開聞岳(読み)カイモンダケ

デジタル大辞泉 「開聞岳」の意味・読み・例文・類語

かいもん‐だけ【開聞岳】

鹿児島県薩摩さつま半島南端付近にある円錐形の火山。標高924メートル。薩摩富士

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精選版 日本国語大辞典 「開聞岳」の意味・読み・例文・類語

かいもん‐だけ【開聞岳】

  1. 鹿児島県薩摩半島南東端の円錐状成層火山鹿児島湾の門戸の意の「海門」の音写。貞観一六年(八七四)、仁和元年(八八五)に大噴火の記録がある。霧島屋久国立公園の一部。標高九二二メートル。薩摩富士。御鼻。枚聞(ひらきき)山。

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日本歴史地名大系 「開聞岳」の解説

開聞岳
かいもんだけ

薩摩半島の最南端、現開聞町の南西部を占める円錐形の成層火山。薩摩富士とよばれ、標高九二二・二メートル。北麓に鎮座する開聞宮(現枚聞神社)の神体で、古代には開聞神として同社と一体化して把握されていた。枚聞ひらきき岳ともいう(鹿児島県地誌)。短径・長径ともに約四キロ、北部と北東部を除き、全面が東シナ海から屹立し、薩摩半島の最高点でもある。山体は第四紀完新世のものとされる輝石安山岩からなるが、これは海食崖の部分と山頂周辺でもみられ、その後の火山噴出物降下軽石火山灰層で覆われている。大きな噴火記録は紀元前五二〇―四七七年頃と貞観一六年(八七四)・仁和元年(八八五)などが知られる。その後も大小数次の火山活動があり、大正四年(一九一五)の噴煙停止で火山活動は終息している。

〔火山活動〕

開聞岳は阿多カルデラの形成後にできたもので、カルデラの中央火口丘的なものである。約四千年くらい前に火山活動が始まり、長い年月をかけて成層火山が形成され、その途中で花瀬はなぜ崎の縄状玄武岩(県指定天然記念物)もできている。周辺台地に厚く堆積したきわめて硬質なスコリア質の火山砂礫はコラとよばれ、山体形成期の噴出物と考えられている。山容は一見円錐形にみえるが、標高七〇〇メートル付近に鉢窪はちくぼといわれる狭長な段状をなした部分がある。これは旧火口壁の一部で、この鉢窪の上に新しい火山の噴火が起こり、火山丘ができて現在の開聞岳が形づくられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「開聞岳」の意味・わかりやすい解説

開聞岳 (かいもんだけ)

別名薩摩富士。鹿児島県薩摩半島南端にある火山。標高924m,基底直径約5kmの比較的小型の火山である。左右対称の側線をもつ美しい円錐状火山で,一見単式火山のように見えるが,玄武岩質の成層火山とその上にのる安山岩質の溶岩円頂丘とで構成される複式火山である。標高約600m以下の山体が成層火山で,その山頂火口をほぼ埋めて溶岩円頂丘がのっている。噴火活動は約4000年前に始まり,有史時代では9世紀に噴火の記録がある。山体斜面上には顕著な浸食谷は発達しておらず,全体として斜面は平滑で,密な植生で覆われている。火山噴出物(火山灰,スコリア)は開聞岳本体はもとより,薩摩半島南部や大隅半島南部の地表を広く覆って堆積している。開聞岳は,北方の池田湖とその周辺および指宿(いぶすき)付近から薩摩半島最南端の長崎鼻付近に至る海岸線などとともに霧島屋久国立公園に属している。
執筆者:

古くは枚聞(ひらきき)岳と称し,薩摩半島の南端に位置するため古来より海上を航行する船舶の目標とされてきた。その北麓にまつられる開聞神社(枚聞神社)は860年(貞観2)に従四位下に叙され,874年,885年(仁和1)の開聞岳の大爆発も記されている。開聞神社の祭神に関しては諸説あるが,《三国名勝図会》に和多津美神あるいは豊玉彦命,塩土老翁(しおつちのおじ),豊玉姫をまつり,本宮中尊女体は豊玉彦妻神をまつると伝えているように,開聞岳は海の神をまつる山として信仰されてきた。南島琉球から帰る者が船中で開聞岳を見た時は必ず酒を飲み開聞神をまつったと同書にあるほか,漁師が初めて漁に出た時に開聞岳の沖合にくるとサンコンメシといって,しゃもじとしゃくしを持って船の中をまわる儀礼を行った地域もある。また開聞神社の社殿をまわって豊漁を祈る所もあった。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「開聞岳」の意味・わかりやすい解説

