水性ガス(読み)すいせいがす(英語表記)water gas

翻訳|water gas

日本大百科全書(ニッポニカ) 「水性ガス」の意味・わかりやすい解説

水性ガス
すいせいがす
water gas

高温の炭素質に水蒸気を作用させて得られる一酸化炭素水素混合ガス固体の炭素質を原料とした場合の主反応は、
  (1)C+H2O―→CO+H2  高温時
  (2)C+2H2O―→CO2+H2  低温時
の水性ガス反応である。天然ガスを原料にしたときは
  (3)CH4+H2O―→CO+3H2
となる。

 古くは、石炭コークスを原料として盛んに燃料ガスを製造していたが、20世紀後半からはほとんどが石油系原料あるいは天然ガスの改質による方法に変わった。

 ガス化剤として水蒸気だけを用いる真の意味の水性ガス化反応は大きな吸熱反応であるので、反応の進行とともに温度が低下し、反応速度が小さくなり、平衡が二酸化炭素生成側に傾く(式の(2))。そこで、反応熱を供給するための種々のくふうがなされてきた。水蒸気の供給を止めて空気に切り替え、一部の炭素分を燃焼させて温度を上昇させる。温度が上昇するとふたたび水蒸気に切り替えて燃料ガスを得るというサイクリックプロセスはその一例である。得られるガスは、一酸化炭素40%、水素50%が主成分で、ほかに二酸化炭素、メタン窒素などが含まれる。発熱量は1立方メートル当り12メガジュール程度なので、都市ガスとして用いるには発熱量が低い。このようなサイクリックプロセスは、操作性の悪さ、炭素利用率の低さ、クリーンさなどの点で問題が多い。そこで近代的な石炭ガス化法では、ガス化炉内の温度を保つため、水蒸気だけでなく酸素も同時に吹き込んで、連続的にガス化する方法を一般には採用している。炉内では水性ガス化反応だけでなく、燃焼反応、発生炉ガス反応、水性ガスシフト反応などが併発することになる。生成ガス組成は反応条件によって異なる。

 水性ガスを化学合成の原料として用いる場合には、水性ガスシフト反応によって水素と一酸化炭素の比を調整する。たとえば、メタノール合成するには、水素と一酸化炭素比が2対1になるように、メタンの場合には3対1に、アンモニアの場合にはすべてを水素に変換する。

富田 彰]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「水性ガス」の意味・わかりやすい解説

水性ガス
すいせいガス
water gas

石炭,石油,低級炭化水素などに酸素と水蒸気を吹込んで,高温で反応させて得られるガス。主成分は水素と一酸化炭素。おもに合成化学工業原料として用いられる。メチルアルコール合成やオキソ合成などの原料としては,一酸化炭素と水素との比を調整して用い,またアンモニアの合成の場合には水素比を大きくして用いる。都市ガス事業では炭化水素を加えて増熱した増熱水性ガスをつくり,各家庭へ送っていたが,天然ガスに転換されつつある。

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