薩摩半島の最南端、現開聞町の南西部を占める円錐形の成層火山。薩摩富士とよばれ、標高九二二・二メートル。北麓に鎮座する開聞宮(現枚聞神社)の神体で、古代には開聞神として同社と一体化して把握されていた。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
別名薩摩富士。鹿児島県薩摩半島南端にある火山。標高924m,基底直径約5kmの比較的小型の火山である。左右対称の側線をもつ美しい円錐状火山で,一見単式火山のように見えるが,玄武岩質の成層火山とその上にのる安山岩質の溶岩円頂丘とで構成される複式火山である。標高約600m以下の山体が成層火山で,その山頂火口をほぼ埋めて溶岩円頂丘がのっている。噴火活動は約4000年前に始まり,有史時代では9世紀に噴火の記録がある。山体斜面上には顕著な浸食谷は発達しておらず,全体として斜面は平滑で,密な植生で覆われている。火山噴出物(火山灰,スコリア)は開聞岳本体はもとより,薩摩半島南部や大隅半島南部の地表を広く覆って堆積している。開聞岳は,北方の池田湖とその周辺および指宿(いぶすき)付近から薩摩半島最南端の長崎鼻付近に至る海岸線などとともに霧島屋久国立公園に属している。
執筆者:横山 勝三
古くは枚聞(ひらきき)岳と称し,薩摩半島の南端に位置するため古来より海上を航行する船舶の目標とされてきた。その北麓にまつられる開聞神社(枚聞神社)は860年(貞観2)に従四位下に叙され,874年,885年(仁和1)の開聞岳の大爆発も記されている。開聞神社の祭神に関しては諸説あるが,《三国名勝図会》に和多津美神あるいは豊玉彦命,塩土老翁(しおつちのおじ),豊玉姫をまつり,本宮中尊女体は豊玉彦妻神をまつると伝えているように,開聞岳は海の神をまつる山として信仰されてきた。南島琉球から帰る者が船中で開聞岳を見た時は必ず酒を飲み開聞神をまつったと同書にあるほか,漁師が初めて漁に出た時に開聞岳の沖合にくるとサンコンメシといって,しゃもじとしゃくしを持って船の中をまわる儀礼を行った地域もある。また開聞神社の社殿をまわって豊漁を祈る所もあった。
執筆者:宮本 袈裟雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鹿児島県、薩摩(さつま)半島最南端の指宿市(いぶすきし)開聞にある円錐(えんすい)形の成層火山。標高924メートル。俗称薩摩富士。周辺は起伏の小さい火山灰の台地(シラス台地)で、近くに九州一の大きさを誇る池田湖や、大規模な火口湖の鰻池(うなぎいけ)、さらに全国にその名をよく知られた指宿温泉がある。
噴火は紀元前520~前477年ごろと、874年(貞観16)、885年(仁和1)の3回が大きなものとして知られている。周辺台地の上を覆うスコリア質の火山砂礫(されき)層はコラ(層)とよばれ、初期の成層火山形成期の噴出物といわれる。山体を形成する岩石は第四紀の輝石(きせき)安山岩と玄武岩が主である。大小数次にわたる噴火もしだいに収まり、1915年(大正4)には噴煙も停止した。噴火当時のコラ層は固結し、現在でも農業上の障害となっている。その除去と台地上の畑地灌漑(かんがい)事業が続行されている。また、山麓(さんろく)には亜熱帯植物が植えられ、池田湖や指宿温泉とともに、霧島錦江湾(きりしまきんこうわん)国立公園の一端を担っている。JR指宿枕崎(まくらざき)線開聞駅から開聞山麓までバス10分、下車後徒歩2時間。
[塚田公彦]
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出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…薩摩半島南東部に位置し,東シナ海に南面する。南端には基底面積が町域のおよそ2/5を占める開聞岳があり,北は九州最大の湖である池田湖に接している。年平均気温18℃,年降水量2000~2500mmと気候は温暖多雨であり,植生も亜熱帯的である。…
※「開聞岳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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