開聞岳
かいもんだけ

鹿児島県、薩摩(さつま)半島最南端の指宿市(いぶすきし)開聞にある円錐(えんすい)形の成層火山。標高924メートル。俗称薩摩富士。周辺は起伏の小さい火山灰の台地(シラス台地)で、近くに九州一の大きさを誇る池田湖や、大規模な火口湖の鰻池(うなぎいけ)、さらに全国にその名をよく知られた指宿温泉がある。

 噴火は紀元前520~前477年ごろと、874年(貞観16)、885年(仁和1)の3回が大きなものとして知られている。周辺台地の上を覆うスコリア質の火山砂礫(されき)層はコラ(層)とよばれ、初期の成層火山形成期の噴出物といわれる。山体を形成する岩石は第四紀の輝石(きせき)安山岩と玄武岩が主である。大小数次にわたる噴火もしだいに収まり、1915年(大正4)には噴煙も停止した。噴火当時のコラ層は固結し、現在でも農業上の障害となっている。その除去と台地上の畑地灌漑(かんがい)事業が続行されている。また、山麓(さんろく)には亜熱帯植物が植えられ、池田湖や指宿温泉とともに、霧島錦江湾(きりしまきんこうわん)国立公園の一端を担っている。JR指宿枕崎(まくらざき)線開聞駅から開聞山麓までバス10分、下車後徒歩2時間。

[塚田公彦]


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百科事典マイペディア 「開聞岳」の意味・わかりやすい解説

開聞岳【かいもんだけ】

薩摩半島の南端,鹿児島県開聞町(現・指宿市)の南西部に位置する活火山。標高924m,基底直径約5km。円錐形をなし,薩摩富士ともよばれる。約4000年ほど前からの火山活動により山体が形成された。単式火山のように見えるが,玄武岩質の成層火山とその上にのる安山岩質の溶岩円頂丘とで構成される複式火山である。標高700m付近に鉢窪(はちくぼ)とよばれる旧火口壁の一部がみられる。874年,885年などに噴火した記録がある。その後も大小数次の火山活動があったが,1915年の噴煙停止で終息している。山容が美しく,古来霊山として信仰を集め,北麓に鎮座する開聞宮(枚聞(ひらきき)神社)の神体山とされていた。南海航路の目標ともなり,航海安全の神としても信仰された。霧島錦江湾国立公園に属する。→コラ
→関連項目指宿[市]霧島屋久国立公園長崎鼻日本百名山マール山川[駅]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「開聞岳」の意味・わかりやすい解説

開聞岳
かいもんだけ

鹿児島県南部,薩摩半島の南東端にある活火山。別称薩摩富士。指宿市に属する。標高 924m。古くは枚聞(ひらきき)の神をまつる山として開聞岳(ひらききだけ)と呼ばれたが,鹿児島湾の入口にあるため海門岳と呼ぶようになり,のち現在の字をあてるようになった。仁和1(885)年が最後の噴火。指宿カルデラ(→カルデラ)内で噴火した火山で,成層火山の山頂部(7合目付近)に溶岩円頂丘が載っている。構成岩石は輝石安山岩。全山広葉樹の原生林が生育。山麓には開聞山麓自然公園があり,頂上からは薩南諸島が遠望できる。霧島錦江湾国立公園に含まれる。

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事典・日本の観光資源 「開聞岳」の解説

開聞岳

(鹿児島県)
日本百名山」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の開聞岳の言及

【開聞[町]】より

…薩摩半島南東部に位置し,東シナ海に南面する。南端には基底面積が町域のおよそ2/5を占める開聞岳があり,北は九州最大の湖である池田湖に接している。年平均気温18℃,年降水量2000~2500mmと気候は温暖多雨であり,植生も亜熱帯的である。…

※「開聞岳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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