梵天国(読み)ボンテンコク

デジタル大辞泉 「梵天国」の意味・読み・例文・類語

ぼんてん‐こく【×梵天国】


梵天1」に同じ。
貞享元禄のころ、浄瑠璃の終わりに祝言としてを語ったところから》物事の終わり。転じて、追い出されること。
すんでの事―になる処を」〈魯庵破垣
室町時代御伽草子。1巻。作者未詳。本地物。清水観音の申し子の中納言が、梵天王の姫と結婚して帝の難題を解決し、また奪われた姫を救い出す物語。のちに浄瑠璃・説経節としても語られた。

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精選版 日本国語大辞典 「梵天国」の意味・読み・例文・類語

ぼんてん‐こく【梵天国】

  1. [ 1 ] ( 古くは「ぼんでんこく」「ぼんでんごく」 )
    1. 色界の初禅天(しょぜんてん)。欲界の淫欲を離れたきよらかな世界。梵天。
      1. [初出の実例]「中将姫の明ほのの岑〈西鶴〉 我恋は梵天国よりさかったり〈西伊〉」(出典:俳諧・飛梅千句(1679)賦鬼何誹諧)
    2. ( 貞享・元祿(一六八四‐一七〇四)頃、浄瑠璃の一日の興行の終わりに必ず[ 二 ][ 二 ]を語ったところからいう ) それきりで終わりとなること。物事の終わり。転じて、しくじって逃げだすこと。また、主人などから追い出されること。
      1. [初出の実例]「たといこの身はぼんてんこくになるとも」(出典:歌謡・松の葉(1703)三・一夜かがみ)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 御伽草子。室町時代末の作か。本地物。遍歴談。梵天王の姫とそれを娶った中納言の物語。諸種の難題を姫とともに解決し、梵天国をも遍歴し、中納言は丹後国久世戸の文殊、姫は成相観音として現われる。後に浄瑠璃として語られた。別称「梵天王」「はしだて」。
    2. [ 二 ] 古浄瑠璃。六段。慶長・元和(一五九六‐一六二四)頃、河内・左内・南無右衛門らの女太夫が語りだしたという。貞享・元祿頃まで、一日の興行の終わりの祝言には必ず語られた。[ 二 ][ 一 ]を扱ったもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「梵天国」の意味・わかりやすい解説

梵天国
ぼんてんこく

説経浄瑠璃(じょうるり)の曲名。御伽草子(おとぎぞうし)から出て、奈良絵本、絵巻もある。作者不明。本地縁起(えんぎ)物の一つ。五条の中納言(ちゅうなごん)は清水観音(きよみずかんのん)の申し子という。中納言は親思いで亡き両親のために寺を建て、菩提(ぼだい)を弔うために笛を吹く。それが梵天国へ聞こえ、梵天王が感じて中納言は王の姫と結婚する。それを天皇が嫉妬(しっと)し、さまざまな難題をもちかけるが、姫の計らいによって解決する。梵天王自筆の判を要求されたので中納言がそれをとりに行っている留守に姫は奪われてしまう。中納言は苦難のすえに観音の手引きによって姫を救い出して日本に帰り、それぞれ文殊菩薩(もんじゅぼさつ)、観世音(かんぜおん)菩薩となるという筋である。これは、もともと仏教界の唱導(説教)の題材であったが、それが御伽草子となり、説経浄瑠璃となった。説経浄瑠璃としては、内容は荒唐無稽(こうとうむけい)で架空的ではあるが、スケールが大きくておもしろいために、多数の演目のなかでもとくに五説経の一つとして重用され、正本が伝わっている。

[関山和夫]

『信多純一解説『説経正本集3』(1968・角川書店)』『市古貞次校注『日本古典文学大系38 御伽草子』(1958・岩波書店)』『大島建彦校注・訳『完訳日本の古典49 御伽草子集』(1983・小学館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「梵天国」の意味・わかりやすい解説

梵天国 (ぼんてんこく)

御伽草子。渋川版の一つ。1巻。作者不詳。神仏の由来を説く〈本地物〉。五条の中納言は,すぐれた笛の技で梵天国王の姫と結ばれる。姫を参内させようと天皇が次々に課する難題を姫のはからいで解決するが,梵天王の判を要求されて梵天国に赴き,中納言の不注意で,かねて姫を奪おうとしていたために捕らえられていた羅刹(らせつ)国の王を逃してしまう。中納言はさらわれた姫を救い出し,あやうく羅刹国から逃げ帰る。のちに中納言は九世戸(くせのと)の文殊,姫は成相(なりあい)寺の観音となる。物語の冒頭に本地物の形式を強く示す一伝本もあって,元来唱導文芸であったものが,御伽草子として読本となる一方,同じ題,ほぼ同じ筋で,安土桃山時代ころから説経の芸能として語られるようになったとみられ,正本が伝わる。また古浄瑠璃としても演じられた。〈笛吹聟(ふえふきむこ)〉の昔話はこの物語と同型。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「梵天国」の意味・わかりやすい解説

梵天国
ぼんでんこく

室町時代の御伽草子。「ぼんてんこく」とも読む。作者,成立年未詳。3巻。五条中納言と,その妻となった梵天王の姫の物語。異郷遍歴談で,仏の生前を語る本地物 (ほんじもの) 。筋に変化があり,めでたい内容であったから古浄瑠璃にも語られ,江戸時代前期,浄瑠璃の終りには必ずこれを語ったところから,物事の終りという意味にも用いられた。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「梵天国」の解説

梵天国
(通称)
ぼんてんこく

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
梵天国宝船
初演
元禄14(江戸・森田座)

梵天国
ぼんてんこく

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
万治3.11(江戸・日向太夫座)

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