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人民戦争 じんみんせんそうpeople's war

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

人民戦争
じんみんせんそう
people's war

正規軍だけが戦うのではなく,人民を組織し,人民の力に依拠してすべての人民が戦う戦争。 K.クラウゼウィッツの『戦争論』 (1832~34) の「国民総武装」の章では,正規軍でなく国民軍によって国民戦を戦うことが述べられているが,クラウゼウィッツは,国民戦は一時的には有効でも,長期持久の戦いはできないとみている。これに反し,人民戦争は圧倒的に優勢な帝国主義,植民地主義に対する解放の戦いの基本的形態として取上げられ,人民の力と英知は無限であり,戦えば戦うほど強くなる戦いとしてとらえられる。中国の抗日戦争,ベトナム戦争,アルジェリア独立戦争などは人民戦争の代表的実例であろう。人民戦争のおもな特徴としては,次の諸点があげられる。 (1) 国民皆兵がたてまえであり,戦闘員,非戦闘員の区別はなく,軍隊も正規軍,地方部隊,民兵の3種類の軍隊が結合して戦う。 (2) ゲリラ戦 (遊撃戦) ,機動戦がおもな戦法となり,固定した戦線や陣地をつくるのを避けるのが普通である。 (3) したがって,地域,都市などを守る「防衛」の観念も放棄され,一部の都市や地方を主動的,計画的に放棄し,敵を引込んでおいて攻撃する。 (4) 自力更生の戦いであり,その国の人民大衆自身の力による人民戦争では通常,武器や装備は敵から奪ったものを用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人民戦争
じんみんせんそう

人民を組織し、立ち上がらせ、人民の力に依拠して、すべての人民が戦う戦争をいう。帝国主義、植民地主義に対する被抑圧民族階級の解放の戦いの基本的形態で、形のうえでは旧来の国民戦、ゲリラ戦と共通するものが多いが、その本質はまったく異なった新しいタイプの戦争である。
 ゲリラ戦は人民戦争のおもな戦闘形態だが、人民戦争がとるいろいろな形態の戦闘のうちの一つにすぎない。人民戦争の従来の戦争にない特徴は、(1)全民皆兵が原則なので、正規軍だけでなく、地方遊撃隊、民兵などいろいろな形で民衆を動員する。民衆の「銃後」での支援はない。(2)人民を組織、動員して戦う戦争だから自国内でなければ行えない。(3)こうして戦うのだから人民戦争はゲリラ戦、機動戦が主体となる。戦争は軍隊がするものという軍事常識を覆し、全人民の力で戦うという新しい戦争のあり方をつくりだした点に軍事史上画期的意義をもつ。[林 茂夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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