フランスの作家ビリエ・ド・リラダンの短編集。それまで種々の雑誌に発表した作品に推敲(すいこう)を施し、新たに未発表の4編を加えた全28編(このうち「恋の物語」は7編の詩)よりなる。1883年刊。没落した名流貴族の末裔(まつえい)で、時流に迎合せず、貧窮のなかで孤高の創作を続けた作者の代表作で、格調ある文体と卓抜な構成で高い評価を得ている。当時の功利的風潮を戯画化した『ビルジニーとポール』『豪華無類の晩餐(ばんさん)』、科学万能主義の倨傲(きょごう)や進歩信仰に毒された民衆の愚昧(ぐまい)を嘲笑(ちょうしょう)する『天空広告』『栄光製造機』『トリスタン博士の治療』『断末魔の吐息の化学的分析』、民衆と孤高者との対立を描く『民衆の声』『サンチマンタリスム』『群衆の焦躁(しょうそう)』、近代が生み出した狂気の畸形(きけい)的人物像をえぐりだす『最後の宴(うたげ)の客人』『人間たらんとする欲望』、また、そうした現実を超脱する方途を伝奇や神秘、夢想の世界に求めた『ポートランド公爵』『ベラ』『見知らぬ女』など、いずれも近代社会の低劣卑俗に対する仮借なき(したがって残酷な)批判と、その原動力ともいえる作者の高度の理想主義を示した名品である。
[秋山和夫]
『斎藤磯雄訳『残酷物語』(1965・筑摩書房)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…リラダンが〈映画〉を予見したことは通説になっている。例えば《残酷物語》(1883)の中の〈天空広告〉という短編では,まだ幻灯機も珍しかった時代に,天空をスクリーンとする壮大な〈映画〉を予見している。 〈映画〉はそもそも〈有用なものと快適なものとをごっちゃにし,遊びながら人間の本当の顔を開示する〉とG.R.ホッケが定義した,〈魔術師〉たちの〈遊戯機械〉〈悪魔の発明〉であったのである。…
…こうして彼は,孤高の瞑想のうちに幻こそ現実と信じて壮麗な夢想に遊び,この世の現実を冷笑する。練り上げられた輝かしい文体による短編小説集《残酷物語Contes cruels》(1883),長編《未来のイブL’Ève future》(1886)などは,俗物を嘲弄し,芸術と霊的なるものの至高権を主張しつつ,この世に居場所のない流謫者の憂愁をのぞかせる作品だが,マラルメらごく少数の知己に高く評価されただけで,まったき窮乏のうちに死去した。【清水 徹】。…
※「残酷物語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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