橋のない川(読み)ハシノナイカワ

デジタル大辞泉 「橋のない川」の意味・読み・例文・類語

はしのないかわ〔はしのないかは〕【橋のない川】

住井すゑ長編小説。全7部。第1部は、昭和34年(1959)から昭和35年(1960)にかけて部落問題研究所機関紙部落」に連載されたのち、昭和36年(1961)刊行以後は書き下ろしで第7部は平成4年(1992)に刊行。被差別部落舞台に、理不尽な差別実態と、開放を求める人々の生きざまが描かれる。今井正監督、東陽一監督によりそれぞれ映画化。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「橋のない川」の意味・わかりやすい解説

橋のない川
はしのないかわ

住井すゑの全7部5500枚に及ぶ長編小説。1957年(昭和32)、夫の犬田卯(しげる)を失ったのち、茨城県稲敷(いなしき)郡牛久(うしく)町(現牛久市)で執筆を開始。第1部950枚は部落問題研究所の機関誌『部落』に連載されているが、これは夫の遺骨を東京・青山無名戦士之墓に納めたその足で部落解放同盟を訪ね、「今日から人間解放の仕事に参加させてほしい」と申し出て、実現したものだという。第1部は61年、新潮社から刊行。第2部からは書き下ろしで、93年に第7部を刊行して完結。36年がかりの大作である。舞台は奈良県。明治41年(1908)以降の、主人公の孝二や和一らの解放を求める生き方が、熱っぽく描き出されている。この膨大な社会・思想小説の根底には、少女時代から抱き続けてきた被差別部落の存在に対する憤りと、彼らへの深い愛情が横たわっており、それが読者に抜き差しならぬ感銘をもって迫ってくる、隠れたロングセラー小説となった。

古林 尚]

『『橋のない川』全7冊(新潮文庫)』

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デジタル大辞泉プラス 「橋のない川」の解説

橋のない川

①住井すゑの長編小説。被差別部落の生活をリアルに描く。第1部は1961年刊行。以後1992年まで全7部刊行された。
②1969年公開の日本映画。①を原作とする。監督:今井正、脚色八木保太郎、撮影:中尾駿一郎。出演:北林谷栄長山藍子、高宮克弥、大川淳、伊藤雄之助、阿部寿美子ほか。第2部は1970年公開。
③1992年公開の日本映画。①を原作とする。監督・脚本:東陽一、脚本:金秀吉、撮影:川上晧市、美術:内藤昭。出演:大谷直子、中村玉緒、杉本哲太、渡部篤郎、萩原聖人、中村嘉葎雄、高橋悦史ほか。第47回毎日映画コンクール日本映画優秀賞、監督賞、撮影賞、美術賞受賞。②を「差別を助長する」などとして批判してきた部落解放同盟が自ら企画した作品。

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