雨や雪などの気象目標をうまく探知する性能を備えたレーダー。発射された電波が降雨域内の水滴などに当たると散乱され、一部分はエコーとしてもとの方向に戻る。これを測定して、目標の位置や広がり、また散乱の強さを求める。短い波長の電波は雨によって減衰を受け、波長が長すぎるとエコーが弱くなる。そこで、普通3センチメートルから10センチメートルの範囲のマイクロ波が用いられる。1~2マイクロ秒くらいの短くて強い電力のパルス電波が、毎秒数百回の繰り返しで、円形のパラボラアンテナから細いビームになって発射される。ビームは、たとえば100キロメートルの距離では、直径2キロメートル、奥行1キロメートルくらいの空間を照らし出し、そこに水滴があると、滴の直径の6乗に比例した強さのエコーを、アンテナに送り返す。ビームが水平面をスイープするようにアンテナを回転すると、エコーは、ブラウン管の中心をレーダー設置点とする半径数百キロメートルの円形地図のように写し出される。この表示型式を、PPI(Plane Position Indicatorの略)という。アンテナをある方向に固定して高度角を上下し、アンテナ方向の垂直断面を距離と高さの直角座標で示すRHI(Range Height Indicatorの略)表示も、よく用いられる。日常ブラウン管に現れる雨や雪のエコーのほか、雷雨による高くて強いエコー、竜巻を示すフックエコー、豪雨の際の渦巻エコー、台風の螺旋(らせん)エコーなど特殊な形をしたもの、空気密度の違いで生じるエンゼルエコー、海面の波浪によるシークラッター、そのほかにもいろいろの種類がある。近年、観測の障害になる地形エコーを除去する技術が実用化され、エコーのコンピュータ処理がしやすくなった。雲や霧を探知するミリ波レーダー、ドップラー効果を使って降水粒子の動きを測るレーダー、あるいは音波や光線を利用するレーダーもつくられている。
[篠原武次]
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(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)
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