気象レーダー(読み)キショウレーダー

デジタル大辞泉 「気象レーダー」の意味・読み・例文・類語

きしょう‐レーダー〔キシヤウ‐〕【気象レーダー】

雲の位置・雨域・雨の強さなどを調べる気象観測用のレーダー波長3~10センチ程度のマイクロ波を発射し、雨滴などによる反射波を受信して測定する。

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精選版 日本国語大辞典 「気象レーダー」の意味・読み・例文・類語

きしょう‐レーダーキシャウ‥【気象レーダー】

  1. 〘 名詞 〙 ( レーダーは[英語] radar ) 極超短波が大気中の雨滴や雲粒などによって散乱されるのを利用した気象観測用のレーダー。雲、雨、雪、台風などを探知する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「気象レーダー」の意味・わかりやすい解説

気象レーダー
きしょうれーだー

雨や雪などの気象目標をうまく探知する性能を備えたレーダー。発射された電波が降雨域内の水滴などに当たると散乱され、一部分エコーとしてもとの方向に戻る。これを測定して、目標の位置や広がり、また散乱の強さを求める。短い波長の電波は雨によって減衰を受け、波長が長すぎるとエコーが弱くなる。そこで、普通3センチメートルから10センチメートルの範囲のマイクロ波が用いられる。1~2マイクロ秒くらいの短くて強い電力のパルス電波が、毎秒数百回の繰り返しで、円形パラボラアンテナから細いビームになって発射される。ビームは、たとえば100キロメートルの距離では、直径2キロメートル、奥行1キロメートルくらいの空間を照らし出し、そこに水滴があると、滴の直径の6乗に比例した強さのエコーを、アンテナに送り返す。ビームが水平面をスイープするようにアンテナを回転すると、エコーは、ブラウン管の中心をレーダー設置点とする半径数百キロメートルの円形地図のように写し出される。この表示型式を、PPI(Plane Position Indicatorの略)という。アンテナをある方向に固定して高度角を上下し、アンテナ方向の垂直断面を距離と高さの直角座標で示すRHI(Range Height Indicatorの略)表示も、よく用いられる。日常ブラウン管に現れる雨や雪のエコーのほか、雷雨による高くて強いエコー、竜巻を示すフックエコー、豪雨の際の渦巻エコー、台風の螺旋(らせん)エコーなど特殊な形をしたもの、空気密度の違いで生じるエンゼルエコー海面の波浪によるシークラッター、そのほかにもいろいろの種類がある。近年、観測の障害になる地形エコーを除去する技術が実用化され、エコーのコンピュータ処理がしやすくなった。雲や霧を探知するミリ波レーダー、ドップラー効果を使って降水粒子の動きを測るレーダー、あるいは音波や光線を利用するレーダーもつくられている。

[篠原武次]

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百科事典マイペディア 「気象レーダー」の意味・わかりやすい解説

気象レーダー【きしょうレーダー】

レーダーによれば,雨滴,雪,あられ,雪片,雲粒など波長と同程度,あるいはそれより小さい粒子の集合を検出できる。気象レーダーは波長3〜10cm程度のパルス電波を毎秒200〜500回発射し,雨滴などによる反射波を受信して,降水域の場所,降水強度を測定する。レーダーを中心とした降水域の水平分布をブラウン管上に表示するPPI,任意方向の垂直断面内の降水粒子の分布を示すRHI,降水強度(受信電力)と距離の関係を表示するA/Rスコープなどを備えている。富士山頂の気象レーダーの最大探知距離は800kmで,レーダーリレーにより映像は東京の気象庁に送られ,台風探知に活躍しているが,このほか全国には20の気象レーダーがある。近年,レーダーのエコー強度とアメダスとをコンピューターで合成するレーダー・アメダス雨量合成図も作製されている。また,電波の代わりにレーザーを利用して大気中のエーロゾル(煙霧質)などを測定する装置(ライダーまたはレーザーレーダーという)も開発され,大気汚染対策や航空の安全対策に利用される。

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知恵蔵 「気象レーダー」の解説

気象レーダー

大気中の雨・雪などを観測するレーダー。波長数cm〜10cmのマイクロ波を発射して、雨滴や雪片からの反射(エコー)を受信し雨雲などの位置、動き、強さを測る。現在全国20カ所のレーダーでのネット観測や主要空港などで観測。特殊なものに次のものがある。(1)ウインドプロファイラは、1.3GHz(ギガヘルツ)の電波を発射して大気から散乱・反射された電波の周波数の違いから、上空約5kmまでの風向・風速を連続的に測る。局地的気象監視システム(WINDAS)と呼び、全国31カ所で観測。これを大型にし、赤道域の上層風を測るのが赤道大気レーダー(インドネシア・スマトラ島)。(2)ドップラーレーダーは、降水粒子の移動方向と速さに応じて、粒子から反射された電波の周波数が変化する現象(ドップラー効果)を利用し、上空の風を立体的に観測。航空機の離着陸事故の原因となるダウンバースト(積乱雲から生じる強い下降気流)、集中豪雨などを監視する。気象庁は1994年から順次主要8空港のドップラー化を進め、2006年3月の東京レーダー(柏市の気象大学校構内)設置など、さらなるドップラーレーダー化を進めている。

(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)

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