日本大百科全書(ニッポニカ) 「株式移転」の意味・わかりやすい解説
株式移転
かぶしきいてん
equity transfer
株式会社の組織再編方法の一つ。純粋持株会社を新設し、既存会社の子会社化を図る。具体例を示すと、まず新たにA社を設立し、既存のB社の株主はB社株をA社に譲渡する。そのかわりに、A社はA社株をB社の株主に交付することで株式の移転が完了する。この結果、A社は純粋持株会社として機能し、B社はその子会社となるのである。
株式移転は、株式交換制度と同様、「独占禁止法」において純粋持株会社が解禁されたことに伴い導入されたもので、1999年(平成11)10月施行の「商法」改正により可能となった手法である。その実施には、原則として株主総会における特別決議が必要である。この点を含め、手続上は株式交換に準じているが、形態面では新たに親会社を設立して完全子会社化の実現を図る点が異なる。
また、株式交換では完全親会社が、完全子会社となる企業の株主に交付する対価として、金銭その他の財産をあてることも可能であるが、株式移転では金銭等の交付は認められておらず、株式、社債、新株予約権のみが交付可能となっている。このため、子会社化される企業の株主に交付する対価の額が不相応に過大となるおそれがないことから、株主総会ではこの点に関する取締役の説明義務は課されていない。なお、これら企業再編に反対する株主には、株式買取請求権が与えられることとなっている。
[高橋 元]