量子テレポーテーションなどに応用が広がりつつある。もちろんニュートン力学の発展拡張である特殊および一般相対性理論も量子論ではないが現代物理学を支える大きな柱になっている。また量子論ではないがカオス理論のような進展もある。

[山本将史 2022年2月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「現代物理学」の意味・わかりやすい解説

現代物理学
げんだいぶつりがく
modern physics

量子論に基づいて微視的な物理現象を研究する物理学の分野。巨視的現象を対象とし,19世紀にほぼ完成した古典物理学の対語。 20世紀になって,物質の構成要素が分子,原子,原子核,素粒子と順に明らかになり,これらが関与する現象に対し量子論が有効であることがわかってきた。構成粒子を究極まで追究する原子核物理学素粒子物理学,これらの構成粒子の集団として物質の性質を統計的に研究する物性物理学,天体や宇宙の構造と進化を研究する天体物理学,生物の生命現象,遺伝現象,生理機能の要素過程を研究する生物物理学などがある。

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