経緯儀(トランシット)の望遠鏡の視野内に刻まれたスタジア線を用いて行う簡便な測量方法。一地点にすえた経緯儀と,目標地点に立てた標尺との間の距離と比高を間接的に求める。望遠鏡をのぞき,その視野内にある上下2本の平行線(スタジア線stadia hair)によって,目標地点に鉛直に立てた標尺のはさまれる長さ(目盛数)およびその時の高度角(鉛直角)を読み取り,この値を公式にあてはめれば,水平距離および比高を簡単に算出できる。また公式に基づく数表もできているので,さらに簡便に求めることができる。水準儀(レベル)でも,この方法で距離を求めることができる。水準測量では,水準儀の器械誤差を消去するため,水準儀と前後の標尺を等距離にする必要があるが,距離の調節にこの方法が応用されている。平板測量では,一定長の標尺を目標地点に立て,平板上に水平に置いたアリダート(測斜儀)によって,標尺のはさまれる分画数(角度)を読みとり,この分画数を数表で引いて距離を求めることができる。この測量方法は,巻尺やレベルを用いて直接に距離や比高を求めるより簡便であるが,高い精度は得られず,単独または平板測量との併用による細部測量や,高い精度を要求されないトラバース測量などに利用される。近年,電波や光波を利用して,簡単に高精度で距離が測定できる測距儀が著しく発達したため,トランシットを用いるこの測量方法の利用は少なくなりつつある。
執筆者:奥村 晃三
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トランシットの望遠鏡内に上下に一定の視角で引かれた2本の水平線をスタジア線といい、目標地点に立てた標尺の目盛りのうち、このスタジア線で挟まれる部分の長さから目標までの距離を計算により求める測量で、タキメトリーtachymetryともいう。目標地点が観測点と同一の高さでない場合にはその比高も求め、かつスタジアの読み取り値に傾斜による補正も加えねばならないが、これらの補正および計算がコンピュータなどで自動的に行われるトランシットをタキメーターという。
[尾崎幸男 2016年11月18日]
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