説経浄瑠璃(じょうるり)の曲名。御伽草子(おとぎぞうし)から出て、奈良絵本、絵巻もある。作者不明。本地縁起(えんぎ)物の一つ。五条の中納言(ちゅうなごん)は清水観音(きよみずかんのん)の申し子という。中納言は親思いで亡き両親のために寺を建て、菩提(ぼだい)を弔うために笛を吹く。それが梵天国へ聞こえ、梵天王が感じて中納言は王の姫と結婚する。それを天皇が嫉妬(しっと)し、さまざまな難題をもちかけるが、姫の計らいによって解決する。梵天王自筆の判を要求されたので中納言がそれをとりに行っている留守に姫は奪われてしまう。中納言は苦難のすえに観音の手引きによって姫を救い出して日本に帰り、それぞれ文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、観世音(かんぜおん)菩薩となるという筋である。これは、もともと仏教界の唱導(説教)の題材であったが、それが御伽草子となり、説経浄瑠璃となった。説経浄瑠璃としては、内容は荒唐無稽(こうとうむけい)で架空的ではあるが、スケールが大きくておもしろいために、多数の演目のなかでもとくに五説経の一つとして重用され、正本が伝わっている。
[関山和夫]
『信多純一解説『説経正本集3』(1968・角川書店)』▽『市古貞次校注『日本古典文学大系38 御伽草子』(1958・岩波書店)』▽『大島建彦校注・訳『完訳日本の古典49 御伽草子集』(1983・小学館)』
御伽草子。渋川版の一つ。1巻。作者不詳。神仏の由来を説く〈本地物〉。五条の中納言は,すぐれた笛の技で梵天国王の姫と結ばれる。姫を参内させようと天皇が次々に課する難題を姫のはからいで解決するが,梵天王の判を要求されて梵天国に赴き,中納言の不注意で,かねて姫を奪おうとしていたために捕らえられていた羅刹(らせつ)国の王を逃してしまう。中納言はさらわれた姫を救い出し,あやうく羅刹国から逃げ帰る。のちに中納言は九世戸(くせのと)の文殊,姫は成相(なりあい)寺の観音となる。物語の冒頭に本地物の形式を強く示す一伝本もあって,元来唱導文芸であったものが,御伽草子として読本となる一方,同じ題,ほぼ同じ筋で,安土桃山時代ころから説経の芸能として語られるようになったとみられ,正本が伝わる。また古浄瑠璃としても演じられた。〈笛吹聟(ふえふきむこ)〉の昔話はこの物語と同型。
執筆者:森 正人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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