現在の祭神は大日貴命を中心に天之忍穂耳命・天之穂日命・天津彦根命・活津彦根命・熊野樟日命・多紀理毘売命・狭依毘売命・多岐都比売命とされる。「大日本国一宮記」には「和多都美神社号枚聞神社、塩土老翁、猿田彦神」とある。大正一四年(一九二五)の枚聞神社祭神調書によれば、文治年間(一一八五―九〇)より
「三国名勝図会」は種々の伝承を掲げているが、「開聞縁起云」として次のような説話を紹介している。すなわち大宮姫は玉頼姫ともいい、天照大神の化身であった。その昔開聞山の麓の窟にいた神仙塩土老翁が法水をくみ、三七日修行していると大きな鹿が来て法水をなめた。するとたちまち懐妊し、口から美しい女を出産した。時に白雉元年(六五〇)二月一八日辰時であった。仙人は娘を育てて僧智通に与え、幼名を瑞照姫と称した。これが京都に聞こえ二歳の時勅命により上京し、大臣藤原鎌足が大切に養育した。
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鹿児島県指宿(いぶすき)市開聞(かいもん)町に鎮座。枚聞神(開聞神)を祀(まつ)る。九州本島の最南端に鎮座する古社で、薩摩(さつま)富士と称される開聞岳の麓(ふもと)にある。延喜(えんぎ)の制で小社に列せられ、1200年(正治2)島津忠久(ただひさ)の社殿再建以来、歴代藩主の修理・再建など十余度の多きにわたり、現在の社殿は1787年(天明7)島津重豪(しげひで)の再興にかかるものである。古来より琉球(りゅうきゅう)からも厚い崇敬が寄せられ、「神徳讃仰(さんぎょう)」の数枚の額面が琉球王の名によって献納されている。1871年(明治4)5月、国幣小社に列せられた。神宝に室町時代の松梅蒔絵櫛笥(まきえくしげ)がある。例祭は10月15日。
[落合偉洲]
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…【横山 勝三】
[信仰]
古くは枚聞(ひらきき)岳と称し,薩摩半島の南端に位置するため古来より海上を航行する船舶の目標とされてきた。その北麓にまつられる開聞神社(枚聞神社)は860年(貞観2)に従四位下に叙され,874年,885年(仁和1)の開聞岳の大爆発も記されている。開聞神社の祭神に関しては諸説あるが,《三国名勝図会》に和多津美神あるいは豊玉彦命,塩土老翁(しおつちのおじ),豊玉姫をまつり,本宮中尊女体は豊玉彦妻神をまつると伝えているように,開聞岳は海の神をまつる山として信仰されてきた。…
…これが里宮の成立である。大和三輪山の大神(おおみわ)神社,薩摩開聞岳の枚聞(ひらきき)神社などが,いずれも拝殿のみで本殿の構えをもたないのは,山頂を遥拝する里宮であったことを示している。したがって社祠の成立からみると里宮がはやく,山宮はその後であった。…
※「枚聞神社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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