ヨハネによる福音書(読み)ヨハネニヨルフクインショ(英語表記)Gospel according to John

デジタル大辞泉 「ヨハネによる福音書」の意味・読み・例文・類語

ヨハネによるふくいんしょ【ヨハネによる福音書】

新約聖書四福音書の第4書。「始めに言葉ありき」の有名な句で始まる本書特徴は、他の三福音書共観福音書)と異なり、単なるイエス伝記にとどまらず、神の真理言葉)の人格化としてのイエス=キリスト論証にある。使徒ヨハネの作とされる。1世紀末に成立ヨハネ福音書ヨハネ伝。→福音書

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精選版 日本国語大辞典 「ヨハネによる福音書」の意味・読み・例文・類語

ヨハネによるふくいんしょ【ヨハネによる福音書】

  1. 新約聖書第四書。四福音書の一つ。一世紀末に成立。ヨハネみずからがイエスと対話した形式で記した福音書。「始めに言葉ありき」の有名な句で始まる。ヨハネの三通手紙黙示録とともにヨハネ文書と総称される。ヨハネ伝。ヨハネ福音書。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヨハネによる福音書」の意味・わかりやすい解説

ヨハネによる福音書 (ヨハネによるふくいんしょ)
Gospel according to John

新約聖書の一つ。伝統的にゼベダイの子使徒ヨハネがエペソ(エフェソス)で書いたとされるが,最近の研究では匿名著者により後1世紀末にパレスティナ・シリア地方で書かれたと考えられている。他の三つの正典福音書のいずれにも直接依存せず,一部独自の伝承を用いている。思想的にも独特で,とりわけキリスト論関心を集中している。万物に先立ち神とともにあった〈ことば〉が〈受肉〉(1:14)して世に到来し,神を啓示し,十字架の上にその業(わざ)を〈完成〉した後,再び〈父〉のもとへと帰る(13:1,19:30)。この啓示への個々人の決断において信仰と不信仰,生命と死,光と闇への裁きがすでに今ここでできごととなる。これを表現する〈ヨハネ的言語〉もまた新約聖書中独特なものである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨハネによる福音書」の意味・わかりやすい解説

ヨハネによる福音書
ヨハネによるふくいんしょ
Kata Iōannēn; The Gospel According to John

新約聖書4福音書の一つ。最も遅く成立した。共観福音書とは内容的にほとんど共通したところがなく,「ヨハネの神学」ともいうべき独特の神学的態度がうかがえる。福音書は「初めにロゴスがあった,ロゴスは神とともにあった。ロゴスは神であった」との有名な言葉に始り,ロゴスの受肉としての光,父のひとり子についてのあかしのために現れたバプテスマのヨハネについての説明,ヨハネによる神の子イエスについてのあかし,ガリラヤのカナにおける婚礼の宴での奇跡,ニコデモとの対話,ベテスダのシセの足なえや盲人の治癒,イエス自身のあかしについての説明,ラザロの復活,イエスの復活など,ほかにはない記事があるだけではなく,多くの事跡,しるしが神の子イエスのあかしとして,またキリスト教教理 (特に教会について) との有機的ないし象徴的連関において解説されている。また他の福音書に比べて生命や愛 (神の愛,キリストの愛,キリスト教徒の愛) が一層強調されており,愛の福音書とも呼ばれている。エイレナイオスは十二使徒の一人ゼベダイの子ヨハネを著者とするが確かでない。

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世界大百科事典(旧版)内のヨハネによる福音書の言及

【罪】より

…原罪や〈最後の審判〉でさえ,預言者とそれに続く黙示思想家とによって,イスラエルの歴史と運命の問題として自覚されたのであって,けっして初めからあった抽象的な観念ではない。聖書の罪意識はまったく具体的・現実的なので,たとえば《イザヤ書》45章のように神は〈光をつくり,闇を創造する〉といった,ゾロアスター教の二元論すれすれのことがいわれ,《ヨハネによる福音書》のようにグノーシス的二元論をかかえこむことすらある。あるいは,イエスは病気癒(いや)しの奇跡を多く行ったが,これが罪の赦し(贖罪)と一つであって,およそご利益宗教的ではなかったことは,先に述べた罪の全体性からしてのみ理解されよう。…

【福音書】より

…後2世紀以後の呼称で,イエスの言葉と業(わざ)を相互に連関させ,その死にいたるまでを叙述する文書を指す。最古の《マルコによる福音書》は後70年ころ,《マタイによる福音書》と《ルカによる福音書》が80‐90年,《ヨハネによる福音書》が100年ころの成立と考えられる。〈……による福音書〉という語法には,元来一つであるべきイエスの救いの〈福音〉を異なる複数の視点から表現するものという意味が含まれる。…

【ヨハネ】より

…歴史的にみても,イエスに最も早くから従った弟子の一人であったものと思われる。 原始エルサレム教会の成立の直接のきっかけとなったのは,いったんは離散していた弟子たちに,死んだイエスが“現れた”という〈顕現〉の体験であったが,ヨハネは,この体験を伝える古い伝承(《コリント人への第1の手紙》15:3~7)では〈十二人(十二弟子)〉の中に含められる形で,また,同じ体験について述べる《ヨハネによる福音書》21章でははっきり名前(〈ゼベダイの子ら〉)を挙げられる形で,重要な証人の一人とされている。この点についてはパウロも直筆の手紙の一節(《ガラテヤ人への手紙》2:9)で,48年に異邦人伝道の是非をめぐってエルサレムで行われたいわゆる〈使徒会議〉に関して報告しつつ,エルサレム教会の〈柱として重んじられている〉3人の人物に言及し,〈主の兄弟ヤコブ〉(〈ゼベダイの子ヤコブ〉ではなく,イエスの肉親の兄弟ヤコブ)およびケパ(ペテロ)と並べてヨハネの名前を挙げている。…

【ロゴス】より

…同学派の祖キプロスのゼノンはいう,〈共通なる普遍の法,それこそまさに“正しきロゴスorthos logos”なのであるが,それはあまねく万物にゆきわたるもの,すなわち存在するものいっさいの秩序の主なるゼウスと同一なるものである〉。なお,周知のように新約聖書《ヨハネによる福音書》は〈初めに言(ことば)(ロゴス)があった。言は神と共にあった。…

※「ヨハネによる福音書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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