豊前(読み)ぶぜん

精選版 日本国語大辞典 「豊前」の意味・読み・例文・類語

ぶぜん【豊前】

[一] 西海道一一か国の一つ。古くは豊国(とよのくに)と呼ばれたが、文武天皇のころ、豊前・豊後の二つに分かれて、それぞれ一国となる。鎌倉時代は武藤金沢北条糸田)の諸氏、室町時代は大内氏が守護、のち大友氏が領有。江戸時代は小倉・中津・小倉新田(千束)の三藩に分かれた。明治四年(一八七一)の廃藩置県により、三藩が三県となり、のち小倉県に統合。同九年南部は大分県に、北部は福岡県に編入された。豊州。
[二] 福岡県東部の地名周防灘に面し、米作のほか海苔養殖沿岸漁業も行なわれる。昭和三〇年(一九五五宇島(うのしま)市として市制。ほどなく改称

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デジタル大辞泉 「豊前」の意味・読み・例文・類語

ぶぜん【豊前】

福岡県南東部の市。周防灘すおうなだに面し、宇島うのしま港を中心工業地帯をなす。農業漁業も盛ん。人口2.7万(2010)。
旧国名の一。現在の福岡県東部から大分県北部。

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改訂新版 世界大百科事典 「豊前」の意味・わかりやすい解説

豊前[市] (ぶぜん)

福岡県東部,周防灘に面する市。人口2万7031(2010)。1955年4月10日,築上郡の八屋(はちや)町と8村が合体,宇島(うのしま)市となり,4日後豊前市に改称。南部の大分県境の犬ヶ岳(1131m),雁股(かりまた)山(807m)などの北東斜面にあたる溶岩台地の開析された山地が大半を占め,山麓洪積台地と沿岸の沖積地は中津平野の西部をなし,大部分は水田地帯である。市街地はJR日豊本線宇島駅および宇島港を中心とする八屋地区の国道10号線沿いに発達している。稲作を中心に野菜やミカン,ブドウなどの果樹,茶の栽培が行われ,木材を産する。また宇島,八屋,松江の3漁港でノリの養殖,小型底引網などの沿岸漁業が行われる。北九州市および大分県中津市との交通の便もよく,通勤者が多い。海岸沿いには宇島港を中心に豊前火力発電所(出力50万kW)および金属,プラスチック,電子工業など多くの工場が立地している。犬ヶ岳はツクシシャクナゲ自生地(天)で知られ,その北部,築上町の旧築城(ついき)町との境に古くから修験道場として栄えた求菩提(くぼて)山(782m)があり,ともに耶馬日田英彦山(やばひたひこさん)国定公園に含まれる。
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