福岡県東部、周防灘(すおうなだ)に臨む市。1955年(昭和30)4月10日八屋(はちや)町と角田(すだ)、三毛門(みけかど)、千束(ちづか)、山田、黒土(くろつち)、横武(よこたけ)、合河(ごうかわ)、岩屋(いわや)の8村が合併して宇島市(うのしまし)となり、4日後に豊前市と改称。JR日豊(にっぽう)本線と国道10号が沿岸を並走する。東九州自動車道豊前インターチェンジがある。南東部から犬(いぬ)ヶ岳(1131メートル)、求菩提(くぼて)山(782メートル)などの耶馬渓溶岩台地(やばけいようがんだいち)の開析山地が広く分布、佐井(さい)川、岩岳川などの小河川が北東流して扇状地と沖積低地を形成している。中心集落の八屋の北に位置する宇島港周辺の埋立地に九州電力豊前発電所や日鉄住金建材工業の工場(現、日鉄建材豊前ニッテックス工場)、吉野プラスチックスなどの工場が立地、また、内陸部にも工業団地が造成され、工業化が進行しているが、全般的には田園都市で、米や野菜を中心に、丘陵部ではミカン、ブドウ、茶などが、南東部の山地ではヒノキ、スギ、シイタケなどの生産が盛んである。沿岸部ではカキ・ノリ養殖、小型底引網などの沿岸漁業も行われている。国の史跡である求菩提山は修験道(しゅげんどう)の遺跡が多数残る山岳信仰の霊山として知られ、山頂には国宝の銅板法華経(ほけきょう)と銅筥(どうばこ)を有する国玉神社(くにたまじんじゃ)の上宮(じょうぐう)がある。犬ヶ岳は国の天然記念物に指定されているツクシシャクナゲの自生地として知られ、ともに耶馬日田英彦山(ひたひこさん)国定公園に含まれる。面積111.01平方キロメートル、人口2万4391(2020)。
[石黒正紀]
『『豊前市史』全2巻(1991・豊前市)』
福岡県東部,周防灘に面する市。人口2万7031(2010)。1955年4月10日,築上郡の八屋(はちや)町と8村が合体,宇島(うのしま)市となり,4日後豊前市に改称。南部の大分県境の犬ヶ岳(1131m),雁股(かりまた)山(807m)などの北東斜面にあたる溶岩台地の開析された山地が大半を占め,山麓の洪積台地と沿岸の沖積地は中津平野の西部をなし,大部分は水田地帯である。市街地はJR日豊本線宇島駅および宇島港を中心とする八屋地区の国道10号線沿いに発達している。稲作を中心に野菜やミカン,ブドウなどの果樹,茶の栽培が行われ,木材を産する。また宇島,八屋,松江の3漁港でノリの養殖,小型底引網などの沿岸漁業が行われる。北九州市および大分県中津市との交通の便もよく,通勤者が多い。海岸沿いには宇島港を中心に豊前火力発電所(出力50万kW)および金属,プラスチック,電子工業など多くの工場が立地している。犬ヶ岳はツクシシャクナゲ自生地(天)で知られ,その北部,築上町の旧築城(ついき)町との境に古くから修験道場として栄えた求菩提(くぼて)山(782m)があり,ともに耶馬日田英彦山(やばひたひこさん)国定公園に含まれる。
執筆者:土井 仙吉
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