アンティ・クリマクス著として1849年にコペンハーゲンで刊行されたキルケゴールの著作。題名は新約のラザロ復活物語(《ヨハネによる福音書》11章)から採られた。本書に語られる〈死に至る病〉とは,神との関係のもとで人間の自己に生じてくる〈絶望〉状態のことであり,肉体の死をもってすら終わることのない病である。本書は2部からなり,第1部では精神の病である絶望の一般的分析が,第2部では絶望の真相である罪のキリスト教的分析が行われる。当時のデンマーク国教会の体質に純粋なキリスト教信仰からの逸脱を見たキルケゴールは,本書を教会批判の書として公刊したが,同時に近代的自我の構造にひそむ絶望をあばき出した点で,近代精神に対する批判の書ともなった。真のキリスト教信仰による病の治療を示す《キリスト教における修練》(1850)が本書の続編として書かれている。
執筆者:柏原 啓一
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…41年に論文《アイロニーの概念》を大学に提出してベルリンに旅立ち,シェリングの積極哲学の講義を聴く。 43年以降は,学位論文で確認した〈ソクラテス的アイロニー〉のもつ否定的弁証法を著作活動に生かし,実名で刊行した多くの宗教講話に並べて,偽名で《あれか―これか》《反復》(以上1843),《哲学的断片》《不安の概念》(以上1844),《哲学的断片への後書》(1846),《死に至る病》(1849),《キリスト教における修練》(1850)などの文学的・哲学的・宗教的な著作を発表。大地震体験における罪の内面深化とレギーネ体験に基づく愛の内的反復とが,これらの作品を通して〈いかにして真のキリスト者になるか〉という課題に昇華され,当時のヘーゲル主義的思弁の哲学や神学に対して,主体的な実存の立場を打ち出すこととなった。…
…そのため,キリスト教の罪観念は一般的価値としての善悪の観念によっては測られないものがある。キルケゴールは《死に至る病》(1849)第2部で,悪を善の欠如や無知と呼ぶギリシア哲学の規定は,キリスト教の罪観念をほとんど理解しないものだ,という。この書は罪を神の前での絶望,反抗と呼び,神と人間との根源的関係の齟齬(そご)と規定したが,この規定はS.フロイトやユングにおいても顧みられている。…
※「死に至る病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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