楽阿弥(読み)ラクアミ

デジタル大辞泉 「楽阿弥」の意味・読み・例文・類語

らく‐あみ【楽×弥】

安楽に暮らす人を人名のように表した語。楽助らくすけ
「十徳にさまかへて昔は男山、今こそ―と」〈浮・一代男・三〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「楽阿弥」の意味・わかりやすい解説

楽阿弥 (らくあみ)

狂言の曲名。舞狂言大蔵,和泉両流にある。伊勢参詣(さんけい)の旅僧が,伊勢の国,別保(べつぽう)の松原に着くと,1本の松に尺八が数多くかけられているのを見る。所の者にいわれを尋ねると,昔ここに住んでいた楽阿弥陀仏という尺八吹きが尺八の吹き死にをして,今日はその命日にあたるので,あのように尺八を手向けるのだと語り,僧にも供養を勧める。そこで,僧も懐から尺八を取り出して奏しはじめると,〈尺八の,あら面白の音色やな,おぬしを見れば双調切(そうぢようぎり)なり〉と謡いながら,楽阿弥の幽霊が現れ,尺八の功徳を説く。2人は尺八の合奏をするが,楽阿弥の霊は非業の死をとげたありさまを舞と謡に託して語り,回向を願いつつ姿を消す。登場は旅僧,所の者,楽阿弥の霊の3人で,楽阿弥の霊がシテ。ほかに地謡(じうたい)と囃子(笛,小鼓,大鼓)が入る。旅僧の役をワキ,所の者の役をアイと称する。名ノリ・道行・着ゼリフ,アイとの問答一声(いつせい)の囃子,一セイの謡,囃子事としてのカケリ,地謡による仕方など,万事が能がかりの演出で行われる。ほかに《祐善(ゆうぜん)》《通円(つうえん)》《蟬(せみ)》《蛸(たこ)》《野老(ところ)》など同種の舞狂言があり,これらは夢幻能成立後にパロディとして作られた特殊な狂言らしいが,《楽阿弥》にかぎり,能と狂言とが未分化な時代のおもかげを伝える古作だとの説もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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