森繁 久弥(読み)モリシゲ ヒサヤ*

新撰 芸能人物事典 明治~平成 「森繁 久弥」の解説

森繁 久弥
モリシゲ ヒサヤ*


職業
俳優

肩書
日本俳優連合理事長

旧名・旧姓
菅沼

生年月日
大正2年 5月4日

出生地
大阪府 枚方市

学歴
早稲田第一高等学院卒 早稲田大学商学部〔昭和11年〕中退

経歴
二高教授、大阪市高級助役、大阪電灯常務などを歴任した菅沼達吉の庶子で、6人兄姉の末っ子。実の兄は2人で、次兄・菅沼俊哉は共同通信社常務理事。祖父・森泰次郎は幕府の大目付役であり、儒学者の成島柳北は祖父の実弟(大叔父)にあたる。2歳になる前に父を亡くし、小学5年の時に母方の祖父の家を継ぎ、森繁姓となる。旧制北野中学から早稲田第一高等学院に進み、早稲田大学商学部在学中は演劇研究部に所属。部の1年先輩に映画監督となった山本薩夫や谷口千吉がいた。昭和11年大学を中退して東京宝塚劇場に入り、東宝劇団や古川ロッパ一座などで活動。13年応召したが、耳の大手術をした後で即日帰郷となった。14年NHKに入局、アナウンサーとして旧満州の新京中央放送局に赴任した。21年末に引き揚げ、22年東宝映画「女優」の端役で映画デビュー。23年菊田一夫の舞台「鐘の鳴る丘」に出演し、24年新宿のムーランルージュ入団。25年30代半ばを過ぎてNHKラジオ「愉快な仲間」のレギュラーに起用されると、その才能に注目が集まり、25年ドタバタ喜劇「腰抜け二刀流」で映画初主演。27年サラリーマン喜劇映画三等重役」が出世作となってシリーズ化され、31年社長役を演じた「へそくり社長」からの〈社長〉シリーズがスタート。「駅前旅館」(33年)から24作製作された〈駅前〉シリーズと並んで、30作に及ぶ人気シリーズとなり東宝の喜劇映画を支え、〈次郎長三国志〉シリーズの森の石松役も人気を呼んだ。人よりワンテンポ早い軽快な演技に特色があり、また、それまでのドタバタの喜劇俳優とは違った、自然な演技の中で喜劇性を光らせることができるユニークな存在として、後進の俳優たちに大きな影響を与えた。淡島千景と共演して代表作となった「夫婦善哉」を始め、「警察日記」「神阪四郎の犯罪」「猫と庄造と二人のをんな」「雨情」「恍惚の人」などの演技も評価が高く、出演映画は250本以上。舞台にも力を入れ、37年座長1人だけの森繁劇団を旗揚げ。34年初演の「佐渡島他吉の生涯」、58年初演の「孤愁の岸」が代表作で、42年に初演したミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の主人公テヴィエ役は、50年の再演から爆発的な人気を呼び、61年まで900回務めた。テレビでは、交流のあった向田邦子が脚本を手がけたホームドラマ「七人の孫」「だいこんの花」や〈おやじのヒゲ〉シリーズが有名。32年から平成20年まで半世紀にわたり、再放送を含めて2000回以上続いたNHKラジオ「日曜名作座」では、女優の加藤道子と2人だけで、何人もの人物を一人で演じわける話芸を披露した。滋味のある歌声でも知られ、昭和34年から7年連続でNHK「紅白歌合戦」に出場。映画「地の涯に生きるもの」のロケ先で作詞・作曲した「知床旅情」は加藤登紀子らにも歌われて大ヒットし、広く知られる曲となった。晩年は、平成9年公開のアニメ「もののけ姫」でイノシシ長老役を、11年CD「葉っぱのフレディ いのちの旅」の朗読を担当。16年のテレビドラマ「向田邦子の恋文」、映画「死に花」を最後に俳優活動から遠ざかった。映画・舞台・テレビ・ラジオ・朗読・歌と、昭和・平成の芸能界を代表する名優で、昭和59年文化功労者となり、平成3年大衆芸能分野から初めて文化勲章を受章。芸能界の長老として、先に亡くなっていく俳優たちへの弔辞を読む姿も知られた。他の出演作に、映画「珍品堂主人」「青べか物語」「台所太平記」「二百三高地」「連合艦隊」「小説吉田学校」「流転の海」、舞台「赤い絨氈」「南の島に雪が降る」、ドラマ「元禄太平記」「大往生」「怒る男・わらう女」など。文筆もよくし、著書に自伝「森繁自伝」「さすらいの唄」や、「こじき袋」「アッパさん船長」「見て来た・こんな・ヨーロッパ」「わたしの自由席」「にんげん望遠鏡」「もう一度逢いたい」「品格と色気と哀愁と」などがある。13年から「週刊新潮」に演出家・作家の久世光彦の文章で「大遺言書」を連載したが、18年22歳年下の久世が急逝。その葬儀に参列したのが最後の公の姿となった。21年96歳の天寿を全うした。同年国民栄誉賞を受け、俳優として初めて徒三位に叙された。

