正本(読み)しょうほん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

正本
しょうほん

(1) 各種の浄瑠璃長唄詞章節付を施して出版した冊子。その内容が浄瑠璃の語り手すなわち太夫 (たゆう) の語ったそのままの正しい本であるという味,および全部を収めた完全な本という意味で名づけられた。義太夫節の正本で後者にあたるものを丸本 (まるほん) ともいう。誤りのないことを証する奥書をつけるのを例とする。 (2) 歌舞伎脚本の筆写本のこと。台本台帳ともいい,関西では根本 (ねほん) ともいう。半紙を縦二つ折にした形が普通で,ときに横に二つ折にした横長のものもある。せりふの頭には,劇中人物名 (役名) でなく,その役を演じた役者の名を記す。

正本
せいほん
Ausfertigung

法律の規定のある場合に権限のあるにより,原本に基づいて作成される謄本一種法律上の効力は原本と同一である。原本は一定の場所に保存しておく必要があり,かつ,その効力を他の場所で発揮させなければならない場合 (たとえば,判決を当事者に送達するか,または確定判決執行文を付与する場合) に作成される。戸籍については,原本にあたるものを戸籍正本と呼び,市町村役場に備付けられる (戸籍法8) 。

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デジタル大辞泉の解説

しょう‐ほん〔シヤウ‐〕【正本】

根拠となる原本。
歌舞伎の上演用脚本。役者のせりふや動作、大道具・小道具・衣装・音楽などを詳しく書いた筆写本。台帳。根本(ねほん)。
浄瑠璃説経節長唄などの詞章に曲節の譜を記入した版本。
太夫使用の原本と仮名遣いや節付けが同じ浄瑠璃本
せいほん(正本)

せい‐ほん【正本】

権限のある者(裁判所書記官公証人など)が原本に基づき作成する謄本の一種で、原本と同一の効力を有するもの。
戸籍の原本にあたるもの。
転写または副本の原本。→正本(しょうほん)

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世界大百科事典 第2版の解説

しょうほん【正本】

江戸時代の音曲書。浄瑠璃詞章の版本として,浄瑠璃太夫の原本を正しく写したものの意。1634年(寛永11)4月刊の《はなや》に〈天下無双薩摩太夫以正本開之〉と記すものが最も古く,以来享保(1730年ごろ)まで刊行されている。この種のものは,1ページが17~18行の細字本で数葉の挿絵が入っているので,絵入細字本絵入浄瑠璃本ともいわれる。音曲上の節付よりもを読ませることが主眼であったが,延宝期(1673‐81)には挿絵がなく,太字で節付の入ったものが刊行されるようになった。

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精選版 日本国語大辞典の解説

しょう‐ほん シャウ‥【正本】

〘名〙
① 根拠となる原本。
※玉葉‐承安三年(1173)三月一三日「保安返牒之草〈在良草之、清書定信也、伴正本草也〉取出令見」
※史記抄(1477)二〇「正本をば名山の書府に蔵めて、副本をば京に留て置ぞ」
② 規範となるもの。適正なよりどころ。
※正法眼蔵(1231‐53)伝衣「いま仏祖正伝せる袈裟の体色量を、諸仏の袈裟の正本とすべし」
※玉塵抄(1563)三八「四十にならぬ壮士でひっこうだは急流中の勇退の正本なり」
③ 歌舞伎狂言の脚本。芝居のしくみ、役者のせりふや動作、衣装、舞台装置、音楽などのいっさいをこまかく書いたもの。体裁には、半紙を横折りにした横本と、半紙を二つに折った縦本とがある。台帳。台本。根本(ねほん)。〔絵本戯場年中鑑(1803)〕
※滑稽本・八笑人(1820‐49)二「ヱヱ、此男も、むづかしい事計りいふは。まづ荒増正本(シャウホン)をはなさつせへナ」
④ 太夫(たゆう)訂正の脚本。節つけや仮名づかいに至るまで、太夫使用の原本のままの浄瑠璃の称。
※黄表紙・江戸生艷気樺焼(1785)上「新内ぶしの正本なぞを見て」
⑤ 浄瑠璃、説経節、長唄などの詞章に曲節の譜を記入した版本。
⑥ 省略のない完本。丸本。

せい‐ほん【正本】

〘名〙
① 法令の規定に基づき、権限のある者によって作成された謄本で、原本と同一の効力を有するもの。判決正本・公正証書正本など。〔仏和法律字彙(1886)〕
② 戸籍の原本に当たるもの。
※戸籍法(明治三一年)(1898)一一条「身分登記簿の正本は」
③ 転写あるいは副書したものの原本。しょうほん。〔出三蔵記集‐八・維摩詰経序〕

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世界大百科事典内の正本の言及

【舞の本】より

…広義には幸若舞(こうわかまい)の詞章を記した冊子のすべてをいうが,狭義にはそのうち,読み物として享受されるもののみをいう。演唱するための台本は正本(しようほん)といわれ,墨譜(ぼくふ)を付したものもある。狭義の舞の本は,奈良絵本の形態のものがあり,版本として36番をセットとして刊行されたものもある。…

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