安土桃山時代の剣術の達人。生没年不詳。豊前国(福岡県)の彦山のふもとに住む百姓であったが,武芸にすぐれ,老母に対する孝行でも知られる。実伝はくわしくはわからないが,毛谷村六助を主人公とする時代物浄瑠璃《彦山権現誓助剣(ちかいのすけだち)》が,1786年(天明6)大坂で初演されて大当りとなり,その後繰り返し上演され,黄表紙・合巻・読本などにもとりあげられたため,広く知られる人物となった。作中の六助は,吉岡一味斎から八重垣流の剣法を伝授されたが,師一味斎がその娘お菊に横恋慕した京極内匠(たくみ)に暗殺されたため,一味斎の妻お幸,娘お園,お菊の子弥三松を助けて敵討を果たす。《敵討巌流島》に構想が似ており,京極内匠が実は明智光秀の子であったというのも,それに先立つ宝暦期(1751-64)の時代物の定型であるが,お園という女丈夫の活躍が目ざましく,お園を助ける六助に人気が集まった。全十一段の中で九段目〈六助住家(毛谷村)〉は歌舞伎でも名高い。
執筆者:大隅 和雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
…出勤の太夫は,初世豊竹麓太夫,3世竹本内匠太夫,3世竹本政太夫,2世竹本氏太夫(のちの4世政太夫)ほか。実録《豊臣鎮西軍記》に毛谷村六助の話が伝えられているが,宮本武蔵の物語から作意を得たものともいわれる。長州藩の武芸師範吉岡一味斎は試合の遺恨により,京極内匠に闇討されて殺される。…
※「毛谷村六助」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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