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権力政治 けんりょくせいじpower politics

翻訳|power politics

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

権力政治
けんりょくせいじ
power politics

正義や道徳などの理念的価値よりも,現実的利益の追求に立脚する政治や,マキアベリズムに代表される権力的側面を強調する政治をいう。通常は国際政治に関する術語で,E. H.カー,H. J.モーゲンソー,G.シュワルツェンバーガーらが理論的基礎を築いた。彼らによれば,国家間の諸関係は,基本的に権力闘争として集約される。すなわち,力という手段によって国家的利益の獲得や拡大を徹底的に追求する現実的態度こそ,国家間の共通利害の冷静な判断とその確保を可能ならしめるものであり,独自の利害の相互的尊重を導くとともに,平和維持という高次元の目標にそいうる現実的条件を発見できるとする。したがって権力政治は,国際政治の理念的要素を全面的に否定するものでなく,特定国の利害追求のみを容認する帝国主義的主張とも異なる。歴史的には O.フォンビスマルクのマハト・ポリティークにみられる現実的政策が好例で,国際連盟は W.ウィルソン理想主義外交の非現実性を証明し,第2次世界大戦後の米ソ共存体制はイデオロギーや国家形態を超越した権力政治の現実的追求の必然性を示すとされる。資本主義の高度な発展,一国社会主義の確立のいずれもが国家権力の役割を強大化したために,国際社会においても,権力のモメントが理念的価値に優先するといわれている。

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知恵蔵の解説

権力政治

国家間の権力闘争を国際政治の本質とみなす見方、あるいはそのような観点から国家の利益や権力の維持・増大を追求する国家政策。現実主義、政治的リアリズムとほぼ同義。17、18世紀の主権国家システムが原型。国家に上位する権威や軍・警察を欠き、国際関係アナーキーな構造を持つ以上、国家は最終手段としての軍事力を含むあらゆる手段を動員してのみ、国家目標を達成できるという考え方に立つ。国家間の価値配分や紛争処理方式として戦争を承認する態度ないし行動様式である。19世紀以降は民主主義的な世論に政府が拘束され、国際的な相互依存の進展によって古典的な主権国家システムが変容し、権力闘争の側面のみから国際関係をとらえることは一面的すぎるようになった。しかし、ナチス・ドイツや日本の軍事的対外膨張、米ソの冷戦などのほか、近年の日中間の相互不信の悪循環傾向も一例。権力政治的発想は形を変えながら大きな影響と不毛な結果を残した。◇H.J.モーゲンソー『国際政治』(1998年、福村出版)

(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2008年)

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百科事典マイペディアの解説

権力政治【けんりょくせいじ】

パワー・ポリティクス

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

権力政治
けんりょくせいじ

英語のpower politicsということばの訳語。普通、権力政治と訳されるが、力の政治、力の政策などとも訳される。国内政治の面では、露骨な権力によって支配する専制的・独裁的な方法をいう場合があり、対外政策の面では、軍事力の誇示ないし威嚇によって目的を達する仕方を権力政治という。しかし、国際政治学のいくつかの学派では、国際政治をパワーpowerの獲得と行使をめぐって展開されるものとみており、国際政治は権力政治であるという考え方をとっている。
 1930年代に入って、ファシズムのような独裁的・侵略的な体制が猛威を振るうと、それまで国際道義や国際法の役割を重視した国際政治学は、現実主義的な学派に席を譲り、国際政治は権力をめぐる闘争であるとする見方が広がった。F・シューマンやE・H・カーなどがその学派の先駆であるが、H・モーゲンソーは権力政治の概念をより徹底させて、道義や法などもパワーの一つであると考えた。パワーの観点からみるとき、国家の政策は、パワーの維持(現状維持政策)、パワーの拡大(帝国主義)、パワーの示威(プレステイジ政策)の三つに分けられる、とした。いわば彼によれば、国際政治における権力は自己目的なのである。
 しかし、国際政治は確かに権力政治を重要な要素としているが、国際政治がもっぱら権力政治であるとみるのは一面的である。権力という概念自体が本来あいまいであり、軍事力に限られない複雑な要素からなっている。モーゲンソーはパワーの要素として、地理、天然資源、工業力、軍備、人口、国民性、国民の士気、外交の質、政府の質をあげている。測定の可能なものもあり、不可能なものもあって、機械的に集計して一国の力だというわけにはいかない。国際政治を権力政治とする見方そのものが、国際政治をいよいよ権力政治的にしているという側面を見逃すべきではない。モーゲンソーの考え方にかえて、国際政治を諸国の相互依存という観点から把握しようとする立場も現れ、諸国家がそれぞれ国家的利益を追求する権力政治的見方にかえて、全世界的な利益を優先させなければならないとする見方もしだいに有力になっている。[斉藤 孝]
『E・H・カー著、井上茂訳『危機の二十年』(1952・岩波書店) ▽F・シューマン著、長井信一訳『国際政治』上下(1973・東京大学出版会) ▽H・モーゲンソー著、鈴木成高・湯川宏訳『世界政治と国家理性』(1954・創文社)』

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世界大百科事典内の権力政治の言及

【パワー・ポリティクス】より

…国内政治であれ国際政治(世界政治)であれ,政治の本質は権力闘争にあるというとらえかたは,古来,政治的リアリズムの思惟を触発してきたもっとも一般的な政治観である。この視点から遂行される政治をパワー・ポリティクス(権力政治)という。そこでは権力の獲得,拡大,維持が政治行動の規範となる。…

※「権力政治」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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