所属団体
日本ペンクラブ,日本文芸家協会

受賞
芸術選奨文部大臣賞〔昭和53年〕,文化功労者〔昭和59年〕,国民栄誉賞〔平成21年〕 紫綬褒章〔昭和50年〕,勲二等瑞宝章〔昭和62年〕,文化勲章〔平成3年〕 ブルーリボン賞(主演男優賞)〔昭和30年〕「夫婦善哉」,NHK和田賞〔昭和33年〕,NHK放送文化賞〔昭和39年〕,菊池寛賞〔昭和49年〕,ゴールデン・アロー賞(特別賞)〔昭和51年〕,毎日芸術賞〔昭和51年〕,菊田一夫演劇賞(大賞 第1回)〔昭和51年〕,紀伊国屋演劇賞(特別賞)〔昭和51年〕,芸能功労者表彰〔昭和54年〕,日本文芸家協会大賞〔昭和57年〕,日本アカデミー賞(特別賞)〔昭和58年〕,都民文化栄誉章(第1回)〔昭和58年〕,山路ふみ子賞(文化賞)〔昭和59年〕,菊田一夫演劇賞(特別賞)〔昭和60年〕,早稲田大学芸術功労者表彰〔昭和60年〕,交通文化賞(第33回)〔昭和61年〕,放送文化基金賞〔昭和62年〕,日本アカデミー賞(協会栄誉賞)〔平成4年・22年〕,日本映画批評家賞(ゴールデングローリー賞 第5回 平7年度)〔平成8年〕,東京都名誉都民〔平成9年〕,喜劇人大賞(名誉功労賞 第1回)〔平成16年〕,日本レコード大賞(特別功労賞 第51回)〔平成21年〕,日刊スポーツ映画大賞(特別賞 第22回)〔平成21年〕,毎日映画コンクール特別賞(第64回 平21年度) 毎日映画コンクール男優主演賞〔昭和30年〕

没年月日
平成21年 11月10日 (2009年)

家族
妻=森繁 万寿子(著述家・旅行家),父=菅沼 達吉(実業家),兄=菅沼 俊哉(共同通信社常務理事)

伝記
森繁さんの長い影人生はピンとキリだけ知ればいい―わが父森繁久弥銀幕の天才 森繁久弥森繁久弥86才芸談義隙間からスキマへなつかしい芸人たち 小林信彦著森繁健 和久昭子著山田 宏一 編倉本 聡 著森繁 久弥 著色川 武大 著(発行元 文芸春秋新潮社ワイズ出版小学館日本放送出版協会新潮社 ’10’10’03’99’92’89発行)

出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報

367日誕生日大事典 「森繁 久弥」の解説

森繁 久弥 (もりしげ ひさや)

生年月日:1913年5月4日
昭和時代;平成時代の俳優

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

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